ボーイング、日本市場に737 MAX 8と10混成提案 「航続距離と旅客数のバランス取れる」

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 ボーイング民間航空機部門マーケット分析&セールスサポート担当マネージング・ディレクターのダレン・ハルスト氏は9月28日、日本市場に適した次世代単通路機737 MAXの機体サイズとして、標準型の737 MAX 8と胴体長が最長の737 MAX 10を組み合わせた機材構成を提案した。

—記事の概要—
737 MAX 8と10でバランス
“797”「需要やニーズある」
日本市場は国際線堅調

737 MAX 8と10でバランス

日本の航空市場について説明するボーイングのハルスト氏=18年9月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 737 MAXは737の発展型で、CFMインターナショナルの新型エンジン「LEAP-1B」を採用。翼端には新型ウイングレット「アドバンスト・テクノロジー・ウイングレット」を備え、客室内装はLED照明や大型の手荷物収納棚など、787と同等のものを取り入れた「ボーイング・スカイ・インテリア」を採用する。

 標準型は2016年1月に初飛行した737 MAX 8(1クラス189席)で、同機をLCC向けに座席数を増やした737 MAX 200(同210席)、もっとも胴体が短い機体で737-700の後継となる737 MAX 7(同172席)、胴体がもっとも長い737-900ERの後継機737 MAX 9(同220席)があり、737 MAX 10(同230席)は5機種目となった。

 737 MAX 10は、2017年6月に開かれたパリ航空ショーでローンチ。737 MAX 9の胴体を66インチ(約1.7メートル)延長して、定員増加によりドアを追加し、翼や圧力隔壁なども改良する。

パリ航空ショーで737 MAX 10のローンチを発表するボーイングのデニス・マレンバーグCEO(左)とケビン・マカリスター民間航空機部門CEO=17年6月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ハルスト氏は競合するエアバスA321neoと比較し、「737 MAX 10は、航空会社に対して毎年100万ドル(約1億1300万円)の節約を提供できる」と説明。これまででもっとも収益性の高い単通路機であることを強調した。

 現時点で、日本では737 MAXの導入を決めた航空会社はない。ハルスト氏に、日本市場に適した機体サイズの737 MAXを問うと、「顧客のニーズによるが、世界市場全体では737 MAX 8が主流だ。これに市場の成長に対応するMAX 10を組み合わせると、国内線やアジア域内路線で、航続距離と旅客数のバランスが取れると思う」と応じた。

 国内で737を運航する航空会社のうち、スカイマーク(SKY/BC)は737-800の生産が2019年で終了するため、現在より座席数が多い後継機の選定を進めている。

“797”「需要やニーズある」

 一方、“797”とメディアが呼ぶ737 MAXと787の間に位置する中型機「NMA(New Middlesize Airplane)」の現状について、ハルスト氏は、「顧客に聞いたところ、サイズの需要やニーズは十分ある。航空機商品としての定義づけやどういう特色を打ち出すか、ビジネスをどう進めるかを検討しているところだ」と語った。

 ボーイングのデニス・マレンバーグ会長、社長兼CEO(最高経営責任者)は7月に、「MOM(ミドル・オブ・ザ・マーケット)」に投入を検討しているNMAについて、2019年にローンチする方向で検討を進めると、従来の計画を踏襲する発言をしている。開発が決まった場合、2025年に就航する見通しで、北米の航空会社を中心に需要がある中型機757の置き換え需要を担うとみられる。

 競合のエアバスは、757の後継機としてA321neoの航続距離延長型であるA321LRを、航空会社に売り込んでいる。日本では、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)がA321LRを中距離国際線機材として、2020年度に日本初導入する。

日本市場は国際線堅調

 また、ハルスト氏は日本の航空市場について「2018年の成長率は4%を超え、国際線が伸びている」との見方を示した。

 「アジア地域の国際線の成長率が6%を示しており、長距離国際線も5%と、国際線自体が非常に健全な成長を遂げている」と指摘。日本を含む北東アジア地域の特徴として、機材の45%がワイドボディー機(広胴機、双通路機)で、「世界のほかのどの地域よりも高い比率だ」と述べた。

 ハルスト氏はこの要因について、「もともと人口密度が高い市場で、航空市場の成熟度が高い」と説明し、今後も成長が継続するとの見方を示した。

 アジア太平洋地域全体については、「中間層の成長により、10年後には3分の2位の人々が2万ドル以上の収入を得ることになり、さらに航空需要は高まるだろう。もう一つ需要を刺激しているのはLCCの存在だ」と述べ、アジア太平洋地域が引き続き世界の航空需要を牽引していくとした。

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