エアライン, 解説・コラム — 2018年6月13日 15:00 JST

「一人でも多く社員を表紙に」特集・地上で働くJAL客室乗務員(1)社内報担当・上松可奈子さん

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 女性を中心に、客室乗務員は今も昔も人気の職業だ。しかし、利用者や就職活動に励む学生に、地上で2年から3年ほど勤務する客室乗務員たちの仕事ぶりは、あまり知られていないのではないだろうか。

 当紙でもこれまで、機内食を取り上げる際など、メニュー開発に携わった客室乗務員にインタビューすることもあった。今回は日本航空(JAL/JL、9201)で地上勤務を終えて乗務に戻る客室乗務員の上松可奈子さんと飯塚康子さん、異動間もない秋山恭子さんの3人に、普段の乗務との違いなどを聞いた。

インタビューしたJAL客室乗務員の(左から)上松さん、飯塚さん、秋山さん=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 1人目の上松さんは、コーポレートブランド推進部インナーブランディンググループのリードキャビンアテンダント。2015年3月の異動当時は広報部の所属で、社内報を制作する編集部員のひとりとして、JALの記者会見などではメディアとともに取材したり、イベントの司会役を務めたりと、地上で働く客室乗務員の中では、われわれと接点が多かったのが上松さんだ。社内報制作が現在の部署に移管されたことに伴い、所属も変わった。

 上松さんは任期を終え、4月からフライトに戻った。社内報作りを中心としたインナーブランディングは、どのようなもので、3年間の地上勤務は上松さんをどう変えたのだろうか。(肩書きは取材当時)

—記事の概要—
学生時代は写真部
「えらいところに来てしまった」
「いつも笑顔でいると、何事もうまくいく」

学生時代は写真部

社内報の編集を担当したJAL客室乗務員の上松さん=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALの社内報「ROUTE(ルート)」は月に1回発行。JALグループ全体に向けた社内報なので、3万5000人の社員が読者となり、時には取材対象になる。毎月1回発行で、校了日は毎月20日前後だ。編集部は4人体制で、4月号からは内容をリニューアルした。

 「普段は発行の2カ月前から企画を始めて、ページ構成を決めて取材を始めます。掲載の前月末には制作会社に渡し、内容確認や修正を何回か重ねて校了となります」と、上松さんは社内報作りの流れを説明する。

 出版物を手掛ける上で不可欠なのは、「ゲラ刷り」を使った内容確認だ。上松さんは、「ほかの会社では、2回から3回でゲラチェックは終わるようですが、グループ全体の社内報になるので、調整に時間がかかることが多いです。安全のことは入念にチェックしたいですし、同じ内容でもグループによって違う表現を使いたいなど、部署のこだわりを大事にしています」と、妥協しない誌面作りを続けてきた。

 ROUTEで重視しているのは、社長メッセージを毎月載せることだという。他社では役員の持ち回りとするケースもあるが、トップが今何を大切にしているのかをグループで共有できるものを目指し、編集部員がインタビューしている。

 上松さんは学生時代、写真部に所属し、自分で撮ったフィルムを暗室にこもり、現像していた経験を持つ。ROUTEの編集部員として、駐機場や格納庫を訪れる上松さんは、出発する飛行機を腹ばいになって撮影したりと、写真と真剣に向き合っていた。

 そうした努力のかいもあり、JALとして初めて応募したという2017年度の「経団連推薦社内報」では、応募数184誌の中で7誌が選出された特別賞のひとつに入った。リニューアルした4月号からは、従来モノクロだった誌面をカラー化。これまでは1人で8ページほど担当していたのを見直し、特集に力を入れていくという。

「えらいところに来てしまった」

機内食をPRする上松さん=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 異動から3年がたち、取材や司会も上手にこなしていた上松さんだが、広報部への異動を告げられた時は、社内報の編集も自分の仕事になるとは、思っていなかったという。

