エアライン — 2024年1月29日 18:16 JST

ピーチの自社養成パイロット、副操縦士に4人昇格 “夢への一歩”踏み出す

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 ピーチ・アビエーション(APJ/MM)は1月29日、パイロット訓練生7人に副操縦士を発令した。このうち4人は自社で初めて養成した訓練生で、関西空港内にある本社で多数の社員から祝福を受け、夢だったパイロットへの道を歩み出した。

ピーチの自社養成初の訓練生として副操縦士に昇格した(左から)羽生さん、山辺さん、須藤さん、松永さん=24年1月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

—記事の概要—
18年8月にプログラム開始
本部長「プロはお客さまのために乗る」

18年8月にプログラム開始

 同社は6年前の2018年8月に、パイロット育成プログラム「Peachパイロットチャレンジ制度 with AIRBUS」をスタート。同じくANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸(ANA/NH)のノウハウを生かしたプログラムで、エアバスと三井住友銀行(SMBC)が支援している。

 訓練は前半と後半の2部構成で、合わせて2年6カ月程度かかる。ピーチ入社後に始める前半訓練はニュージーランドやアイルランドを始めとした海外で進め、EASA(欧州航空安全庁)のライセンスを取得。その後国内で後半訓練に入り、国土交通省航空局(JCAB)ライセンス取得試験に合格後にすべての訓練を修了する。修了後は1年6カ月程度の副操縦士昇格プログラムへ移行。地上業務研修や路線訓練などを経て、副操縦士に必要な技量・知識があるかを確認する「任用審査」に合格後、副操縦士へ昇格する。

 前半訓練の費用は自己負担だが、生活費などを支援するため「チャレンジ手当」約550万円を支給。SMBCが海外でのライセンス取得費用の支払いに利用できるサポートローンを用意した。

 後半訓練は、前半訓練を終えてピーチの採用試験に合格し、同社に入社した自社養成訓練生が対象となり、訓練費用は、ピーチが全額負担する。訓練費用は、2022年度実績で9万2000ポンド(約1460万円)かかる。

 ピーチはこれまで、航空大学校や私立大学のパイロット養成課程を卒業し、他社でライセンスを取得した人を採用して、副操縦士を社内で養成してきた。同制度は新卒と既卒が対象で、パイロットを希望する人々にチャレンジする機会を設ける。同社はアジアNo.1のLCCの座を目指しており、路線網拡大に不可欠なパイロットを自社養成することで、パイロット不足に対応していく。

夢への一歩を踏み出したピーチの新米副操縦士7人=24年1月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

本部長「プロはお客さまのために乗る」

 副操縦士に昇格した自社養成の4人は、東京出身で製薬会社のMR(営業担当)だった羽生幸平さん(32)、神奈川出身でIT企業のシステムエンジニアだった山辺駿介さん(33)、栃木出身で中高一貫校の教員だった須藤駿介さん(33)、大学卒業後に新卒で訓練生となった神奈川出身の松永大輝さん(28)。自社養成の4人を含む7人はピーチ運航本部の田中佳功本部長から辞令を受け、パイロットが着用する「ウイングバッジ」を受け取った。

ピーチ運航本部の田中本部長(右)からウイングバッジを授かる須藤さん=24年1月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 田中本部長はプロのパイロットとしてのスタートラインに立った7人に、「今まで皆さんは訓練生として。自分自身のために乗ってきた。プロのパイロットは自分のためではなく、お客さまのために乗る」と訓示。「安全に飛ぶのは絶対。お客さまが何を望んでいるのか、考えながら乗ってほしい」と語りかけた。

 自社養成の同プログラムの1期生として2019年4月1日に入社した4人は、ニュージーランドで前半訓練を受けた。訓練中は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行などにより予定通りに行かないこともあったが、同期の4人で支え合いながら進めたという。

 2年後の2021年6月1日からは国内での後半訓練に移り、委託先の本田航空での訓練をスタート。9カ月後の2022年3月2日に訓練修了後、ピーチの副操縦士プログラムへ移行し、昇格を目指した。

 4人の副操縦士デビューは2月上旬でいずれも関空発便に乗務する。羽生さんは2日に那覇行き、松永さんは3日の福岡行き、須藤さんは4日の那覇行き、山辺さんは5日の那覇行きが初乗務となる。

 同プログラムは現在、4期生までが入社し、訓練を重ねている。4月には5期生の入社も予定しているという。

新米副操縦士に訓示するピーチ運航本部の田中本部長(右)=24年1月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

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パイロットチャレンジ制度(Peach Aviation)
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