エアライン, 機体 — 2023年10月23日 21:58 JST

ANA、緑のQ400就航 ”安全のしおり”はホタテの貝殻活用

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 全日本空輸(ANA/NH)は10月23日、環境に配慮した活動を表現する特別塗装機のターボプロップ(プロペラ)機「ANA Future Promise Prop」(デ・ハビランド・カナダDash 8-400〈旧ボンバルディアQ400〉型機、登録記号JA461A)を就航させた。環境の概念を表現する「水と緑」をモチーフにしたデザインで、機体にはCO2(二酸化炭素)排出抑制につながる加工を施した。ANAが緑色のQ400を運航するのは5年7カ月ぶり。現在2機のボーイング787型機も緑色に塗装しており、緑のANA機は3機になった。

伊丹空港を出発するANA Future Promise Prop初便の青森行きNH1853便=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
安全のしおりも環境配慮
Green jetはFuture Promise Jetに

安全のしおりも環境配慮

 ANAのQ400は、グループで主に地方路線を担うANAウイングス(AKX/EH)が運航。緑色のQ400には「サメの肌」をモチーフにしたニコン(7731)の「リブレットフィルム」を胴体後方下側にあるベントラル・フィン(整流板)に貼り付けた。空気抵抗を低減する効果が期待できるもので、耐久性などを検証する。

緑のQ400「ANA Future Promise Prop」=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 機内のヘッドレストカバーには、環境に配慮した「ヴィーガンレザー」を導入。青森産リンゴジュースの絞りかすを活用した合成皮革を開発するスタートアップ企業appcycle(青森市)の「RINGO-TEX」を採用した。各座席に備える「安全のしおり」も環境に配慮し、北海道猿払村でとれたホタテの貝殻を再利用した素材「カラスチック」を採用し、製造コストや耐久性を実運航の環境下で検証していく。

 ANAグループは中期経営戦略で掲げるESG(環境・社会・企業統治)経営を推進していくため、2021年6月にスローガン「ANA Future Promise」を制定。機内では同スローガンをテーマにした子供向けの絵本も、脱プラスチックの玩具として用意した。環境問題の大切さを家族連れに知ってもらうだけでなく、絵本の中に「ANA」の隠し文字を入れるなどの工夫を凝らした。

緑のQ400「ANA Future Promise Prop」で使用するヘッドレストカバーと安全のしおりを手にするANAウイングスの客室乗務員とパイロット=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 また、Q400が燃費効率に優れていることから、機内アナウンスでCO2排出量を案内する。約300キロの距離がある伊丹-高知間を飛行する場合、ターボプロップ機のQ400とジェット機のボーイング737-800型機を比較すると、飛行時間はともに45分と差がないものの、重量1トンあたりの燃料消費量とCO2排出量は、機体重量が軽いQ400は737-800と比べてそれぞれ約10%削減できるといい、Q400が環境にやさしい点をアピールする。

ANA Future Promise Propに搭載するホタテの貝殻を再利用した安全のしおり=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANA Future Promise Propの塗装は、ANAホールディングス(ANAHD、9202)などが出資する整備会社MRO Japan(MROジャパン)が那覇空港内の格納庫で、定期整備に合わせて22日まで実施。23日に那覇から伊丹までEH5542便としてフェリーされ、午前10時8分に到着した。同機の座席数は1クラス74席で、初便の伊丹発青森行きNH1853便は乗客74人(幼児1人含む)を乗せて午後2時15分に出発し、定刻の午後3時55分に到着した。

 初便を青森にした理由について、ANAの矢澤潤子常務は「ヘッドレストカバーの里帰りで青森を選んだ」と説明した。

Green jetはFuture Promise Jetに

 ANAグループの機体は青を基調としている。緑色のANA機は現在2機あり、特別塗装機「ANA Green jet(ANAグリーンジェット)」の初号機(787-9、JA871A)を2022年10月5日から国際線に、2号機(787-8、JA874A)を同年11月14日から国内線に投入している。緑色のQ400は、2018年3月12日に運航を終えた特別塗装機「エコボン」以来、約5年7カ月ぶりとなった。

伊丹空港を出発するANA Future Promise Prop初便の青森行きNH1853便=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANA Future Promise Propについて説明するANAの矢澤潤子常務=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 また、ANA Future Promise Prop就航を機に、ANA Green jetは「ANA Future Promise Jet」に改称した。

 ANAの矢澤常務は、同社の環境対策に対する利用者の反応について、「Z世代の反応が強い。企業からもさまざまな提案をいただいている」と述べた。ANAによると、環境問題に対する取り組みへの反応は、Z世代と40歳代以上では捉え方がまったく異なるといい、若い世代の反応が良い一方、今後は40歳代以上にも理解を深めてもらう取り組みも考えていきたいという。

*写真は31枚。

緑のQ400「ANA Future Promise Prop」を紹介するANAウイングスの客室乗務員=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

緑のQ400「ANA Future Promise Prop」の機内に立つANAウイングスの客室乗務員=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

緑のQ400「ANA Future Promise Prop」の機内=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

緑のQ400「ANA Future Promise Prop」に搭載するホタテの貝殻を再利用した安全のしおり=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

緑のQ400「ANA Future Promise Prop」のヴィーガンレザーを使ったヘッドレストカバー=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

青森産リンゴジュースの絞りかすを活用したヴィーガンレザーのヘッドレストカバー=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

緑のQ400「ANA Future Promise Prop」に搭載する絵本を手にするANAウイングスの客室乗務員とパイロット=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

緑のQ400「ANA Future Promise Prop」=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

緑のQ400「ANA Future Promise Prop」を紹介するANAウイングスのパイロットと客室乗務員=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANA Future Promise Propのベントラル・フィンに貼り付けられたリブレットフィルム=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANA Future Promise Propのベントラル・フィンに貼り付けられたリブレットフィルム=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANA Future Promise Propのベントラル・フィンに貼り付けられたリブレットフィルム=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

緑のQ400「ANA Future Promise Prop」=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

緑のQ400「ANA Future Promise Prop」=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

伊丹空港でANA Future Promise Propの前で撮影に応じるANAの矢澤潤子常務ら=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANA Future Promise Prop初便の伊丹発青森行きNH1853便に搭乗する乗客=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANA Future Promise Prop初便の伊丹発青森行きNH1853便に搭乗する乗客=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

伊丹空港を出発するANA Future Promise Prop初便の青森行きNH1853便=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

伊丹空港を出発するANA Future Promise Prop初便青森行きNH1853便のコックピットから手を振るパイロット=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

伊丹空港を出発するANA Future Promise Prop初便の青森行きNH1853便=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

伊丹空港を出発するANA Future Promise Prop初便の青森行きNH1853便=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

伊丹空港を離陸するANA Future Promise Prop初便の青森行きNH1853便=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

伊丹空港を離陸するANA Future Promise Prop初便の青森行きNH1853便=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

伊丹空港を離陸するANA Future Promise Prop初便の青森行きNH1853便を見送るANA社員ら=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

伊丹空港を離陸するANA Future Promise Prop初便の青森行きNH1853便=23年10月23日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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