全日本空輸(ANA/NH)は6月23日、米プラット&ホイットニー製エンジン「PW4000」を搭載するボーイング777型機の運航を再開した。1年4カ月ぶりとなった再開初便は、羽田発福岡行きNH255便(777-200ER、登録記号JA742A)で、羽田を定刻の午後1時40分に出発した。
—記事の概要—
・10月末までに全機復帰
・ANA機はトラブルなし
・JALは全機退役、ユナイテッドは再開済み
10月末までに全機復帰
PW4000エンジンを搭載する777を保有する国内の航空会社は現在ANAのみで15機。すべて国内線機材で、777-200が2機、航続距離延長型の777-200ERが8機、長胴型の777-300が5機。順次改修を進めて夏休みの繁忙期に備え、10月末までには全15機が復帰する見通し。
3機種の座席数は、計10機ある777-200と777-200ERは2クラス392席仕様(プレミアムクラス28席、普通席364席)と2クラス405席仕様(プレミアムクラス21席、普通席384席)が混在しており、392席仕様が4機、405席仕様は6機。777-300は全機が2クラス514席仕様(プレミアムクラス21席、普通席493席)となる。
今回再開初便の福岡行きNH255便に投入したJA742Aは、2クラス405席仕様。乗客202人(幼児1人含む)を乗せ、羽田の63番スポットを定刻の午後1時40分に出発し、D滑走路(RWY05)を同56分に離陸した。
第2ターミナルの展望デッキには、平日にもかかわらず多くの人が再開初便をひと目見ようと集まっていた。
ANA機はトラブルなし
2021年2月20日(日本時間21日)に米国で発生した米ユナイテッド航空(UAL/UA)の777-200(登録記号N772UA)のエンジントラブルを受け、国土交通省航空局(JCAB)は同じエンジンを搭載する777の運航停止を、ANAと当時保有していた日本航空(JAL/JL、9201)に同日指示。海外の航空各社にも同型機による日本への乗り入れ停止を指示していた。
現時点で国の運輸安全委員会(JTSB)は最終調査結果を公表していないが、ANAによると、(1)疲労亀裂によるエンジンファンブレードの破断、(2)ファンブレード破断が引き起こすエンジン振動によるエンジンカウル損傷と脱落、(3)スラストリバーサー(逆噴射装置)の損傷と作動油遮断バルブ不具合による防火機能の低下、が推定原因だという。
JCABは今年3月18日付で、PW4000を搭載する777の商業運航停止を解除。再発防止策を策定し、エンジン内にあるファンブレードの非破壊検査の強化や、インレット・カウルの強化、火災防止向けの改修などを条件に、防止策を施した機体の運航再開を認めている。
ANA機ではPW4000関連で上述のトラブルは起きていないが、(1)ファンブレード破断防止のため非破壊検査の間隔短縮、(2)エンジンカウルの構造強化、(3)エンジンの防火機能強化などの対策を実施している。
JALは全機退役、ユナイテッドは再開済み
JALは2020年度で全機退役済み。当初は2021年度末までに当時残っていた7機(777-200:5機、777-300:2機)を全機退役させる計画だったが、予定を前倒しして後継機のエアバスA350型機に置き換えた。
ANAとJALが国際線に投入している777-300ERや、JALが国内線に転用した777-200ERは米GE製エンジンGE90を採用しており、運航停止の対象外となっている。
ユナイテッド航空はPW4000を搭載する777-200について、6月に国際線で運航を再開。同社によると、対象となる全52機の運航再開許可をFAA(米国連邦航空局)から取得したという。
*国内線新仕様機の再開初便はこちら。
*写真は17枚(再開初日の運航スケジュールは写真下に掲載)。
再開日の運航スケジュール
NH255 羽田(13:40)→福岡(15:35)
NH260 福岡(16:20)→羽田(18:05)
関連リンク
全日本空輸
Pratt & Whitney
Boeing
ボーイング・ジャパン
国内線新仕様機も復帰
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ユナイテッド航空は6月再開
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3月に運航停止解除
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21年2月に運航停止指示
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N772UA関連
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PW4000搭載機
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