エアライン, 解説・コラム — 2023年4月4日 19:30 JST

ANAの国内線システム障害、DBサーバーが2台同時停止 2.6万人影響

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 全日本空輸(ANA/NH)は4月4日、国内線システムで3日午後に起きた不具合について、4日午前にすべて復旧したと発表した。この影響で3日の国内線55便が欠航し、約6700人に影響が出たほか、30分以上の遅延が153便発生して約2万人に影響が及び、4日も遅延が2便発生して約85人に影響。2日間の影響者総数は約2万6700人にのぼった。不具合の原因は現在も調査を続けているという。

*原因と再発防止策はこちら

国内旅客システムで起きた障害について陳謝するANAの服部常務(右)と加藤デジタル変革室長=23年4月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
空港の案内表示は別系統
5回目のシステム障害

空港の案内表示は別系統

 4日に都内で会見したオペレーション部門を統括する服部茂・取締役常務執行役員は「欠航便、遅延便を多数発生させる事態を引き起こした。皆様に深くお詫び申し上げる」と陳謝した。

国内旅客システムで起きた障害について説明するANAの服部常務(右)と加藤デジタル変革室長=23年4月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 不具合は3日午後2時16分に、顧客情報や便情報などを扱う「国内旅客システム」で発生。国内線全便の予約や販売、搭乗手続きができない状態になり、利用者へのメールやSMS、ANAアプリでの案内もできなくなった。ANAの利用者だけでなく、同じシステムを使うエア・ドゥ(ADO/HD)、ソラシドエア(SNJ/6J)、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)、アイベックスエアラインズ(IBEX、IBX/FW)、オリエンタルエアブリッジ(ORC/OC)の5社にも影響が及んだ。

国内旅客システムの通常時(ANA提供)

 ANAによると、国内旅客システムは2015年に自社で構築。同じ構成で「A系」と「B系」の2系統用意し、通常は1系統を稼働させ、残り1系統を不具合などに対処するために待機させており、定期的に役割を入れ替えて運用しているという。

 各系統のシステム内には、同じデータが入ったデータベースが2つあり、内容を常に同期させているが、今回は稼働していたA系内のデータベースが2つ同時に停止したことで不具合が発生。A系のデータベースの再起動を試みたが復旧しなかったことから、待機していたB系への切り替えを午後3時から始め、不具合発生から55分後の午後3時11分にB系への切り替え作業が完了し、予約・販売・搭乗手続きシステムは徐々に復旧し、各地で運航を再開した。

 その後、羽田空港での混雑が続いていたことから、午後4時50分に国内線22便の欠航を決定。羽田を中心にチェックインカウンターや保安検査場などの混雑が解消されず、遅延が1-2時間続くと各空港の運用時間内に到着できない便が発生することから、羽田を午後6時5分以降に発着する33便の欠航を追加決定し、3日の欠航便は計55便になった。

 4日午前4時11分には、利用者へメールなどで情報を配信するシステムも復旧し、すべてのシステムが出来るようになった。その後、不具合が生じたA系のデータベースも午前9時52分に復旧して待機状態になり、不具合発生前と同じ状態に復旧した。

 ANAによると、各空港内に設置されている発着便の案内表示は、障害が発生した国内旅客システムとは別の運航系システムから情報を得ているため、一部不完全ではあったものの、出発時刻や搭乗口などの情報は表示できていたという。

4月3日14時16分に不具合発生時の国内旅客システム(ANA提供)

4月3日15時からB系へ切り替えを始めた国内旅客システム(ANA提供)

4月4日早朝4時11分時点の国内旅客システム(ANA提供)

4月4日朝9時52分時点の国内旅客システム(ANA提供)

5回目のシステム障害

 デジタル変革室長の加藤恭子・執行役員は「ハードウェアの障害ではないことは切り分けられている」と述べ、ソフトウェアで起きた不具合として原因究明を進めている。また、「SKiP(スキップ)サービス」と呼ぶ国内線航空券の購入や座席指定を済ませた乗客が、保安検査場に直接向かえるサービスを、3月31日で終了したことについては、「関係ないことが判明した」(加藤氏)という。

 また、外部からサーバーを攻撃された痕跡はなく、現在は障害が発生したデータベースに、どのソフトウェアがアクセスしたかなどの調査を進めている。

 ANAでは過去にシステム障害が4回発生しており、今回で5回目。2003年3月に欠航150便で、欠航と遅延を合わせた影響者の総数は約10万人、2007年5月に欠航130便で約9.1万人、2008年9月に欠航64便で約7万人、2016年3月に欠航184便、約12.5万人だった。

7年前に4回目のシステム障害が発生した際、羽田空港第2ターミナルでANAのカウンターに並ぶ乗客=16年3月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

=これまでのシステム障害=
1回目 2003年3月 欠航150便 約10万人に影響
2回目 2007年5月 欠航130便 約9.1万人に影響
3回目 2008年9月 欠航64便 約7万人に影響
4回目 2016年3月 欠航184便 約12.5万人に影響
5回目 2023年4月 欠航55便 約2万6700人に影響(うち遅延は計155便、約2万人)
*影響者数は欠航と遅延を合わせた総数

 2016年の不具合発生までは、稼働中のシステムとは別に構成が異なる予備のシステムを用意していたが、この時に同一システムを2系統持つ現在の構成に変更した。

 また、2021年6月12日には、ANAのインターネットサービス「ANA SKY WEB(ASW)」で、航空券を予約できない不具合が発生し、国内線は翌13日、国際線は14日に復旧した。ANAのシステム構成で、ASWは今回不具合が起きた国内旅客システムの下位に位置するシステムとなる。

 加藤氏によると、ANAではシステム障害の対応訓練を年に数回実施しており、案内手順の訓練も定期的に行っているという。また、今回のようにANAから情報発信できない場合の乗客への案内方法なども、原因究明と合わせて対応を検討していくという。

 今回の不具合の原因と再発防止策は、原因が明らかになった時点で公表する。

関連リンク
全日本空輸

原因と再発防止策
ANAのシステム障害、データ抽出時に「偶発的なエラー」(23年4月7日)

4月3日発生
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