エアバス, エアライン, 企業, 機体, 空港, 解説・コラム — 2023年11月23日 21:03 JST

ヤマトのA321P2F貨物機、北九州も訓練開始 関空経由の三角運航

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 ヤマトホールディングス(9064)が保有するエアバスA321ceo P2F貨物機(登録記号JA81YA)が11月23日、当初予定していた北九州空港への訓練飛行を初めて実施した。成田から北九州経由で関西空港に向かい、成田へ戻る三角運航で、23日は計画通り同じルートを2回運航する。日本航空(JAL/JL、9201)グループのLCC、スプリング・ジャパン(旧春秋航空日本、SJO/IJ)のパイロットが乗務する。

ヤマトのA321ceo P2F貨物機=23年11月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
成田-北九州-関空の三角運航
夏から羽田も

成田-北九州-関空の三角運航

 当初は機体をお披露目した20日から、パイロットが実際の飛行ルートを飛ぶ「プルービングフライト」を始める予定だったが、機体に整備作業が発生したことから延期。22日が初のプルービングフライトとなり、成田-関西間を1往復した。

上部貨物室にAAYコンテナを積み込んだヤマトのA321ceo P2F貨物機=23年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 11月のプルービングフライトは、成田から北九州経由で関空へ向かい、成田に戻る三角運航で、1回3区間で1日あたり2回、計6区間を飛行。フライト時に貨物コンテナなどは搭載せず、必要に応じて機体のバランスを取る「おもり」を載せるという。

 A321P2Fは、中古のA321ceo(従来型A321)旅客機を貨物専用機に改修したもので、10トン車約5-6台分に相当する1機当たり28トンの貨物を搭載できる。ヤマトHDは3機のA321P2Fを導入予定で、残り2機も初号機と同じシンガポールで改修作業が進められている。

成田空港のJAL格納庫で上部貨物室ドアを開けるヤマトのA321ceo P2F貨物機=23年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港で公開されたヤマトのA321ceo P2F貨物機の初号機=23年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ヤマトによると、737-800を改修した貨物機と比べ、A321P2Fは約20%多く貨物を搭載でき、客室から転用した上部貨物室にはAAYコンテナを14台、改修前からある床下貨物室にはAKH(LD3-45)コンテナを10台搭載できる。

 就航は2024年4月11日を予定。トラックドライバーの時間外労働の上限規制など、輸送力減少が懸念される中、首都圏から北海道や九州、沖縄への長距離トラックによる宅急便輸送の一部を補完し、全3機で1日21便を計画している。

 スプリング・ジャパンのパイロットはボーイング737-800型機を操縦しているが、一部の人はA320のライセンスも保持しており、4月の運航開始までに機種移行を済ませる。3機のA321P2Fを運航するには、60-70人程度のパイロットが必要になるとみられる(関連記事)。

夏から羽田も

 北九州へ向かう初日の23日は、成田空港を午前8時35分に出発し、A滑走路(RWY16R)から午前9時15分に離陸した。

成田空港のスポットに並ぶ(手前から)ヤマトのA321ceo P2F貨物機の初号機、スプリング・ジャパンの737-800、JALの787-8=23年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 11月の運航スケジュールは、1便目が成田を午前7時45分に出発し、北九州へ午前9時50分着、2便目は北九州を午前10時25分に出発し、関空へ午前11時25分着、3便目は関空を正午に出発し、成田へ午後1時25分着、4便目は成田を午後2時30分に出発し、北九州へ午後4時35分着、5便目は北九州を午後5時10分に出発し、関空へ午後6時15分着、最終6便目は関空を午後6時50分に出発して、成田には午後8時15分に到着する。

 12月以降は、1便目から3便目までの1回目を成田から関空経由で北九州に向かい、成田へ戻るルートに変更。1便目が成田を午前8時30分に出発し、関空へ午前9時55分着、2便目は関空を午前10時30分に出発し、北九州へ午前11時35分着、3便目は北九州を午後0時10分に出発し、成田へ午後1時50分に着く。2回目は11月と同じ成田-北九州-関空ルートで、4便目は成田を午後3時15分に出発し、北九州へ午後5時20分着、5便目は北九州を午後5時55分に出発し、関空へ午後7時着、最終6便目は関空を午後7時35分に出発して、成田には午後9時に到着する。

 4月11日の就航当初は、成田-札幌線を1日2往復4便(IJ403/406、IJ405/408)、成田-北九州線を1日3便(成田発IJ425、北九州発IJ422と426)、成田発那覇行きを1日1便(IJ451)、那覇発北九州行きを1日1便(IJ456)運航。夏ごろをめどに、羽田空港を深夜早朝に発着する札幌線と北九州線の運航を始める。

 貨物機の場合、需要に応じたルートを飛ぶことから、旅客便のように往復せず、片道の区間も設ける。

成田空港のスポットへトーイングされるヤマトのA321ceo P2F貨物機の初号機(左)と成田を出発するJALの767-300ER=23年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 A321P2Fの運航は、ヤマトグループとJALグループの共同プロジェクト。ヤマトHD傘下のヤマト運輸が配送拠点と空港間の陸上輸送や、空港の貨物上屋での積み付けを担当する。JALが空港の貨物上屋内での貨物計量やランプハンドリング、機体の整備を担い、スプリングが運航とオペレーションコントロール、ロードコントロールを担当する。JALとスプリングは貨物便のコードシェア(共同運航)を予定している。

 また、JALは自社の中型旅客機ボーイング767-300ER型機を改修した貨物専用機も3機導入。2023年度末から順次運航を開始する。東アジアを中心とした国際線に投入し、将来的には国内線も飛ぶことで稼働率を高める。JALが貨物機を導入するのは13年ぶり(関連記事)。767の貨物機もヤマトと協業するが、JALの赤坂祐二社長によると、完全な独占契約ではないという。

11/22の運航実績(定刻/実績)
IJ9625 成田(08:20/08:25)→関西(10:00/09:51)
IJ9626 関西(14:00/14:13)→成田(15:25/15:38)

11月のプルービングフライト
1 成田(07:45)→北九州(09:50)
2 北九州(10:25)→関西(11:25)
3 関西(12:00)→成田(13:25)
4 成田(14:30)→北九州(16:35)
5 北九州(17:10)→関西(18:15)
6 関西(18:50)→成田(20:15)

12月以降のプルービングフライト
1 成田(08:30)→関西(09:55)
2 関西(10:30)→北九州(11:35)
3 北九州(12:10)→成田(13:50)
4 成田(15:15)→北九州(17:20)
5 北九州(17:55)→関西(19:00)
6 関西(19:35)→成田(21:00)

関連リンク
ヤマトホールディングス
日本航空
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