エアライン, ボーイング, 機体 — 2022年11月14日 15:30 JST

ANA、グリーンジェット2号機就航 SAFを国内線定期便で初使用

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 全日本空輸(ANA/NH)は11月14日、特別塗装機「ANA Green jet(ANAグリーンジェット)」の2号機(ボーイング787-8型機、登録記号JA874A)を国内線に就航させた。初便の福岡行きNH253便は乗客237人(幼児2人含む)を乗せて羽田空港の59番スポットから定刻の午後0時30分に出発し、午後2時28分に着いた。ANAの国内線定期便では初めて代替航空燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」を10%相当使用した。

ANAのスタッフに見送られて羽田空港を出発するANAグリーンジェット2号機787-8 JA874A初便の福岡行きNH253便=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
「水と緑」モチーフ
2030年度までにSAFを10%使用

「水と緑」モチーフ

 グリーンジェットは、サステナビリティ(持続可能性)をテーマにした特別塗装機で、国際線と国内線に787を1機ずつ投入。1機目の787-9(JA871A)は国際線仕様機で、10月5日の羽田発サンフランシスコ行きNH108便が初便となった。ANAによると、2機にはグリーンジェットとしての違いはなく、機体の大きさや国際線と国内線仕様の差だけだという。

羽田空港で出発を待つANAグリーンジェット2号機787-8 JA874A=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAグリーンジェット2号機の右主翼付け根に貼り付けられたリブレットフィルム=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 環境の概念を表現する「水と緑」をモチーフにし、機体表面には「サメの肌」から着想したニコン(7731)の「リブレットフィルム」を試験装着。機内ではサステナブル素材を使ったヘッドレストカバーなどを採用した。

 機体表面にサメの肌のようなざらざらとした「リブレット(鮫肌)加工」と呼ばれる特殊加工を施すことで、飛行中の空気摩擦抵抗を低減でき、結果的にCO2排出量や燃費改善につなげられるという。

右主翼付け根にリブレットフィルムを貼り付けたANAグリーンジェット2号機=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 機内では、環境に配慮した2種類の素材「ヴィーガンレザー」を使ったヘッドレストカバーを採用。ひとつは東レ(3402)の植物由来比率を世界最高水準に高めた銀面調人工皮革「Ultrasuede nu」を使ったもので、もう一つは青森産リンゴジュースの絞りかすを活用した合成皮革を開発するスタートアップ企業appcycle(青森市)の「RINGO-TEX」を採用した。

 LEDによる照明はグリーンのライティングを用意。機内BGMは、豊かな自然を想像できるヒーリングミュージックを初めて採用した。また、客室乗務員は機体と同じく「水と緑」をモチーフにしたデザインのエプロンを着用する。

塗装作業を行った台北から羽田空港へフェリーされたANAのグリーンジェット2号機=22年11月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAグループの機体は青を基調としたデザインで、緑色を配した機体は2018年3月12日に運航を終えた特別塗装機「エコボン」以来、約4年ぶりとなった。14日は羽田-福岡線を2往復する。

 ANAによると、グリーンジェットの運航期間は数年程度で、中長期的に環境関連の取り組みを中心に使用していく。対象機は機体の塗り替え時期などを考慮して選定したという。

2030年度までにSAFを10%使用

 グリーンジェット2号機の初便で使用したSAFは、フィンランドに本社を置くNESTE(ネステ)社のものを使用。SAFは従来「バイオ燃料」と呼ばれていたもの。これまでの植物油などに加え、さまざまな原料から製造されるようになり、IATA(国際航空運送協会)が呼称を改めた。ANAはSAFの調達について、NESTEと2020年10月に提携。輸入や品質管理、空港への搬入までのサプライチェーンを伊藤忠商事(8001)と3社で構築し、同年11月6日から国際線定期便でSAFの使用を始めた。

羽田空港でSAFの給油準備が進むANAグリーンジェット2号機787-8 JA874A=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 NESTEが製造するSAFは、廃食油や動植物の油脂などを原料にしており、ジェット燃料の国際規格ASTM D1655とDEF STAN 91-091に適合しており、既存のジェット燃料と同じ安全性が確認されている。また、国際的な第三者認証機関ISCCによるライフサイクル評価で、原油の採掘や日本までの輸送を含め、既存のジェット燃料使用時と比べ約90%のCO2(二酸化炭素)排出量の削減効果が証明されているという。

 SAFは世界的に生産量が限られ、価格は既存のジェット燃料と比べて3倍から5倍程度と高止まりしている。ANAは国や日本航空(JAL/JL、9201)などとともに国産SAFの実用化に向けた取り組みに参画しており、ANAグループとして2030年度までに消費燃料の10%以上をSAFに置き換え、カーボンニュートラルを2050年度までに実現する目標を掲げている。

羽田空港のハイドラントシステムから給油の準備を進める三愛オブリのスタッフ=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港でオートサンプラーを使いSAFをチェックする三愛オブリのスタッフ=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で給油する燃料点検するANAの整備士(左)=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAの経営戦略室エアアライン事業部GXチームの乾元英マネジャーによると、10%をSAFに置き換える目標を掲げていることから、今回のグリーンジェット2号機初便に10%相当のSAFを使用したという。「引き続き連携と課題解決を加速させたい」(乾マネジャー)と語った。

 ANAが最初にSAFを使用したのは、10年前の2012年4月17日に羽田へ到着した787-8(JA808A)のデリバリーフライト。既存のジェット燃料にSAFを15%混合し、シアトル近郊にあるボーイングのエバレット工場から太平洋を横断した。乾氏によると、現在はデリバリーフライトではSAFを使用していないが、国際線定期便で継続的に搭載しており、グリーンジェット2号機では商業規模で生産されたSAFの国内線定期便の初使用に至ったという。

*写真は18枚。

羽田空港で横断幕を手にANAグリーンジェット2号機をPRするANAグループの社員=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAグリーンジェット2号機の右側に描かれた「SAF Flight Initiative」のロゴ=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出発を待つANAグリーンジェット2号機787-8 JA874A=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港でSAFの給油準備が進むANAグリーンジェット2号機787-8 JA874A=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で出発を待つANAグリーンジェット2号機787-8 JA874A=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港を出発するANAグリーンジェット2号機初便の福岡行きNH253便=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAのスタッフに見送られて羽田空港を出発するANAグリーンジェット2号機初便の福岡行きNH253便=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAのスタッフに見送られて羽田空港を出発するANAグリーンジェット2号機初便の福岡行きNH253便=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港を出発するANAグリーンジェット2号機初便の福岡行きNH253便=22年11月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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