エアライン, 解説・コラム — 2018年6月16日 13:03 JST

「活動の理解者増やす発信も重要」特集・地上で働くJAL客室乗務員(2)CSR担当・飯塚康子さん

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 前回のつづき。日本航空(JAL/JL、9201)の客室乗務員の中には、地上で2年から3年ほど勤務する人もいる。地上で働くJAL客室乗務員特集の第2回目は、コーポレートブランド推進部シチズンシップグループのリードキャビンアテンダント、飯塚康子さん。2016年5月から地上勤務に就き、今年5月に空の仕事へ戻った。

 飯塚さんが所属していた部署は、第1回目で登場した上松可奈子さんと同じくコーポレートブランド推進部だが、社内報を担当した上松さんとはグループが異なる。飯塚さんの仕事は、会社のCSR(企業の社会的責任)活動や航空教室の講師などが中心だった。

CSRを担当したJAL客室乗務員の飯塚さん=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 新卒で客室乗務員になった上松さんと異なり、飯塚さんは大学卒業後、ほかの職業を3年間経験して入社した。しかし、飯塚さんもこれまで未経験なことばかりの仕事で、異動当初は戸惑うことも多かったという。

—記事の概要—
自分なりのやり方、2年目から
うまく発信していくことも重要

自分なりのやり方、2年目から

航空教室で質問に答える飯塚さん=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「どうすれば客室乗務員になれますか」「採用面接には、どのような準備が必要ですか」──。昨夏に羽田空港で開かれた中高生を対象とした航空教室で、客室乗務員の仕事を紹介していた飯塚さん。質問タイムに入ると、女子中高生たちから質問攻めにあっていた。

 JALの将来を担ってくれるかもしれない彼女たちに、飯塚さんは「面接は楽しむ気持ちを持ってほしいですね。友だちとお話しする感じのほうが、うまくいくと思います」と、アドバイスしていた。そして、華やかなイメージとは裏腹に、時差のある勤務で体力勝負であることも伝えていた。

 飯塚さんの地上での仕事は、社会貢献活動が柱になる。JALは2016年11月から、次世代育成プログラム「空育(そらいく)」を進めており、ウェブサイトから航空教室の申し込みがあった学校に、飯塚さんら社員が講師役として出向く。「客室乗務員の仕事を紹介したり、学生さんのインタビューを受けるのも仕事です」と飯塚さんは話す。

昨年7月に羽田空港で行った打ち水イベントに浴衣姿で参加した飯塚さん(後列右から2人目)=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 また、東北や熊本などの復興支援や、地方と海外の橋渡し、社内と異業種をつなぐ役割と、仕事の内容は多岐にわたる。

 このため、フライトから地上勤務に異動したばかりのころは、戸惑うこともあった。業務のひとつとして経理を受け持つことになったが、飯塚さんは未経験。「経理の勉強がすごく必要で、パソコンも初心者でした。慣れるまでは苦労が多かったですが、乗務だけでは身につかない知識が増えましたね」と、2年間を振り返った。

 自分なりのやり方ができるようになったのは、2年目に入ってからだったという。「それまではひたすら、前任者がどうやっていたかを参考にしていました」と、当初は勉強に追われながらの毎日だった。

うまく発信していくことも重要

社会貢献活動を続けていく上で理解者を増やす発信の大切さを感じたJAL客室乗務員の飯塚さん=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 飯塚さんは接客が好きで、高校生のころから空の仕事を意識するようになった。中でも大学生の時に家族とJALに乗った際、薬を飲もうとした時のエピソードが、今の仕事を目指すきっかけになったという。

 「手元に水がなかったので、客室乗務員に頼んだところ、白湯(さゆ)を出してくれました。さりげない気配りに感動しました」と、飯塚さんは話す。

 しかし、地上勤務ではボランティア活動の中核となるなど、未経験の領域にも踏み込まなければならない。

 社会貢献活動の中には、海外を対象にしたものもあった。利用者からチャリティーマイルを募り、インドネシアに浄水器を届けた。社内でボランティアを募集し、現地の人や一緒に活動するNPOとの調整を飯塚さんが担当した。

 「小学校や孤児院に浄水器を届けました。浄水器といってもシンプルなもので、現地で生活や農業に必要とされるものを届ける活動を、JALが支援しています。現地では子供と遊んだり、ボランティアの中にパイロットがいたので、飛行機の話もしました」と、ミニ航空教室も開いた。

 こうした取り組みの中には、飯塚さんが知らないものもあった。「社外との接点が多い部署で、自分がこうした活動に関われたのはうれしかったです」と振り返る。

 そして、客室乗務員だからこそ感じたこともあった。

 「客室乗務員は毎日パソコンを見ているわけではないので、こうしたら知ってもらえるかな、役に立つかなと、社内で知らない人にもしってもらえるよう、うまく発信して活動の理解者を増やしていくことも重要ですね」と、社内外で社会貢献活動の理解者を増やす工夫の大切さを感じた。

 航空業界を目指す学生たちや、復興支援で出会った人など、フライトとは違う人との接点を通じて、飯塚さんは「より思いを感じてサービスができるようになりました」と笑った。

*最終回となる次回は、機内で使う食器などを調達する部署で奔走する、秋山恭子さんに話を聞きます。

第3回につづく)

関連リンク
日本航空

特集・地上で働くJAL客室乗務員(全3回)
第1回 「一人でも多く社員を表紙に」社内報担当・上松可奈子さん(18年6月13日)
第3回 「CAの改善要望でもっと良いサービスを」調達担当・秋山恭子さん (18年6月30日)

過去に取材した地上勤務の客室乗務員
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