匿名顧客から受注? エアバスとボーイングが4月の受注実績で、匿名顧客から大型機を受注した。エアバスはA350-900型機を15機、ボーイングは開発中の777Xを28機受注しており、大型機としてはまとまった数の受注だ。

開発が進むボーイングの次世代大型機777X。写真は2022年のファンボロー航空ショーで飛行展示を終えて着陸した777-9=22年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
航空機の発注では一般的な「匿名顧客」だが、なじみのない人には「誰?」「匿名で飛行機を買えるの?」と思った人もいるようだ。もちろん、機体メーカーが素性のわからない相手と契約しているわけではない。契約者を公表しない理由があるためだ。
エアバスの受注・納入資料では「UNDISCLOSED」、ボーイングでは「Unidentified Customer」と表記される。いずれも、発注者名を受注表で公表していない顧客を指す。メーカーの発表資料では「匿名顧客」と和訳されることが多い。
匿名顧客と表記される理由はいくつかある。航空会社やリース会社が後日、自社イベントや航空ショーで発表したい場合や、競合他社に機材計画を知られたくない場合などだ。メーカーは毎月受注実績を公表しており、「受注実績には計上するが、顧客名はまだ出さない」という扱いだ。
ボーイングは、1955年から現在までの受注・納入実績を公表している。このうち、公表値で確認できる「Unidentified Customer」は1995年が最も古い記録だ。少なくとも30年ほど前から使われている表現と言える。

2025年のパリ航空ショーでデモフライトするエアバスのA350-1000飛行試験機=25年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
匿名顧客として受注リストに載った発注は、後に顧客名が明らかになることもある。例えば、カザフスタンのSCAT航空(VSV/DV)が4月に発表したボーイング737-9(737 MAX 9)5機の追加発注は、これまでボーイングの受注リスト上で匿名顧客とされていたものだった。
航空業界では、奇数年にパリ航空ショー、偶数年にロンドン近郊でファンボロー航空ショーが開かれる。パリは世界最大規模の航空ショーで、ファンボローもそれに次ぐ主要イベントとして知られる。機体メーカーや航空会社にとって、発注や受注を華々しく発表する舞台でもある。
航空機の発注は、金額が数百億円から数千億円規模になる大型商談だ。当然ながら航空ショーの会場で突然決まるわけではなく、価格や納期、機材構成、オプションなどを巡る交渉を経て発表に至る。航空ショーは契約そのものより、関係者がそろって発表する「晴れ舞台」に近い。
今年は7月にファンボロー航空ショーが開かれる。エアバスではA220の発展型として名前が挙がる180席クラスのA220-500、ボーイングでは将来の単通路機を巡る動きなどが注目されている。こうした新たな動向に合わせて、受注リストの「匿名顧客」が、どこかの航空会社やリース会社として名乗りを上げる場面が出てくるかもしれない。
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Airbus
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