日本航空(JAL/JL、9201)の新たなフラッグシップとなるエアバスA350-1000型機。現行のボーイング777-300ER型機の後継となる長距離国際線機材で、羽田-ニューヨーク線が最初の投入路線になる。
JALが国際線のフラッグシップを刷新するのは19年ぶり。初号機(登録記号JA01WJ)の就航は10月29日に始まる冬ダイヤを予定しており、客室仕様も刷新して今年度(23年度)は2機導入する。
航空会社の機材調達は、このところ世界的なサプライチェーンの混乱などで、機体メーカーのデリバリーが遅れるといった問題が出ている。また、ボーイング787型機で起きている製造工程上の問題など、航空会社にとっては飛ばしたい時に飛行機がない、という事態にもなりかねない状況が世界的に続いている。
かつてJALは、初のジェット旅客機ダグラス(現ボーイング)DC-8-32型機には西陣織のシートを配したラウンジを設け、1978年には「ジャンボ」の愛称で親しまれた747で寝室サービス「スカイスリーパー」を始めた。
JALの最新鋭機A350-1000はどのような客室になるのか。そして、世界の航空会社にとって悩みの種になっているサプライチェーンの混乱は、JALの計画に影響を与えるのだろうか。赤坂祐二社長に聞いた。
—記事の概要—
・「自由に作れた時代とまったく違う」
・サプライチェーン混乱「A350は全然問題ない」
*第1回はこちら。
「自由に作れた時代とまったく違う」
── 冬ダイヤにA350-1000が就航する。かつてはDC-8のラウンジや、747のスカイスリーパーのように、航空業界の先端を行くようなサービスがあったが、A350-1000はどのような客室になるのか。
赤坂社長:そこまで期待されない方がいい(笑)。しかし、できるだけ今、取り得る最先端のものを作っていきたい。
昔と違って、飛行機の作り方に自由度がそれほどない。そういう意味で、人様と違うものを作っていくのが難しい時代だ。
昔は勝手に作れた、とまでは言わないが、(航空会社が比較的)自由に作れた時代とはまったく違う。特に、安全のレギュレーションが変わっているからだ。
サプライチェーン混乱「A350は全然問題ない」
── 世界的なサプライチェーンの混乱が航空会社の不安要因になっているが。
赤坂社長:A350がこれからメインで入ってくるが、全然問題ないと聞いている。
しかし、787は影響を受けている。デリバリーが遅れているが、これはサプライチェーンの問題ではなく、ボーイングの問題だ。
新造機に対するサプライチェーンについて、大きな問題が出ているとは聞いていない。
むしろ、既存の飛行機のスペアパーツはいろんな影響が出てくる可能性はある。我々も、特に客室の部品のサプライチェーンがかなり厳しい。これは実際に起こっている。
── 機材調達よりも日常の整備にサプライチェーンの問題が影響する、ということか。
赤坂社長:そうだ。世界的にその問題で飛行機が飛べない、という話を聞いている。うちはまだそこまでいっていないが。
── 路線を拡大しているZIPAIRは、787が計画通りデリバリーされるか否かで影響しそうだが、JAL本体は心配ないということか。
赤坂社長:そうだ。ZIPAIRも787固有の問題だ。
(つづく)
特集・JAL赤坂社長に聞くコロナ後の成長戦略(全4回)
(1)「成田はアジア-北米乗継で一番近い」
(3)航空業界の2050年脱炭素化「全然厳しい」
(4)「あまり航空から離れてもうまくいかない」
インタビュー先行記事
・【独自】JAL赤坂社長「若者の海外旅行離れはコロナと別問題」ZIPAIR活用し新旅行商品(23年6月7日)
JAL
・JAL、旗艦機A350-1000導入に注力 赤坂社長「国際線はCO2削減効果ある」(23年5月3日)
・【独自】JAL、国際線旗艦機を19年ぶり刷新 A350-1000、冬ダイヤ就航でCO2削減(23年1月1日)
・JAL赤坂社長「国際線は25年度も影響残る」今年度はコロナ前45%、国内線9割(22年5月7日)
ZIPAIR
・ZIPAIR、サンフランシスコ就航 成田で一番遅い米本土行き(23年6月2日)
ZIPAIR搭乗記・サーチャージなしで経費削減
前編 片道3万円でバンコクへ
後編 バンコクまでネット無料
番外編 フルフラットシートで片道10万円
IATA
・世界の航空会社、23年は純利益98億ドルに IATA第79回年次総会(23年6月5日)