エアライン, 官公庁, 空港, 解説・コラム — 2022年9月15日 14:30 JST

水際緩和、入国は早くなったのか バンコク→羽田で検証

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 国の水際対策の緩和が9月7日に行われ、1週間が過ぎた。10月には入国者数の上限撤廃や個人旅行の解禁、短期訪日時のビザ免除など、徐々にコロナ前の入国体制へ戻る道筋が見えてきた。

JALのバンコク発羽田行きJL34便を降りて検疫手続きへ=22年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 水際対策の緩和を受け、私も9月9日夜から11日早朝にかけて海外へ取材に出掛けた。行き先はタイの首都バンコクで、3回目のワクチン接種を済ませていればタイへの入国、日本へ帰国ともにPCR検査の陰性証明は不要だ。一方、搭乗手続き時にワクチンの接種証明書は必要になる。

 すでに緩和後に海外から帰国した人の報告もネットなどでみられるが、「帰国時に入国までの時間が短くなった」という内容には少し違和感を感じた。日本の空港へ到着し、スマートフォンアプリ「My SOS」を見せて検疫を受けるプロセスはまだ残っており、あくまでも帰国前にPCR検査を受ける必要がなくなっただけだからだ。

 私の場合、今回のバンコク取材の一つ前の海外取材は、7月にロンドン近郊で開かれたファンボロー航空ショーだったが、緩和前のその時と比べ、どのくらい入国までにかかる時間に変化がみられたかを検証してみた。

—記事の概要—
7月は到着後19分
今回は到着後35分
ファーストクラスが早いとも言えない

7月は到着後19分

 今年から海外取材を再開した私は、6月にカタールの首都ドーハで開かれたIATA(国際航空運送協会)のAGM(年次総会)、7月1日の全日本空輸(ANA/NH)のエアバスA380型機による成田-ホノルル線の定期便再開でホノルル、7月中旬のファンボロー航空ショーと出向いたが、海外へ取材に出るたびに気が重くなっていたのがPCR検査だった。

特典航空券で乗ったJALのロンドン発羽田行きJL44便のファーストクラス。降機直前に撮った写真で撮影時刻は午後5時25分だった=22年7月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 私が渡航した6月以降は、すでに海外ではPCR検査の需要が激減していたこともあり、現地で受けるPCR検査が高額だったり、取材の合間に検査を受けられる施設を探すのも一苦労だった。これらの点は、7月15日放送のテレビ東京系「ガイアの夜明け」に出演した際にも指摘した。

 例えばロンドンの場合、結果が出るまでに時間が掛かる標準のPCR検査は午後5時台が最終受付、短時間で結果が出るクイック検査は昼過ぎから午後3時くらいまでに受付が終わってしまう。

 ファンボロー航空ショーの会場は、宿泊するロンドンから片道1時間半くらいは離れており、取材を早めに切り上げて検査に間に合うように戻る必要があった。さらに、帰国まで72時間を切り、検査を受けたショー初日の7月18日と、翌19日は気温40度を記録する酷暑で、鉄道のレールが歪んで列車が大幅に遅れるなど、受付時間内にロンドンへ戻れるのか気が気でない状況だった。

 ロンドンから帰国したのは7月21日で、日本航空(JAL/JL、9201)の羽田行きJL44便で午後5時24分に146番スポット(駐機場)へ到着した。この便は特典航空券のファーストクラスだったので、到着からさほど時間をおかずに飛行機から降り、検疫会場へ向かった。

 入国審査を終えて手荷物受取場に着いたのが到着から19分後の午後5時43分、預け荷物を受け取り、一般エリアに出たのが8分後の同51分だった。ちなみに預け荷物がない状態でも、京急の羽田空港第3ターミナル駅から乗車できた品川方面の列車は、同じ出発時刻だった。

今回は到着後35分

 水際対策の緩和後、初の海外取材となったバンコク。帰国便は9月11日早朝に羽田着のバンコク発JL34便で、定刻より15分早い午前5時55分に148番スポットに着いた。

JALのバンコク発羽田行きJL34便を降りて検疫手続きへ=22年9月11日6時7分 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 今回はエコノミークラスのほぼ最後尾で、降機したのが午前6時6分、検疫手続きする会場には同19分、入国審査場には同28分に着き、預け荷物はなかったので到着から35分後の午前6時30分に一般エリアへ出ることが出来た。7月にロンドンから帰国した時と比べ、到着から入国審査場の通過までは14分多くかかったことになる。

 ちなみに今回のJL34便は、日本に入国する人から降機が始まったのは私が降りる4分前の午前6時2分。一番最初に降りても、到着から一般エリアに出るまでに30分程度はかかったようだ。

ファーストクラスが早いとも言えない

 海外から日本に到着する便は、駐機場に着いて国の許可が下りないと乗客の降機が始まらない。帰国便が到着後、乗客の降機が国から認められるタイミングや、検疫会場の混雑具合、到着したスポットといった要因で、入国までの時間は変わると言えるだろう。

JALのバンコク発羽田行きJL34便は15分早着し午前5時55分に到着。一般エリアに出たのは午前6時30分だった=22年9月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 一方で、乗客がどの程度乗っていたかにもよるが、自分が乗った席が最前方と最後尾付近では、到着後に降機する時間の差は5分程度のようで、ファーストクラスに乗ったから早く入国できるとも言い切れない。現状では到着から最短で20分前後、検疫に時間がかかるケースで35分から40分程度と考えておくのがよさそうだ。

 9月7日の水際対策の緩和により、3回目のワクチン接種を終えていれば、入国前にPCR検査を受ける必要はなくなった。しかし、降機後に検疫会場でアプリ「My SOS」の画面を確認するなど、入国審査前の検疫手続きは続いており、「水際対策の見直し=早く入国できる」という結論づけには違和感がある。

 水際対策の緩和前から、入国までにかかる時間はある程度短縮されており、私の場合は緩和前の7月のほうが緩和後より早く入国できていた。これ以上短くするには、検疫手続きの見直しや到着するスポットの変更など、コロナ前と同じ運用に戻らないと、劇的な変化は期待できそうにない。

 コロナ前よりも入国に時間がかかるとは言え、今回の見直しでPCR検査が原則免除になったことで海外へ出掛けるハードルは心理的にも、実際の手間の面でも下がったと言え、徐々に海外との人の往来が戻ることが期待される。

関連リンク
出国前検査陰性証明保持の見直し(PDF/厚生労働省)
【水際対策】よくある質問(厚生労働省)
厚生労働省
日本航空

入国時の陰性証明不要に、水際緩和スタート JAL国際線は予約順調(22年9月7日)
【お知らせ】テレビ東京「ガイアの夜明け」に当紙編集長が出演(22年7月15日)
IATAウォルシュ事務総長、日本の入国制限「科学に基づいたものではない」緩和求める(22年6月22日)

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