エアライン, ボーイング, 業績, 機体, 解説・コラム — 2021年1月29日 18:53 JST

ANA、来期黒字化維持 第3四半期は3095億円最終赤字

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 全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の福澤一郎常務は1月29日、同社が掲げる来期(22年3月期)の黒字化について、目標を維持する考えを示した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンが開発段階から各国で摂取が始まる段階に移行し、貨物需要が想定よりも好調であることを理由に挙げた。

第3四半期は3095億円の最終赤字となったANA=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
通期見通しは据え置き
国際貨物堅調
機材計画「見直しに至っていない」

通期見通しは据え置き

 同日発表したANAHDの2020年4-12月期(21年3月期第3四半期)連結決算は、純損益が3095億7500万円の赤字(前年同期は864億4600万円の黒字)。売上高は前年同期比66.7%減の5276億1400万円、営業損益は3624億800万円の赤字(同1196億5600万円の黒字)、経常損益は3507億5700万円の赤字(同1225億3500万円の黒字)だった。

 2021年3月期の通期見通しは据え置き。純損益は2003年の連結決算移行後では最大となる5100億円の赤字(20年3月期は276億5500万円の黒字)を見込み、売上高は62.5%減の7400億円、営業損益は5050億円の赤字(同6608億600万円の黒字)、経常損益は5000億円の赤字(同593億5800万円の黒字)となる見通し。

国際貨物堅調

 第3四半期単独の営業損失は814億円で、第1四半期の1590億円、第2四半期の1218億円からは改善がみられた。福澤氏は「第3四半期はコスト削減などで、計画よりも330億円改善して終了した」と述べた。

 国内旅客旅客需要は、「GoToトラベル」の収入への影響が第2-3四半期合計で340億円の効果があったことから、今後緊急事態宣言の解除などにより、改善する可能性を見込む。

 貨物については、国際貨物で完成車輸送などの高単価貨物を取り込めたことで、単価が前年同期比で2.2倍に拡大。収入が過去最高を更新したことから、堅調な推移を想定している。

 オンラインで会見を開いた福澤氏は、「新年度が始まるまでに時間があるので対応を考えるが、大きく事情が変わったのはワクチンが開発から摂取段階に変わったこと。貨物はここまで大きく伸びると考えていなかったが、(成長の)持続性を発揮できてきた」と、昨年よりも事業環境が好転しつつあるとの見方を示した。

 ANAHDは資金調達の一貫として、金利が高い代わりに返済の優先順位が低く、一部を資本に組み入れられる「劣後ローン」による4000億円の借入を、日本政策投資銀行(DBJ)や三井住友銀行など5行と昨年10月27日に契約。劣後ローンは一般的に、貸し手側の発言権が大きくなる傾向がみられるが、福澤氏は「経営の自由度がなくなることはない」と述べた。

機材計画「見直しに至っていない」

 また、ボーイングが開発中の次世代大型機777Xについて、27日に計画をさらに1年遅らせ、納入開始を2023年後半にすると発表。ANAHDも、長距離国際線に投入している777-300ERの後継機として20機を確定発注しており、初号機を当初は今年3月末までに受領する計画だったが、新型コロナの影響で2年程度延期している。福澤氏は機材計画について「現時点で見直しには至っていない」と説明した。

 昨年10月30日付で書類上受領したエアバスA380型機の3号機については、「契約に基づくペイメントなどは発生しているが、想定の範囲内で対応している」と語った。

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