A320、737抜き小型機首位 37年7カ月で1万2257機納入

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 エアバスが現地時間10月8日(日本時間9日)に発表した9月末の納入実績で、小型機A320ファミリーの納入総数が1万2257機となり、ボーイング737を上回った。1988年3月28日にエールフランス航空(AFR/AF)へ初納入以来、37年7カ月で737を超えた。

737の納入総数を抜いたA320ファミリー最新のA321XLR=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
A321neoが大幅増
エアバス優勢も課題あり

A321neoが大幅増

 A320の生産は現在、新型エンジンなどで低燃費・低騒音を実現したA320neoファミリーに移行。9月末時点で、短胴型のA319neoが36機(前月比1機増)、標準型のA320neoが2262機(同18機増)、長胴型のA321neoが1859機(同40機増)で計4157機となり、前月比59機増加した。

納入の主力となったA321neo=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 これに生産が完了している第1世代のA320ceo(従来型A320)ファミリーの8100機を加えると、A320ファミリーの納入総数は1万2257機にのぼる。A320ceoファミリーの内訳は、A318が80機、A319ceoが1484機、A320ceoが4752機、A321ceoが1784機で、長胴型のA321は現行機A321neoがすでに上回っており、より大きな機体に対する需要が高まっている。

 また、最新機種A321XLRは世界最長の航続距離を誇る単通路機で、A321neoの航続距離を延ばした超長距離型。XLR(Xtra Long Range)は「超長距離」を意味し、最大11時間の飛行を燃料タンクの増設で実現し、航続距離にすると4700海里(約8704キロ)に達する。日本では、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)が初導入し、2032年度に導入を計画している。

 一方、ボーイングは9日時点で9月の納入実績を発表していないが、8月末の時点で総数が1万2214機。1967年12月28日にルフトハンザ ドイツ航空(DLH/LH)へ737-100を初納入したのが始まりで、総数1万2214機のうち、現行機737 MAXファミリーは1965機となっている。

初飛行する737 MAX初号機。納入は伸び悩んでいる=16年1月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 A320ファミリーの9月実績である1万2257機と、737の8月実績の1万2214機には43機の差があるが、エアバスが実績を発表前の3日に報じた仏紙「ル・モンド」によると、9月の737 MAXの生産機数は38機にとどまり、すべて航空会社やリース会社などに引き渡せたとしても差が埋まらず、小型機首位の座を明け渡すことになった。

 737 MAXは2度の墜落事故を起こした後、製造上の問題も発覚。増産に対してFAA(米国連邦航空局)は厳しい姿勢で臨んでおり、A320ファミリーが月産約60機であるエアバスにすぐ並ぶことは難しい情勢だ。

 ボーイングは、737NG(次世代737)と呼ばれる1世代前の737-600、737-700、737-800、737-900は機種ごとの納入実績を開示していたが、737 MAXについては内訳を明らかにしていない。

 また、名称も当初は「737 MAX 8」のようにファミリー名である「737 MAX」を大きく打ち出しているが、事故後はFAA(米国連邦航空局)などの公式文書で用いている「737-8」などの表記を用いているが、ボーイングのウェブサイト内や航空会社側の発表にはばらつきがあり、統一されていない。

エアバス優勢も課題あり

 737 MAXのうち、開発中の737-7(737 MAX 7)と737-10(737 MAX 10)の「型式証明(TC)」取得は2026年中の取得を目指しているが、大型機777XのTC取得がさらに遅れて納入開始が2027年にずれ込むとみられる中、影響が及ぶかが注目の的になっている。

2017年のパリ航空ショーでボーイングが示した機体ラインナップ。横軸が年、縦軸が座席数を示しており、2025年の250席クラスの位置にメディアが「797」と呼ぶ機体が描かれていた=17年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 コロナ前には、737 MAXと787の間のマーケット「MOM(Middle of the Market)」に投入する中型機「NMA(New Middlesize Airplane)」を計画しており、787に続く機体であることから「797」とも呼ばれていた機体に相当する新機種構想も再び本格化しているようだ。

 ボーイングは、737 MAXのみでは小型機市場をエアバスに明け渡す可能性が極めて高まっている。本来、737 MAXは開発計画にはなく、次世代の小型機開発を検討していたところ、新エンジンで燃費と静粛性を改善したA320neoファミリーが大ヒットしたことで、投入を余儀なくされた。「797」とも呼ばれる新機種を早期投入する必要性はあるものの、開発中の777Xの大幅な遅延や、787と737 MAXの品質問題をはじめ問題が山積しており、当面はエアバス機優勢の状況は変わりない。

 一方、エアバスも大型機A350の月産数が伸び悩むといった課題に直面している。サプライチェーン問題のように、A320neoファミリーにも製造上の課題が将来まったく発生しないとは考えにくいだろう。航空各社は機体をスケジュール通り受領することが日に日に難しくなっていると言える。

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