旗艦機A350-1000客室「昔ほど自由に作れない」特集・JAL赤坂社長に聞くコロナ後の成長戦略(2)

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 日本航空(JAL/JL、9201)の新たなフラッグシップとなるエアバスA350-1000型機。現行のボーイング777-300ER型機の後継となる長距離国際線機材で、羽田-ニューヨーク線が最初の投入路線になる。

JALの中期経営計画説明会の会場に展示されたA350-1000の模型。冬ダイヤの就航を目指す=23年5月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALが国際線のフラッグシップを刷新するのは19年ぶり。初号機(登録記号JA01WJ)の就航は10月29日に始まる冬ダイヤを予定しており、客室仕様も刷新して今年度(23年度)は2機導入する。

 航空会社の機材調達は、このところ世界的なサプライチェーンの混乱などで、機体メーカーのデリバリーが遅れるといった問題が出ている。また、ボーイング787型機で起きている製造工程上の問題など、航空会社にとっては飛ばしたい時に飛行機がない、という事態にもなりかねない状況が世界的に続いている。

装飾画や西陣織のシートカバー、障子などが日本の伝統美を演出する富士号のラウンジ=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 かつてJALは、初のジェット旅客機ダグラス(現ボーイング)DC-8-32型機には西陣織のシートを配したラウンジを設け、1978年には「ジャンボ」の愛称で親しまれた747で寝室サービス「スカイスリーパー」を始めた。

 JALの最新鋭機A350-1000はどのような客室になるのか。そして、世界の航空会社にとって悩みの種になっているサプライチェーンの混乱は、JALの計画に影響を与えるのだろうか。赤坂祐二社長に聞いた。

—記事の概要—
「自由に作れた時代とまったく違う」
サプライチェーン混乱「A350は全然問題ない」
*第1回はこちら

「自由に作れた時代とまったく違う」

── 冬ダイヤにA350-1000が就航する。かつてはDC-8のラウンジや、747のスカイスリーパーのように、航空業界の先端を行くようなサービスがあったが、A350-1000はどのような客室になるのか。

イスタンブールでAviation Wireの取材に応じるJALの赤坂社長は「自由に作れた時代とはまったく違う」と今の客室デザインの難しさに触れた=23年6月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

赤坂社長:そこまで期待されない方がいい(笑)。しかし、できるだけ今、取り得る最先端のものを作っていきたい。

 昔と違って、飛行機の作り方に自由度がそれほどない。そういう意味で、人様と違うものを作っていくのが難しい時代だ。

 昔は勝手に作れた、とまでは言わないが、(航空会社が比較的)自由に作れた時代とはまったく違う。特に、安全のレギュレーションが変わっているからだ。

サプライチェーン混乱「A350は全然問題ない」

── 世界的なサプライチェーンの混乱が航空会社の不安要因になっているが。

赤坂社長:A350がこれからメインで入ってくるが、全然問題ないと聞いている。

ZIPAIR初の新造機JA850J。787のデリバリー遅延はZIPAIRの計画にも影響を及ぼす=23年4月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 しかし、787は影響を受けている。デリバリーが遅れているが、これはサプライチェーンの問題ではなく、ボーイングの問題だ。

 新造機に対するサプライチェーンについて、大きな問題が出ているとは聞いていない。

 むしろ、既存の飛行機のスペアパーツはいろんな影響が出てくる可能性はある。我々も、特に客室の部品のサプライチェーンがかなり厳しい。これは実際に起こっている。

── 機材調達よりも日常の整備にサプライチェーンの問題が影響する、ということか。

赤坂社長:そうだ。世界的にその問題で飛行機が飛べない、という話を聞いている。うちはまだそこまでいっていないが。

── 路線を拡大しているZIPAIRは、787が計画通りデリバリーされるか否かで影響しそうだが、JAL本体は心配ないということか。

赤坂社長:そうだ。ZIPAIRも787固有の問題だ。

つづく

関連リンク
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ZIPAIR

特集・JAL赤坂社長に聞くコロナ後の成長戦略(全4回)
(1)「成田はアジア-北米乗継で一番近い」
(3)航空業界の2050年脱炭素化「全然厳しい」
(4)「あまり航空から離れてもうまくいかない」

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