 「前任者がイベントの司会などをしていたことは知っていたのですが、社内報を同じ人が作っているとは知りませんでした。社内でも、PR活動している客室乗務員が社内報作りに携わっているとは、知らない人が多いと思います」と、上松さんは異動当時を振り返る。

 学生時代は写真部で過ごしたことから、カメラの扱いは慣れていたが、記事を書いたことはなかった。新卒で客室乗務員として入社したため、戸惑うことも多かったという。

 「パソコンの使い方やビジネスマナー、電話の外線と内線の違いなど、わからないことばかりでした。名刺を持ったこともなかったですし、客室乗務員のシフト勤務と違い、毎日同じデスクで仕事をするのも新鮮でした」と、乗務との違いに戸惑いながらのスタートだった。

 「デスクワークをしばらくして、“えらいところに来てしまった”と、震えました」と笑う。社内報作りに携わっていることを同期の客室乗務員に話すと、驚かれたという。

JALの名古屋-札幌線就航30周年式典で6代目制服を着用した上松さん。撮られる側であり撮る側でもあった=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 写真が得意な上松さんが心掛けていたのは、「一人でも多くの社員に、表紙を飾ってもらいたいです」という想いだった。各地の空港やさまざまな部署をまわり、表紙用写真を撮影した。

 制服を着用してPRを担当する客室乗務員として、イベントに登場する機会の多い上松さんが、カメラを手に取材先を訪れると「撮られる側じゃないの?」と、不思議がられることも多かったそうだ。そして徐々に、ROUTEの編集部員としても認知されていった。

 シフト勤務から毎日出社するデスクワークと、働き方が大きく変わった上松さん。「異動から1年くらいは探り探りでした。全然知らないこともたくさんあり、客室乗務員の仕事は、社内のいろいろな方に支えられているのだと実感しました」と話す。

 「フライトは、出発して到着すればお客様とも一期一会で、1便ごとに気持ちを切り替えることになります。地上勤務では、明日も同じ仲間と“この案件どうなってますか”と、社内報は終わりの見えない仕事であることも、大きな違いですね」と、楽しそうに説明してくれた。

「いつも笑顔でいると、何事もうまくいく」

 高校生のころは、薬剤師になりたかったという上松さんは大学に入学後、接客業に興味を持つ。母親からある時、「いつも笑顔でいると、何事もうまくいくよ」と言われ、客室乗務員を目指すようになった。

社内報の編集を担当したJAL客室乗務員の上松さん=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

セントレアのキャラクター「なぞの旅人フー」の帽子を直す6代目制服を着用した上松さん=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 新卒で客室乗務員として入社した上松さんが、広報部への異動を告げられたのは、国際線ファーストクラスに乗務する社内資格を得て、1年が過ぎようとしていたところだった。客室乗務員として、自分なりにやりたいことができる時期だ。しかし、社内報作りとなると、乗務資格を維持するための乗務はあるものの、接客とは距離ができてしまう。

 上松さんは、「これから何でもできる! と楽しみにしていたところでした」と、当時を振り返る。しかし、社内報にかかわるようになって、いろいろな発見があった。

 「社内報は家族の方にも読んでいただくものなので、専門用語をわかりやすく説明する必要があります。私が機内でお客様に説明していた際、わかりやすくお伝えできていたのかな、と考えました」と、乗客にわかりやすく説明することの大切さを、改めて感じだという。

 そして、客室乗務員にとって職場が機内であるため、会社に勤めているというよりも、所属部署である客室本部で働いている意識が強かったという。「異動前は、いち会社員としての意識が薄かったように思います。本当に恥ずかしいです」と、地上勤務で会社に対する意識が変わった。

 社内報作りを通じて、社内のさまざまな職種を知り、社員の仕事ぶりをわかりやすく説明することに悩んできた経験が、上松さんを成長させたようだ。

*次回は、社会貢献活動を推進する部署で、チャリティーマイルを活用してインドネシアに浄水器を届けた、飯塚さんに話を聞きます。

第2回につづく)

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