エアバス, エアライン, 機体, 解説・コラム — 2021年5月9日 12:56 JST

JALの次世代旗艦A350-1000、客室はどう進化するのか

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 日本航空(JAL/JL、9201)が、次世代のフラッグシップであるエアバスA350-1000型機を2023年に就航させると2025年度までの中期経営計画で明らかにした。長距離国際線に投入しているボーイング777-300ER型機の後継機で、同じく13機を導入する計画だ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、新造機の受領を遅らせる航空会社も世界的にみられるが、計画通りの導入になりそうだ。

羽田で公開されたA350-1000飛行試験2号機=18年2月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALは1990年代から主力大型機として運航してきた777を、2019年からエアバスの最新鋭機A350へ置き換えている。確定発注は標準型のA350-900が18機、長胴型のA350-1000が13機の計31機で、このほかにオプション(仮発注)で25機購入する契約を結んでいる。

 現在はA350-900を8機受領済みで全機を国内線に投入。2021年度は6機が引き渡され、14機がそろう。これまでは羽田発着のみだったA350による運航便は、3月15日から伊丹-那覇線にも投入されている。日米でファンブレード問題が発生し、運航停止が続いていたプラット&ホイットニー(PW)製エンジンPW4000を搭載する国内線機材の777-200と777-300は3月末ですべて退役し、A350への置き換えが進んでいる。

 エアバスの4月末時点の受注実績によると、A350は49社から913機受注しており、39社が422機を運航中。このうちA350-900は受注が745機、納入済みが368機で、A350-1000は受注が168機、納入済みが54機となっている。

 エアバスの双発旅客機では最大のA350-1000は、A350-900と何が違うのだろうか。そして、JALの次世代フラッグシップの客室はどう進化するのだろうか。

主脚は6輪に
最多発注はカタール航空

主脚は6輪に

 A350-1000は、A350 XWBファミリーで胴体が最長となる長胴型の機体。全長は73.78メートルで、標準型で66.8メートルのA350-900より6.98メートル長い。座席数はメーカー標準仕様で3クラス366席と、A350-900の325席より41席(12.6%)多く、航続距離は7950海里(1万4350キロ)、最大離陸重量は308トンとなる。

羽田に駐機中のA350-1000飛行試験2号機=18年2月14日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 システムの95%がA350-900と共通で、タイプレーティング(機種別操縦資格)も共通なため、航空会社が需要や路線のニーズに合わせて2機種を使い分けやすい。

 エンジンは英ロールス・ロイス製Trent XWB-97(トレントXWB-97)で、推力は9万7000ポンド。ロールス・ロイスによると、A350-900用のTrent XWB-84(推力8万4000ポンド)と比べ、新しい高温タービン技術やより大きなエンジンコア、ファンの空力特性の組み合わせで推力を増加させたという。機体の空力改善やエンジンにより、777やA340-600と比べて燃費や1座席あたりの運航コストは25%改善している。

 約7メートル長くなった胴体以外でわかりやすい違いは、メインランディングギア(主脚)がA350-1000では6輪のものに改められた。A350-900は787などと同じ4輪だが、置き換え対象である777と同じタイヤの数になっている。また、主翼の後縁が改良された。

主脚が6輪となったA350-1000の飛行試験2号機=18年2月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田で公開されたA350-1000飛行試験2号機のロールス・ロイス製エンジンTrent XWB-97=18年2月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 A350-900にも共通する客室の特徴として、エアバスはA350のファーストクラスやビジネスクラスなどでは、中央のオーバーヘッドビン(手荷物収納棚)をなくした開放感のある仕様を航空会社に提案している。

 A350-1000が東京に初飛来した2018年にエアバスの担当者に聞いたところ、ほとんどの航空会社がビジネスクラスなどでこの仕様を採用しているという。JALも国内線機材であるA350-900は中央のオーバーヘッドビンを備えているが、国内線よりも乗客数にゆとりがある国際線用のA350-1000では、開放感のあるデザインを採用する可能性が高そうだ。

 胴体は53%がカーボンファイバー、14%がチタンと軽量化を進めている。客室内は高度6000フィート(1829メートル)以下の状態を一定に保てるため、快適性が向上。ビジネスクラスやエコノミークラスといったゾーンごとに空調や1670万色のLED照明をきめ細かく管理でき、機内の空気も2-3分ごとに入れ換える。

 一般的に、客室の仕様を決めるデッドラインは納入開始の2年前程度と言われており、JAL機も仕様がほぼ固まっていることだろう。近年はファーストだけでなく、ビジネスクラスでもカタール航空やデルタ航空(DAL/DL)を皮切りに個室タイプの導入が進んでおり、どのような上級クラスが登場するのだろうか。

シンガポール航空ショーで公開された中央の手荷物収納棚を廃したA350-1000試験2号機のビジネスクラス=18年2月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

パリ航空ショーで公開されたA350-1000試験2号機のビジネスクラス=17年6月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

A350-900の国内線ファーストクラスは中央のオーバーヘッドビンあり。国際線と国内線ではニーズが異なるため、こうした部分も変わるだろう=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

最多発注はカタール航空

 最初にA350-1000を受領したのはカタール航空(QTR/QR)で、42機発注したうち19機が納入された。受領済みの航空会社で発注数が多い順でみると、エティハド航空(ETD/EY)が20機発注し5機受領済み、キャセイパシフィック航空(CPA/CX)が18機発注して14機受領済み、ブリティッシュ・エアウェイズ(BAW/BA)も18機発注し8機受領済み、ヴァージン アトランティック航空(VIR/VS)が8機発注し5機が引き渡されており、リース機を含めると7機運航中、エア・カライベス(FWI/TX)が4機発注し1機を受領している。

トゥールーズで引き渡されたキャセイパシフィック航空のA350-1000初号機=18年6月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

トゥールーズで引き渡されたJALのA350-900初号機=19年6月13日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JAL以外で未受領の航空会社は、イラン航空(IRA/IR)が16機、大韓航空(KAL/KL)と合併するアシアナ航空(AAR/OZ)が9機、台湾の新興航空会社スターラックス航空(星宇航空、SJX/JX)が8機、ラタム航空(LAN/LA)が2機となっている。また、米国の航空機リース会社エアリース・コーポレーション(ALC)が10機発注し、引き渡された2機はヴァージンが運航している。

 一方、ボーイングは777-300ERの後継となる777Xを、これまでより大型化する777-9と小型化する777-8の2機種に分けた。メーカー標準座席数は777-9が2クラス426席、777-8が同384席で、開発遅延により777-9の引き渡しが始まるのは2023年後半になる見通し。

 777X全体の確定発注は361機と、168機のA350-1000を上回っているが、顧客の財務状況などを織り込んだ米国の収益認識基準(ASC 606)を反映させた「確定受注残」は191機になる。日本の航空会社では、ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸(ANA/NH)が777-9を20機導入する計画で、当初は今春の初受領を予定していたが、開発遅延や新型コロナの影響により2023年ごろを計画している。

 IATA(国際航空運送協会)の予測では、世界的な国際線需要の回復が2024年以降になるとみられ、日本の大手2社が次世代フラッグシップを就航させるタイミングと重なる。出張需要の変化などもある中、どのような客室になるのだろうか。

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