日英伊3カ国が共同開発する次世代ステルス戦闘機プロジェクト「GCAP(グローバル戦闘航空プログラム)」で、センサーなどの電子機器を担う英レオナルドUK、伊レオナルド、伊ELTグループ、三菱電機(6503)の4社は現地時間9月9日、新たなコンソーシアム「GCAP Electronics Evolution(G2E)」を立ち上げたと発表した。センサーと通信分野の設計・開発を進める体制を整え、主契約者となるジョイントベンチャー(JV)との連携を深める。

GCAPで開発する次期戦闘機のイメージ(レオナルド提供)
電子系統を担う4社は、東京で2023年3月に開かれた国際防衛見本市「DSEI Japan」で協力協定を締結。その後の3カ国による作業を経て、今年8月にコンソーシアム契約を結び、商業ベースでの協力体制を正式に発足させた。
新組織G2Eは、GCAP機体の統合設計を主導するジョイントベンチャー「エッジウィング」との契約締結に向けた準備を進めている。エッジウィングは、次期戦闘機の開発全体を統括しており、英BAEシステムズ、伊レオナルド、日本航空機産業振興(JAIEC)の3者が共同設立した。
G2Eが手がけるのは、戦闘機に搭載されるミッションアビオニクス「ISANKE & ICS(統合センサー・非運動効果および通信システム)」と、運用開始後の長期支援業務「TLSS(全寿命支援サービス)」。ISANKE & ICSは、将来の運用環境で発生する膨大な情報を収集・統合・活用する機能を備え、GCAPの中核技術として位置付けられている。
開発は、GCAPで設定された開発スケジュールを前提に進められ、設計段階から各国の自由な運用・改修が可能な構造を採る。G2Eの本部は英レディングに置かれ、日英伊の防衛当局が連携する国際機関「GIGO(GCAP International Government Organisation)」やエッジウィングとの連携体制を整える。
G2Eは、各国政府や産業界と連携し、安全保障、経済、技術人材の育成といった共通目標の実現を図る。日英伊3カ国による協力を軸に、欧州とアジア太平洋での安全保障体制の強化を長期的に目指すとしている。
一方、GCAPのエンジン開発は、英ロールス・ロイス、伊アヴィオエアロ、IHI(7013)の3社も同日9月9日に、開発段階からの国際共同体制への移行を発表。センターライン・デモンストレーターの設計を終え、構成部品の調達を開始したほか、積層造形による新型燃焼器の試験にも成功している。

GCAPの新コンソーシアム「GCAP Electronics Evolution」(レオナルド提供)
有人実証機
・英BAE、次期戦闘機の有人実証機デザイン公開 28年初飛行へ(25年7月17日)
エッジウィング設立
・日英伊、次期戦闘機開発で合弁会社「エッジウィング」設立 2035年就役へ(25年6月21日)
ファンボロー航空ショーで新モック
・日の丸入りも披露 日英伊の次期戦闘機、ファンボローで新モックアップお披露目「2025年は非常に重要な節目」(24年7月28日)
GIGO
・次期戦闘機、日英伊3カ国機関の初代トップに岡・元防衛審議官 35年配備(24年11月20日)
JAIEC
・次期戦闘機の新会社「日本航空機産業振興」事業開始 SJAC・三菱重工出資(24年7月10日)
次期戦闘機の動向
・防衛省、次期戦闘機に914億円 24年度予算案(23年12月24日)
・日英伊の次期戦闘機、BAEと三菱重工、レオナルドが3社協定合意(23年9月12日)
・日英伊の次期戦闘機、英国防省が1千億円超え大規模投資 35年配備へ(23年4月15日)
・次期戦闘機、模型を防衛展示会に出展 幕張メッセDSEI Japan(23年3月17日)
・次期戦闘機、三菱電機がレオナルドなどと協業契約 アビオニクスを共同開発(23年3月16日)
共同開発発表
・次期戦闘機、日英伊3カ国共同開発 F-2後継35年配備へ、米とは無人機開発(22年12月9日)
・IHI、次期戦闘機のエンジン参画 日英伊が共同開発(22年12月10日)
テンペスト
・英次世代戦闘機テンペスト、前部胴体を公開 日本も参画、5年以内に初飛行=ファンボロー航空ショー(22年7月21日)
・BAE、英次世代戦闘機テンペスト向け新工場(20年7月14日)
