エアライン, 空港 — 2023年12月25日 18:22 JST

ANA、羽田-八丈島線でSAF利用 都が助成、5カ月間継続使用

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 全日本空輸(ANA/NH)は12月25日、羽田-八丈島線で代替航空燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:サフ、持続可能な航空燃料)」を活用した運航を始めた。東京都による助成事業で、2024年5月までを予定。国内線定期便でSAFを継続的に使用するのは日本初となり、1日3往復全6便に使う。

羽田空港でSAFの給油状況などを視察した小池都知事(左)とANAの井上社長=23年12月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 羽田-八丈島線は小型機のボーイング737-800型機(2クラス166席)で運航。燃料消費量は通常のジェット燃料で1往復あたり約8キロリットル、CO2(二酸化炭素)排出量は約80トン。事業期間の約5カ月間で、SAFの原液「ニートSAF」を約100キロリットル使用し、CO2排出量を約400トン削減できる見通し。SAFは既存のジェット燃料と同じ給油設備などを利用できるが、対象便に対して個別に給油するのではなく、帳簿上でCO2排出量を削減したものとして扱っていく。

 都の助成は最大6000万円。羽田-八丈島線で使う燃料のうち、25日から年内は約10%、年明けからは約1%にあたる量のSAFを使用する。航空需要の増加が見込まれる「フリージア祭」が開かれる春休みとゴールデンウィークは、1週間ずつSAFの割合を10%に増やす。また、利用者にSAFの存在を知ってもらう情報発信なども検討しており、認知度向上につなげる。

羽田空港でSAFを給油するANAの八丈島行きNH1893便=23年12月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港でANAの井上社長(左)からSAFの説明を受ける小池都知事=23年12月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAは2020年11月6日に、日本の航空会社では初めて日本出発の定期便にSAFを使用。2022年11月14日には、ANAの国内線定期便で初めてSAFを使った。今回は都が公募した「バイオ燃料活用における事業化促進事業」で、ANAが提案した羽田-八丈島線でのCO2排出量削減事業が採択された。ANAによると、都の助成を受けることから、都内の生活路線である八丈島線を選んで応募したという。

羽田空港でSAFの給油状況などを視察した小池都知事=23年12月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAの井上慎一社長は「こうしたご支援がないと、なかなか個社だけでは対応できない。SAFは価格が高いが、大事なキーとなる燃料だ」と述べ、航空業界が2050年までに実現を目指すCO2排出実質ゼロを実現する上で、SAFの普及が不可欠であるとの認識を示した。

 今回使用するSAFは、フィンランドのネステ社が製造したものを代理店の伊藤忠商事(8001)が輸入。SAFは廃食油や、サトウキビなどのバイオマス燃料、都市ゴミ、廃プラスチックを使って生産するもので、ANAによると今回使うSAFはラードなど動物油脂が原料になるという。

 25日は東京都の小池百合子都知事が羽田空港を訪れ、SAFの給油状況を視察。小池知事は「廃食油をどうやって確保していくのかなど、課題と解決策を進めながら、より持続可能なサプライチェーンを作っていくことが必要だと思う」と感想を述べた。

 SAFは国内生産に向けた研究が進められており、ANAは日本航空(JAL/JL、9201)や日揮ホールディングス(1963)などとSAFの国産化を目指す有志団体「ACT FOR SKY(アクトフォースカイ)」を2022年3月2日に設立。国産SAFは、2025年度にも利用できるようになる見込み。

羽田空港でSAFの給油状況などを視察した小池都知事(左)とANAの井上社長=23年12月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
東京都
全日本空輸

ANAのSAF
ANA、国内混合SAFを初調達 伊藤忠から、羽田・成田で活用(23年4月4日)
ANA、米ベンチャーからSAF調達 伊藤忠と合意、25年以降導入(23年1月17日)
ANA、グリーンジェット2号機就航 SAFを国内線定期便で初使用(22年11月14日)
ANA、企業参加型CO2削減プログラム始動 代替燃料「SAF」で排出量減(21年10月14日)
ANA、バイオ燃料で定期便運航開始 CO2を9割削減(20年11月6日)

2012年の取り組み
「まだ実験レベル」のバイオ燃料、その現状は? ANA担当者に聞く(12年6月18日)
全日空、世界初の787にバイオ燃料を搭載したデリバリーフライト実施(12年4月18日)

JOINと協力覚書
ANAとJAL、支援機構と海外SAF製造・調達(22年12月20日)

「ACT FOR SKY」設立で国産SAF実用化へ
ANAやJALら、国産SAF実用化へ「ACT FOR SKY」設立 3月2日は「サフの日」代替燃料で脱炭素社会へ(22年3月2日)

ANAとJALで共同レポート
ANAとJAL、代替燃料「SAF」普及へ共同レポート策定 2050年CO2排出実質ゼロへ(21年10月8日)