正月休みが終わり、街中も徐々に普段の姿にもどりつつある。年末年始に航空会社が行うイベントの中で、恒例となったものの一つが、日本航空(JAL/JL、9201)の客室乗務員有志によるハンドベルチーム「JALベルスター」のコンサートだ。結成は1995年で、2014年に20周年を迎えた。
2016年は約40人の客室乗務員が応募し、入社1年目から5年目までの8人が選ばれた。10月から乗務の合間に8回合奏練習し、本番に臨んだ。12月1日と2日の函館を皮切りに、15日と16日、17日に札幌、18日に熊本、21日に福井で公演し、最後の羽田では24日と25日に演奏した。
ベルスターは毎回、前年のメンバー1人が翌年はリーダーとして参加し、演奏技術などを継承している。今年は入社2年目の赤波江(あかばえ)聖歌さんがリーダーとなり、入社5年目でハンドベル経験者の橘梨央さん、4年目の田中優里子さん、3年目の濱地(はまじ)恵理さん、中川紅実子さん、2年目の小林理紗さん、吉成明希さん、1年目の公門(こうもん)優希さんが、各地の空港や病院などの訪問先でハンドベルを披露した。
メンバーは10月の結成と同時に、テーマを決める。今回は「エンジョイJALベルスター」を掲げ、さまざまな年代の人たちに楽しんでもらい、自分たちも演奏を楽しみたいという思いで挑んだ。
12月24日、羽田空港国際線ターミナルのステージ「江戸舞台」に、歴代制服を着用したメンバーが登場した。JALの初代制服を橘さん、3代目を吉成さん、4代目を中川さん、5代目を田中さん、6代目を公門さん、旧日本エアシステム(JAS)の3代目(TDA時代)を濱地さん、5代目を小林さんが着用。赤波江さんはJALの現行制服を着ていた。
毎年多くの観客が詰めかけるベルスターのコンサート。赤波江さんは「新曲も練習回数を重ねるごとに完成度が高まり、150%の出来でした」と羽田初日の感想を話す。そして千秋楽となった25日。羽田空港第1ターミナルでの演奏が、今回のメンバー最後の公演となった。
「最後の曲は涙をこらえるのが必死でした。昨日(24日)は150%の出来でしたが、500%くらいでした」と、赤波江さんはうっすら涙を浮かべながらも、笑顔で振り返った。学生時代にハンドベルを演奏していた橘さんは、「3カ月前は初対面の8人でしたが、みんなで一つのものを作り上げました。学生時代も終了する時が悲しかったですが、来月からみんなバラバラで飛ぶ(乗務する)と思うと、寂しくて仕方がないです」と残念そうだ。そして吉成さんは、「500%以上の力で、一番良い演奏が出来たと思います」と涙を流しながらも、満足げだった。
25日のステージではアンコールとして、日本では「第九」として親しまれているベートーベンの交響曲第9番第4楽章の一部を演奏。「熊本のステージまでとっておいたものでした」と中川さんが話す。18日の熊本公演では、復興祈念のイベントでベルスターのメンバーも「フラッシュモブ」に参加し、通常とは異なる形でも演奏した。
こうした1カ月間の公演を振り返ると、ステージ上での表情にも変化があった。入社前からベルスターのステージを見ていた入社1年目の公門さんは、過去のステージをYouTubeなどで見るとメンバーが自然な笑顔で演奏しているのに対して、演奏に必死になってしまっていたという。「笑顔を出すまでが難しかったですね。練習を重ねて、本番でお客様が温かく迎えてくださり、メンバーが顔を見るとニコッと返してくれるうちに、自然と笑顔が出るようになりました」と振り返る。
2017年のベルスターメンバーには、中川さんは「私たちはエンジョイがテーマでしたが、自分たちの新しいカラーを打ち出しながら、これまでのものを引き継いで欲しいですね」と話す。公門さんは「自分たちが楽しく演奏して、お客様にも楽しんでいただける演奏をして欲しいです」と話した。今回のメンバーに共通した感想が、テーマだった「エンジョイ」が、ハンドベルを披露する上で大切だということだった。
テーマの「エンジョイ」でひとつになったメンバー。濱地さんは活動を振り返り、「大変だったことよりも、全員でひとつのものを作り上げたことが印象深いです。このメンバー8人が、一緒に乗務することは絶対ないのが悲しいです」と残念がる。
ではベルスターの活動で得た「エンジョイ」を、普段のフライトでどう活かしていくのだろうか。「フライトも良い意味で自分たちが楽しまないと、お客様にも楽しいフライトだと伝わりません。フライトも音楽も共通なんだなと思いました」と、田中さんはベルスターとフライトの共通点を見出していた。
これまでの歴代メンバーがフライトとの共通点として挙げてきたのは、演奏中のアイコンタクト。指揮者のいないベルスターの演奏では、フライトと同じくアイコンタクトでお互いの意思疎通を図ることが大切だ。それに加えて、自分が客室乗務員の仕事に楽しさを感じることが、より良いサービスにつながるのだと、田中さんをはじめとする今回のメンバーはハンドベルを通じて再認識した。
20年以上の歴史があるベルスター。単に師走の風物詩になっただけではなく、ハンドベルは客室乗務員たちに毎年、フライトで大切なものを教えてくれる。
JALベルスター2016メンバー(敬称略、括弧内は着用制服)
赤波江 聖歌(JAL現行)
橘 梨央(JAL初代)
田中 優里子(JAL5代目)
濱地 恵理(JAS3代目)
中川 紅実子(JAL4代目)
小林 理紗(JAS5代目)
吉成 明希(JAL3代目)
公門 優希(JAL6代目)
*写真は16枚。
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