日本航空(JAL/JL、9201)は2月21日、スタートアップ企業などを対象とした社外ビジネスコンテスト「JAL Wingman Project(JALウイングマンプロジェクト)」で最優秀賞に選出した企業と協業し、新規事業を始めると発表した。JALが中期経営計画で経営の軸としている「ESG(環境・社会・企業統治)戦略」により、非航空領域での新規事業創出を狙う。初回はクラフトビールを製造するBeer the First(横浜・神奈川区)を選出し、ラウンジで出た余剰米を活用したクラフトビール「Japan Arigato Lager」を3月1日に発売する。
—記事の概要—
・非航空事業で連携
・初回の取り組みは「手触り感」
・余剰米はビール醸造に最適
非航空事業で連携
JAL Wingman Projectは2023年7月に始まった社外向けビジネスコンテストで、初年度のテーマは「より良い社会を目指し、社会に価値を生む新規事業を共に生み出す」とした。JALが持つ人・モノ・ノウハウ・場所などを活用し、コンテストで最優秀賞に選出されたパートナーとJALが、東京・天王洲のJAL本社近くにある研究拠点「JALイノベーションラボ(JAL Innovation Lab)」で研究を重ね、おもに非航空事業で連携していく。
初回は52社が応募し、9月の最終選考でBeer the Firstを最優秀賞に選出した。同社には協業や期間中に実施する実証実験などの費用支援として最大1000万円(人件費除く)を用意し、航空券も支援。半年間の試験協業のほか、2024年度以降の中長期的な協業も検討する。
JALは2021-2025年度の中期経営計画で、ESG戦略を経営の軸に据えており、今回のコンテストを通じ、社外のパートナーと中長期的に新しい価値を共創したい考え。
初回の取り組みは「手触り感」
JALイノベーションラボでアシスタントマネジャーを務める岡田千咲さんは、同プロジェクトの狙いについて「社内にはないアイデアで、非航空領域での新規事業を創出する」と説明。今年度(23年度)の募集開始は7月だったが、2024年度は募集をやや前倒しし、5-6月あたりから始めたいとした。
Beer the Firstを選出した理由については、「ESG戦略に合致してしたのが最も大きかった」とした上で、「一緒にやっていけそうだと感じた。初回の取り組みなので『手触り感』が必要だと思った」と、具体的な事業化へのビジョンが明確だったことを挙げた。
JALとBeer the Firstの協業は試験的となる。今後はクラフトビールの購入客などからのアンケートなど「販売2カ月で成果を判断」(岡田さん)し、長期的な協業も検討する。
余剰米はビール醸造に最適
Beer the Firstは廃棄食材を活用したクラフトビールの開発・販売を手掛けており、おもに炭水化物を使用し、ビールを醸造する。今回発売する「Japan Arigato Lager」は、成田空港にあるJAL国際線ラウンジで余剰となった炊飯済みの米を使用。ラガー酵母と混ぜ、クラフトビールにアップサイクル(作り替え)した。
同社の坂本錦一社長は、余剰米を原料に決めるまでに「検討を始めてから2カ月以内でたどり着いた」と説明。ラウンジでは利用客の満足度を維持するため、多めの米を用意する一方で余剰米が発生することから着目したという。
Beer the Firstはこれまで、災害備蓄米を原料としたビールを開発・販売した経験がある。ビールの醸造には粉砕した麦芽に熱を加え、炭水化物と混合する「糖化」という工程が必要となる。坂本社長は「余剰米は炊飯済みで、炊いてある米は糖化しやすい」と述べ、炊飯済みの余剰米はビールの醸造に最適だとした。
3月1日に発売するクラフトビール「Japan Arigato Lager」は、ホップがフルーティに香るCold IPAに仕上げた。坂本社長は「揚げ物や、しっかりとした味付けのものと楽しんで」とアピールする。350ミリの缶ビールで、デザインは2種類展開するが、中身は同一。オープン価格だが、1本700円程度で販売する見通し。
JALのショッピングサイト「JAL Mall」や羽田空港内の店舗「JAL PLAZA(JALプラザ)」などで取り扱い、Beer the Firstのウェブサイトや一部スーパーでも販売する。また3月5日からは成田空港にあるファーストクラスラウンジ「JAL’s SALON」でも数量限定で提供。このほか、国内各店舗やイベントでの販売も予定する。
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JAL Wingman Project
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