エアバスで国際戦略を担当するエグゼクティブ・バイスプレジデントのヴァウター・ファン・ヴェルシュ氏は、国内では日本航空(JAL/JL、9201)が導入しているA350-1000より大きい超大型機は計画していないとの考えを示した。また、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)が国内初導入するA321XLRについては「ボーイングでさえ対抗できる機種を持っていない」として、長距離路線の開拓に貢献する独自の機材であると強調した。

エアバスのフラッグシップA350-1000。エアバスは現時点で超大型機は計画していない=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
—記事の概要—
・A321XLR「極めて大きな市場機会」
・A350-1000「納入ペース維持」
A321XLR「極めて大きな市場機会」
A321XLRはA321neoの航続距離を延長した超長距離型で、2019年6月にローンチ。XLR(Xtra Long Range)は「超長距離」を意味し、燃料タンクを増設することで、単通路機では世界最長となる航続距離を実現した。

ピーチのA321XLR(イメージ、同社提供)

都内で取材に応じるエアバスのヴァウター・ファン・ヴェルシュ国際戦略担当エグゼクティブ・バイスプレジデント=25年3月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
都内で3月12日に、Aviation Wireなどの取材に応じたヴェルシュ氏は、「A321XLRは、航空会社に新たな長距離路線開設の機会を提供する。まずはこの機材で運航を開始し、成功すればより大型の機材へ移行できる」と説明。「航続距離は4700海里(約8700キロ)で、約12時間(仕様上は最大11時間)の飛行が可能だ」と述べた。
エアバスはA321XLRの初号機をスペインのフラッグキャリアであるイベリア航空(IBE/IB)へ2024年10月に引き渡し、すでに500機以上の受注を獲得。ヴェルシュ氏は「このカテゴリーでは競合機が存在しない。ボーイングでさえ対抗できる機種を持っておらず、極めて大きな市場機会がある」と自信を示した。
国内の航空会社では、ピーチがA321XLRを3機導入すると2月25日に発表。A321neoも10機導入することから、2機種13機を親会社のANAホールディングス(ANAHD、9202)を通じて発注した。
A350-1000「納入ペース維持」
一方で、大型機市場については、A350-1000よりも大きい超大型機については「現時点で計画はない」と明言。エアバスの現行生産機ではA350-1000が最大の機体となっており、「まずは受注残の解消を進め、現在の納入ペースを維持することが重要」との考えを示した。

国内初導入となったJALのA350-1000=24年4月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
A350-1000はA350 XWBファミリーの長胴型で、メーカー標準座席数は3クラス350-410席、最大480席。JALのようにボーイング777-300ER型機の後継として導入する航空会社が多く、標準型のA350-900(3クラス300-350席、最大440席)より座席数を60席程度増やせる。2021年に生産が完了した総2階建ての超大型機A380は、4クラス400-550席、最大853席だった。また、ボーイングが開発中の777Xファミリーの長胴型777-9は、標準座席数を2クラス400-425席としている。
エアバスのギヨム・フォーリCEO(最高経営責任者)も、A380の生産完了が決まった2019年に500席クラスの機体について「需要が少ない」と発言しており、“A350-2000”とも言える超大型機は計画していないとした。
ワイドボディ市場全体では、エアバスは2024年に70%以上の市場シェアを獲得。A350に加えてA330neoの販売も好調で、ヴェルシュ氏は「過去最高のシェアを獲得した」と強調。「当社の航空機が顧客に高く評価されていることの証でもある」と述べた。
関連リンク
Airbus
A321XLR
・ピーチ、A321XLRを国内初導入 世界一遠く飛べる単通路機、A321neoで大型化も(25年2月25日)
・ANA、過去最多77機発注 E190-E2国内初導入、超長距離A321XLRをピーチに(25年2月25日)
・A321XLR、イベリア航空に世界初納入 マドリード-ボストン11月就航(24年10月30日)
A321XLR解説
・世界最長航続距離のA321XLR、何がA321LRと違うのか?(22年11月12日)
・A321LRとXLR、航続距離差はタンクにあった 特集・世界最長距離飛べる単通路機の秘密(22年6月28日)
500席機計画なし
・エアバス、500席機計画なし フォーリCEO「市場変わった」 A380後継なくA350-1000がフラッグシップ(19年5月22日)
・A380、2021年に生産終了へ エミレーツ航空、39機キャンセル(19年2月14日)