エアライン, 機体, 空港, 解説・コラム — 2023年10月27日 16:21 JST

トキエア、就航は「整備規程の修正後」準備に注力、新たな就航日明言なし

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 新潟空港を拠点に就航を目指すトキエア(TOK/BV)の長谷川政樹社長は10月27日、新潟空港で会見を開き、就航に向けた進捗(しんちょく)状況を説明した。保有する2機のATR72-600型機の「耐空証明(AC=Airworthiness Certificates)検査」終了後、整備規程の修正に注力し、新たな就航日を発表する。就航日は一連の準備が整い次第発表し、今回の会見では明言を避けた。

就航に向けた進捗を説明するトキエアの長谷川社長=23年10月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

—記事の概要—
耐空検査後に整備規程注力
スタンバイクルーで病欠に備え
1路線目は冬の丘珠
資金「余裕を持たせて計画」

耐空検査後に整備規程注力

新潟空港に着陸するトキエアのATR72-600初号機=22年11月5日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 会見には同社で安全統括管理者を務める宮崎邦夫取締役も出席し、準備の進み具合を説明した。就航には国土交通省航空局(JCAB)による耐空証明検査に加え、社内で「施設検査」と呼ぶ運航管理施設の検査、整備規程の検査が必要だという。

 このうち自動車の「車検」にあたる耐空検査は、機体の強度や構造、性能、騒音、エンジンの排出物などを検査し、検査基準を満たした場合に国交省がACを発行する。有効期間は1年間。保有する2機のうち2号機(登録記号JA02QQ)は10月30日から11月2日まで、初号機(JA01QQ)は11月7日から10日まで、それぞれ新潟空港で実施する。

 初号機は10月25日に鹿児島空港へフェリー(回航)しており、格納庫(ハンガー)内での事前検査を進める。宮崎取締役によるとトキエアは新潟空港に格納庫を保有していないため、鹿児島にある格納庫を借りているという。

 運航管理施設の検査は9月25日に終了。JCABから指摘された事項を10月6日付で提出しており、現在は返答待ちだという。整備規程は7月25日に提出済みで、指摘事項を修正し再提出する。宮崎取締役は「期限を迎える耐空検査を優先させる。耐空検査終了後に整備規程の修正に注力し、就航に備える」と説明した。

 11月10日までに終了する2機分の耐空検査について、長谷川社長は「天候や機体の状況に左右される。確実に終了した時点で就航日をお伝えしていきたい」と述べ、具体的な時期は明らかにしなかった。

就航に向けた進捗を説明するトキエアの長谷川社長(左)と宮崎取締役=23年10月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

スタンバイクルーで病欠に備え

 宮崎取締役によると、整備士は機長と副操縦士1人ずつを1セットとし、現在は計6人の3セット体制を構築済み。12月末には5人ずつ計10人の5セットとなるという。審査操縦士と訓練担当操縦士は現在設けておらず、実運航に携わる1セット以外で暫定対応するようだ。また整備士は11人在籍し、そのうち機体を最終確認できる「確認整備士」は4人に発令済みだという。

 他社では過去に、病欠などにより大量欠航が発生した事例があった。宮崎取締役は「機体は2機あるが、運航するのは1機。スタンバイのクルーを起用し、病欠・欠勤に備える体制を取る」と述べ、人員確保ができているとの認識を示した。

1路線目は冬の丘珠

 トキエアは1路線目に、新潟-札幌(丘珠)線の開設を計画している。冬季の降雪が課題となる丘珠空港には衛星を活用する新進入方式「LPV」が導入されており、悪天候による視界不良時の着陸に備えている。

 冬の丘珠が1路線目となることについて、長谷川社長は空港を共用する陸上自衛隊と連携し、除雪体制を整えていくとした。冬の丘珠で就航率向上や、2路線目に計画する仙台就航が実現しなかった場合の採算性の確保などは回答しなかった。

新潟空港にあるトキエアのカウンター=23年10月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

資金「余裕を持たせて計画」

 トキエアは当初、2022年の就航を計画していたが、今年6月30日に延期となり、6月に入ると8月10日に再延期となるなど、延期を重ねている。資金調達など就航延期による影響について、長谷川社長は「多少余裕を持たせて計画している。出資の協力いただきながら対応する」と述べた。

 就航後はさらなる資金調達により、佐渡就航を見すえた機材導入を計画する。長谷川社長によると2機を追加導入する計画で、現在のATR72-600よりも小型のATR42-600と、短い滑走路でも離着陸できるSTOL(短距離離着陸)型で開発中の「ATR42-600S」を導入するという。

 3号機は無印のATR42-600、4号機はATR42-600Sとなる見通し。長谷川社長は機種変更のオプションもあるとした上で、「開発によっては(4号機の)ATR42-600Sを無印にする」と明らかにした。

初飛行するATR42-600S(ATR提供)

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