エアライン, 機体, 解説・コラム — 2022年6月8日 17:13 JST

ATR、日本市場で100機目指す ORCは今秋以降に納入へ

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 仏ATRは6月8日、日本市場について今後100機のATR機が運航されるとの見通しを示した。長崎県に本社を置くオリエンタルエアブリッジ(ORC、NGK)や、今年度内の就航を目指している新潟県の地域航空会社「TOKI AIR(トキエア)」がATR機の運航会社として加わる方向であることから、2025年に初納入を目指すSTOL(短距離離着陸)型のATR42-600Sなどの新機種を含めて日本市場での規模拡大を目指す。

都内で会見するATRのステファノ・ボルトリCEO=22年6月8日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
3社が15機運航中
ORCは今秋以降受領、トキエアはカーゴフレックス初採用
新エンジンで燃費・整備性向上

3社が15機運航中

 2年ぶりに来日したステファノ・ボルトリCEO(最高経営責任者)は、「現在天草エアライン(AHX/MZ)、日本エアコミューター(JAC/JC)、北海道エアシステム(HAC、NTH/JL)の3社が15機のATR機を運航している。ATR機の多くは経年機を置き換えるもので、日本の離島や遠隔地と主要都市を結ぶことが出来る」と語った。

鹿児島空港を離陸するATR42-600 JA11JC=22年6月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ATRのターボプロップ機は、天草エアラインが日本で初導入し、2016年2月20日にATR42-600(1クラス48席)を就航させた。その後、日本航空(JAL/JL、9201)グループで鹿児島空港を拠点とする日本エアコミューターがATR42-600(同48席)とATR72-600(同70席)を導入。2020年4月12日には、JALグループで札幌の丘珠空港を拠点とする北海道エアシステムが、ATR42-600(同48席)を就航させた。

 天草は1機のATR42、JACは9機のATR42と2機のATR72の計11機、HACは3機のATR42を受領済みで、3社の発注分15機は完納。2021年11月にHACのATR42の3号機(登録記号JA13HC)が札幌の丘珠空港へ到着し、今年5月8日にJACの11機目となるATR42の9号機(JA11JC)が鹿児島空港へ到着したことで、15機がそろった。

 ATRでは、日本全国の97空港に就航でき、10空港ある滑走路長が1000mに満たない空港でもSTOL(短距離離着陸)型のATR42-600Sを運航できるとして、市場拡大を目指す。また、航空貨物会社フェデックス・エクスプレス(FDX/FX)が2020年12月に初受領した貨物機ATR72-600Fも売り込む。

 一方、ATR全体で見ると、ニュージーランド航空(ANZ/NZ)へ通算1600機目の機体を2021年12月17日に引き渡しており、2021年は31機の新造機を納入している。

ORCは今秋以降受領、トキエアはカーゴフレックス初採用

 今後日本の航空会社へ引き渡される機体のうち、ORCは今年秋以降にATR42-600の初号機を受領する見通しで、2023年度以降に離島路線の定期便へ投入する計画を進めている。3機保有するボンバルディア(現デ・ハビランド・カナダ)DHC-8-Q200型機(1クラス39席)を、ATR42に置き換える。

Q200をATR42に置き換えるORC=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 トキエアは就航前に必要となるAOC(航空運送事業の許可)を国土交通省から取得する段階で、安全性や持続的な運航が可能かを規定や訓練体制などを基に審査された後、今年度の就航を目指す。トキエアは2機のATR72-600のリース契約をアイルランドの航空機リース会社ノルディック・アビエーション・コントラクターと締結済み。

 また、トキエアの機体は、客室前方を貨物室に変更できるオプション「カーゴフレックス(CargoFlex)」を初採用する。ATR42-600の場合、30席と700kgの追加貨物、ATR72-600では44席と1400kgの追加貨物を搭載できる。

 トキエアはSTOL型となるATR42-600Sの導入も検討しているが、確定発注には至っていない。ATRは5月にATR42-600Sの飛行試験機を初飛行させており、2023年から型式証明取得フェーズに入る見通し。ATRのコマーシャル部門シニア・バイスプレジデントのファブリス・ヴォーティエ氏は、「2024年末に承認を取得し、2025年初めに引き渡しを始める」と述べた。

トキエアの機体デザイン案(同社資料から)

初飛行するATR42-600S(ATR提供)

新エンジンで燃費・整備性向上

 また、ATRはプラット&ホイットニー(PW)の新型ターボプロップエンジンPW127XTを、2023年以降の標準装備にする。コンプレッサーやタービンモジュールを改良することで性能を向上させ、燃費を3%改善し、10年間でエンジンの定期点検を2回に抑えることで整備コストを抑え、エンジンオーバーホールも2万時間まで延長する。

 ボルテリCEOは「整備コストは大幅に下がり、環境負荷も抑えられる」とした。

 5月18日に開発計画を発表した次世代ターボプロップ機ATR「EVO」は、2023年までに開発プログラムを開始し、2030年までに市場投入する見通し。「これまでのテクノロジーを安価な価格で提供する」と述べ、次世代機の登場が航空券の価格を抑えることにつながるとの考えを示した。

*EVOの計画や日本市場の見通しについて、ボルテリCEOへの単独インタビューを追って掲載します。

PW127XT(ATRのサイトから)

ATRが開発を計画する次世代機「EVO」(イメージ、同社提供)

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