エア・カナダ(ACA/AC)は、日本路線のビジネスクラス「シグネチャークラス」で提供する和食の機内食を、今年の夏ダイヤから刷新した。カナダ・トロントのミシュラン星付き懐石料理「Kaiseki Yu-zen Hashimoto」のオーナー、橋本昌樹氏を起用し、懐石料理に着想を得た本格的なメニューを導入した。北米からの訪日需要が高まる中、機内から日本への旅を感じてもらう。

エア・カナダのビジネスクラス和食メニューを紹介する「Kaiseki Yu-zen Hashimoto」の橋本昌樹オーナーシェフ(中央)とエア・カナダのマーク・ナスー・マーケティング・デジタル担当執行役員副社長(右)、ワイス貴代アジア・太平洋地区統括支社長=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
橋本氏は、カナダを拠点に日本料理を40年以上提供し続けている懐石料理の第一人者。東京や京都の名門料亭での修業を経てカナダに渡り、懐石文化を広めてきた。今回の機内食では、前菜(膳菜)に「きんぴら蓮根」、小鉢(小物)に「ゴマ豆腐わさびソース添え」、主菜に「牛すき焼きの紅生姜添え」など、和の食材と調理法を活かした前菜や主菜が季節ごとに旬の素材を取り入れて登場し、白米と味噌汁もセットで提供される。また、機内で提供する際の食器はノリタケ食器製のものを採用した。
初監修となった今回は、カナダ発便での食材の現地調達や、機内食特有の冷凍前提のオペレーションに苦労したという。橋本氏は「できる限り日本と同じ見た目と味に近づけるよう、調理法や盛り付けに工夫を重ねている」と述べ、「見た目で日本を感じ、味で日本を思い出してもらえる体験を目指したい」と語った。今後も乗客の声を踏まえて改良を重ね、長期的に展開していくという。
提供する日本酒は、福島県の人気酒造が製造する「人気一(にんきいち)ゴールド人気 純米大吟醸」。代表の遊佐勇人氏によると、華やかでフルーティーな香りと軽やかな口当たりが特徴で、料理を引き立て、口の中をリセットできるようにしたという。

ビジネスクラスの和食メニューをリニューアルしたエア・カナダ=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ビジネスクラスの和食メニューをリニューアルしたエア・カナダ=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
エア・カナダのワイス貴代アジア・太平洋地区統括支社長は「和食は繊細で、機内で満足を得るのは難しいが、世界的にも評価が高く重要な位置づけにある。橋本氏との提携は、当社が日本市場をどれだけ大切にしているかの象徴」と説明。都内で今年3月に開かれた発表会には本社幹部も多数出席し、カナダ本社の取り組みに対する期待の高さをうかがわせた。
マーケティング・デジタル担当執行役員副社長のマーク・ナスー氏は「日本は当社にとって最も重要な市場のひとつ」と強調。「今回のメニューは“kaiseki-inspired”で構成されたマルチコースで、機内で本格的な和食体験を届けることで、北米の乗客が“旅を目的地からではなく、機内から始められる”ようになる」と述べた。今後はほかの国際市場でも同様のローカル対応を行う方針で、日本が最初の展開例となった。
夏ダイヤの日本路線は、バンクーバーから成田へ毎日、関西空港へ週4往復、トロントからは羽田と成田へ毎日、関空へ週3往復、モントリオールから成田へ毎日運航している。

エア・カナダのビジネスクラス和食メニューとともに提供する日本酒「人気一(にんきいち)」を手掛ける人気酒造の遊佐勇人氏(左)と「Kaiseki Yu-zen Hashimoto」の橋本昌樹オーナーシェフ=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ビジネスクラスの和食メニューをリニューアルしたエア・カナダ=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
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