エアライン, ボーイング, 機体, 空港 — 2020年7月23日 19:52 JST

カンタス航空の747、カンガルー描きラストフライト QF7474便

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 カンタス航空(QFA/QF)は現地時間7月22日、「ジャンボ」の愛称で親しまれたボーイング747型機による最後の旅客便を運航した。新型コロナウイルスの感染拡大もあり、当初予定を約半年早めての退役となった。最終便は上空で同社のシンボルであるカンガルーの絵を描くなどし、最後の別れを惜しんだ。

カンタス航空のシンボルであるカンガルーを描く747ラストフライトQF7474便(flightradar24.comから)

 ラストフライトはシドニー発ロサンゼルス行きQF7474便で、機材は747-400ER(登録記号VH-OEJ)。操縦桿は同社初の女性機長であるシャレル・クイン氏が握った。

 カンタスや航空機の位置情報を提供するウェブサイト「フライトレーダー24」(flightradar24.com)などによると、QF7474便は現地時間午後3時28分にシドニーを離陸し、航空博物館である「歴史的航空機修復協会(HARS)」などの上空を通った後、ニュージーランドとの間にあるタスマン海上で、同社のシンボルであるカンガルーの絵を描いて飛行した。

 同機はその後、太平洋を横断し、ロサンゼルスには午後1時23分に着陸。飛行時間は14時間55分だった。

 カンタスは1971年8月に、同社初の747となる「City of Canberra」(747-200、VH-EBA)を導入。同年9月17日に乗客294人(ファーストクラス55人、エコノミー239人)を乗せ、シドニーからシンガポールへ初フライトした。これまでに747-100、747-200、747-SP、747-300、747-400、747-400ERを計65機運航した。

 1989年に就航した747-400は、6機の747-400ERを含めて27機購入し、リース機を含めて31機運航。最も新しい機体は2003年7月30日に受領した747-400ER「Wunala」(VH-OEJ)で、QF7474便はこの最終号機を使用した。

放水アーチで見送られてシドニーを出発するカンタス航空の747ラストフライトQF7474便(同社提供)

 747は、長きにわたり長距離国際線の主役であったことから「空の女王」とも呼ばれる。カンタスでは、約50年間で地球9万周に相当する36億キロメートル以上を飛行した。1989年には、747-400の初号機(VH-OJA)のデリバリーフライトを活用し、シドニー-ロンドン間約1万8000キロで民間機によるノンストップ飛行の世界記録を20時間9分の飛行時間で樹立。この記録は、2019年に同社の787-9が同区間を19時間19分で飛ぶまで破られなかった。

 一方、燃油費の高騰などにより747は世界的に退役が進み、中国から拡散した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受け、カンタスも当初予定を半年早めてラストフライトを行った。

 カンタスグループのアラン・ジョイスCEO(最高経営責任者)は「747はオーストラリアの航空の様相を変え、低価格と直行便という新時代を打ち立てた」と振り返った。

 今後は7月24日に、「航空機の墓場」とされる米カリフォルニア州モハベ空港まで飛行する予定で、17年間の旅客機としての役割を終える。

カンタス航空の747ラストフライトとなったQF7474便の操縦桿を握ったクイン機長(左)ら(同社提供)

747ラストフライト出発前に747-400ERと写真に収まるカンタス航空のジョイスCEO(中央)ら(同社提供)

シドニーを出発するカンタス航空の747ラストフライトQF7474便(同社提供)

シドニーを離陸するカンタス航空の747ラストフライトQF7474便(同社提供)

カンタス航空初の747となった747-200「City of Canberra」(同社提供)

初期の試験飛行でシアトル周辺を飛ぶカンタス航空初の747となった747-200「City of Canberra」(同社提供)

1970年代の747アッパーデッキのファーストクラス(カンタス航空提供)

1970年代の747エコノミークラス(カンタス航空提供)

1989年に就航したカンタス航空の747-400初号機(同社提供)

747の50年の歴史を伝えるカンタス航空の資料(同社提供)

747の50年の歴史を伝えるカンタス航空の資料(同社提供)

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