エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2025年12月7日 21:30 JST

JAL、大気観測機「CONTRAIL」のサメ肌面積拡大 胴体37%に

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 航空機を使い、大気中のCO2(二酸化炭素)濃度などを測定する「CONTRAIL(コントレイル)」プロジェクトで、機体を提供している日本航空(JAL/JL、9201)は、ボーイング787-9型機に12月4日から使用機種を移行した。1993年から30年以上続くプロジェクトで、これまでに約2万2000便で3万件以上のデータを取得してきたが、観測装置を搭載した777の退役が進み、国際線機材の中で就航都市が多岐にわたる787-9が後継機に選ばれた。

成田空港を出発するJALのCONTRAIL特別塗装機初便のフランクフルト行きJL407便(同社提供)

 観測機器を搭載した初号機(登録記号JA868J)には、新しくなったコントレイル・プロジェクトのロゴが機体後部に描かれ、改修後初便の成田発フランクフルト行きJL407便が、4日午前10時45分に成田から出発した。

 この機体は、サメ肌の構造を模して燃費を改善する「リブレット」を塗装した最初の機体でもあり、燃費改善効果の検証も今年1月から続けている。コントレイル・プロジェクトの特別塗装機になった今回の改修では、リブレット塗装の面積も広げた。JALによると、2つのプロジェクトが同じ機体になったのは整備のタイミングによるもので、環境関連のプロジェクトをまとめたわけではないという。

 リブレット塗装は、塗料関連事業を手掛けるオーウエル(7670)がJAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同開発した施工方法「Paint-to-Paint Method」により、水溶性シートを貼り付けて機体の塗膜上にリブレット形状を転写し、水でシートを洗い流すとリブレット形状が完成する。シートの貼付と異なり重量増加がほとんどなく、はがれ落ちるリスクがないという。

シートを使いリブレット形状を787-9の胴体に転写するJALの整備士たち(同社提供)

新たにリブレット塗装を施したJALの787-9の胴体上部(同社提供)

 1月に運航を開始した時点で、787-9の胴体の27%にあたる部分に実施。今回は胴体上方へ転写するシート換算で380枚分、面積にして46平方メートル増え、37%に増加した。リブレット塗装にる燃費の削減効果は面積に比例し、これまでの0.24%から0.35%前後に上昇する見通し。成田-フランクフルト線を基に計算すると、燃料消費量削減は従来の年間約119トンから約174トン、CO2排出量削減は同約381トンが約555トンに改善を見込んでいる。

リブレット施工したJALの787-9の前でモックアップを使い塗装を実演するオーウエルとJALECのスタッフ=25年1月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 2つのプロジェクトの作業は10月から2カ月ほどかけて実施。リブレット塗装については、転写シートを圧着する治具の改良や、新たにサポート治具を開発したことに加え、位置合わせの治具を改良したことで、作業効率が上がった。また、品質向上で機体の見た目も大幅に改善できたという。

 JALによると、今回作業したコントレイル特別塗装機については、今のところ施工面積の拡大は予定していない。一方、現在は同機のみにリブレット塗装を施しているが、今後は増機も計画している。

 また、航空機用塗料でできたリブレット形状を転写することから、変色やはがれ、摩耗といった不具合は出ていないといい、1年近い運航でこうした部分の実機による実証も進んでいる。

 リブレットの寿命は、機体塗装の塗り替え目安となる8年から10年程度を見込む。今後はサメ肌構造由来のリブレットで、実際にどの程度の効果があるかなどを検証していく。

CONTRAILのロゴとリブレットのデカールが描かれたJALの787-9大気観測機器設置初号機JA868J=25年12月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CONTRAILロゴが描かれたJALの787-9大気観測機器設置初号機JA868J=25年12月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港で出発を待つJALのCONTRAIL特別塗装機初便のフランクフルト行きJL407便(同社提供)

成田空港を出発するJALのCONTRAIL特別塗装機初便のフランクフルト行きJL407便(同社提供)

成田空港を出発するJALのCONTRAIL特別塗装機初便のフランクフルト行きJL407便(同社提供)

関連リンク
日本航空
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