エアライン, ボーイング, 機体, 空港, 解説・コラム — 2022年3月9日 12:15 JST

ANA新ブランド「快適性」と「訪日客」が焦点 特集・LCCじゃないAirJapan”いいとこ取り”

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 ANAホールディングス(ANAHD、9202)がこれまで「中距離国際線LCC」としてきた新ブランドが3月8日、都内でお披露目された。FSC(フルサービス航空会社)の全日本空輸(ANA/NH)、LCC(低コスト航空会社)のピーチ・アビエーション(APJ/MM)に続く第3のブランドで、グループのアジア・リゾート路線を担うエアージャパン(AJX/NQ)を「AirJapan」に衣替えするとともに、FSCとLCCの長所を併せ持つLCCではない航空会社に位置づけた。

新ブランド「AirJapan」を発表するエアージャパンの峯口秀喜社長=22年3月8日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 海外では「ハイブリッドキャリア」などとも呼ばれる、運賃はLCC並み、サービスは機内食など従来FSCが提供してきたものを好みで選べるようにするものだ。ANAHDが100%出資するエアージャパンは成田空港に本社を構えており、2023年度下期に就航を予定している新ブランド「AirJapan」も成田を拠点に運航していく。

 就航路線やサービスは8日の発表では明らかにされなかったが、どのような航空会社になるのだろうか。

—記事の概要—
25年度に6機体制
コロナ後の訪日需要狙った路線展開

25年度に6機体制

 機材はANAが現在運航しているボーイング787-8型機を改修。年に2機ずつ導入し、2025年度に6機体制を想定している。座席数は300席クラスを計画しており、クラス分けをするかなどは今後発表する。

新ブランド「AirJapan」のロゴと機体デザインを発表するエアージャパンの峯口秀喜社長(左)ら=22年3月8日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 8日にお披露目された模型には「JA801A」とANAの787初号機の登録記号が記されており、初期導入の787-8を改修する見通しで、現時点で新造機導入は示されていない。

 エアージャパンの峯口秀喜社長は「新ブランドをわかりやすく中距離LCCと説明してきたが、実際のところLCCではない。お手軽な価格を基本に、フルサービスとLCCの良いところを併せ持った新しいモデルだ。サービスの考え方と居住性に重きを置く」と説明する。

 競合として比較される航空会社の中で、もっとも近いのは日本航空(JAL/JL、9201)が100%出資する中長距離LCCのZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)だろう。JALの787のうち、初期導入の787-8を改修し、現在4機が就航している。座席数は2クラス290席で、フルフラットシートを採用したビジネスクラスにあたる「ZIP Full-Flat(ジップ・フルフラット)」が18席、エコノミークラス「Standard(スタンダード)」が272席となっており、ボーイングの製造問題が解決すれば、新造機も引き渡される。

 AirJapanが掲げる「快適性」は、上級クラスだけに留まらず、エコノミークラスも対象にする姿勢が、8日の峯口社長の言葉からは感じられた。「これだったらフルサービスでなくても、AirJapanのほうがいいな、というお客さまはいらっしゃると思う」(峯口社長)と、787で運航しているZIPAIRやシンガポール航空(SIA/SQ)系中距離LCCのスクート(TGW/TR)だけでなく、アジアのFSCとの勝負になるという。

A380のエコノミークラス後方に用意され緑色のヘッドレストカバーを付けたカウチシート「ANA COUCHii」=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ビジネスクラスやエコノミークラスといった既存のクラス分け以外で、既存のANAのサービスで展開が考えられるのは、ANAがエアバスA380型機「FLYING HONU(フライング・ホヌ)」で国内初導入したカウチシートだろう。ANAのA380は4クラス520席で、383席あるエコノミークラスのうち6列60席をカウチシートとし、「ANA COUCHii」と命名した。

 A380のANA COUCHiiは、隣接する席のレッグレストを上げてベッドのように使える。子供連れの利用客を想定し、専用寝具としてシーツマットと枕、毛布を用意。通常のエコノミー運賃に、追加料金を支払うと利用できる。AirJapanでもエコノミーの一部をカウチシートとすれば、新たに大型投資をせずに快適性を向上し、シートピッチをそこまで拡大しなくても導入できる。

 LCCを超えるサービスは、どういったものになるだろうか。

コロナ後の訪日需要狙った路線展開

 AirJapanのターゲットは観光需要だけではないものの、主眼に置いているのはコロナ後の訪日需要だ。4月にANAHDの副会長に就任するANAの平子裕志社長は「第3ブランド(AirJapan)のターゲットは外国人の若者。我々からするともっとも弱いところを狙う」と、ANAとのすみ分けを指摘する。

ANAの新ブランド「AirJapan」のデザインを施した787-8 JA801Aのモデルプレーン=22年3月8日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

AirJapanの機体デザイン(同社提供)

 就航先は現在のところ、アジア・オセアニアという表現にとどめているが、市場規模からはシンガポールやバンコクが有力とみられる。峯口社長は「シンガポールやバンコクはかなりお客さまが多い。アジアのFSCにも勝っていけるモデルを作りたい」と話す。

 峯口社長によると、機材稼働を考えると1機の運航時間が往復24時間以内の就航地になるといい、西海岸やハワイも「ギリギリ届く」(峯口社長)とするが、当面はアジア・オセアニア路線で基盤固めをするという。

 エアージャパンは新ブランドの「AirJapan」だけでなく、現在運航しているANAブランドのアジア路線なども引き続き担う。「外国人の派遣パイロットもいるので、需給変動に対応できる」として、ANAグループで必要とするパイロットの人数を調整する意味でもANAブランドの運航を続けるという。

 黒字化は就航から3年程度を念頭に置いており、年内にはサービスなども発表するというAirJapanは、どのような“いいとこ取り”を狙っていくのだろうか。

関連リンク
エアージャパン
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