航空宇宙防衛分野の展示会「2016年国際航空宇宙展」(JA2016、主催:一般社団法人・日本航空宇宙工業会(SJAC)、東京ビッグサイト)が10月12日、東京ビッグサイト(東京・有明)で開幕した。
過去50年で最多となる国内外792社・団体が出展。このうち国内が602社・団体、海外からは190社・団体がブースを構え、15日まで開催される。
出展企業・団体は、ボーイングやエアバスなどの機体メーカーや国内の重工各社、サプライヤー、製造機器メーカー、自治体が支援する航空機産業クラスター、航空自衛隊、大学など、多岐にわたる。
航空産業は防衛分野と密接な関係であることから、会場は防衛関連の展示が目立つ。しかし、ボーイングやエアバスは新機種の客室デザインのVR体験コーナーを設けるなど、民間機に関連した展示も数多くある。
ボーイングもエアバスもVRで客室体験
ボーイングは787のシミュレーターや、777Xの客室をVR(ヴァーチャル・リアリティー)で体験できるコーナーを設置。VR体験コーナーでは、開発が進む737 MAXの客室を体験することも可能だ。
ブースの通路側には、737 MAX 9と787-8、787-9、787-10、777-8X、777-9Xの大型模型が並ぶ。また、767-200をベースとした米空軍向けKC-46A空中給油・輸送機の、給油オペレーター席を模したコーナーも設けられている。
エアバスはA380とA350 XWBのカットモデル(20分の1サイズ)を出展。A380はビジネスクラスとプレミアムエコノミー、エコノミーの3クラス構成、A350はファーストとビジネス、プレミアムエコノミー、エコノミーの4クラス構成を模型で再現している。
A350を日本航空(JAL/JL、9201)が、A380を全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(9202)が導入することから、カットモデルを通じて機体の特徴を知ってもらうのが狙いの一つ。
客室のVR体験コーナーも設け、機内インテリアの新ブランド「エアスペース(Airspace by Airbus)」を体験できる。A330neoのビジネスクラスでは、A350と同様に中央部分の手荷物収納棚(オーバーヘッドビン)を取り払い、広々とした客室を実現している。
また、エアバス・ヘリコプターズが開発中で、2015年6月に初飛行したH160の実物大モックアップが目を引く。エアバスは2017年1月1日に組織を再編し、民間機や軍用機、ヘリコプターなどを一体化した新たな「エアバス」としてビジネスを展開していく。
ボーイングもエアバスも、開発中の機体の新しい内装をいち早く体感してもらおうと、VRを活用していたのが共通点だった。
このほかの海外機体メーカーでは、ボンバルディアが最新の小型機「Cシリーズ」に関連する展示をカナダ企業のブースと、日本の販売代理店である兼松(8020)のブースで行っている。また、19席の小型機ドルニエ228のカットモデルが、双日エアロスペースのブースに展示されていた。
MRJの客室モックアップも
重工メーカーでは、三菱重工業(7011)は、三菱航空機が開発中の国産ジェット旅客機「MRJ」の大型模型や客室のモックアップを出展。MRJの客室モックアップは、7月に英国で開かれたファンボロー航空ショーなどでも展示してきたもので、前方に上級クラス、後方に普通席がレイアウトされている。
初日の12日も、モックアップ前には列が出来ていたことから、関心の高さが伺える。
川崎重工業(7012)はエアバス・ヘリコプターズと共同開発したBK117D-2(H145)の実機、富士重工業(7270)は陸上自衛隊向け次期多用途ヘリコプター「UH-X」の模型、新明和工業(7224)が救難飛行艇US-2の模型、IHI(7013)は参画する米プラット&ホイットニー製エンジンPW1100G-JMのファンケースなどを展示している。
12日は海外から軍関係者も多く訪れていたことから、度々海外への輸出が話題にのぼるUS-2に関心を示す人の姿が見られた。
また、ボーイング機の開発で日本側の窓口となる日本航空機開発協会(JADC)や、海外とのエンジン開発で日本側を取りまとめる日本航空機エンジン協会(JAEC)もブースを設けている。
国内サプライヤーでは、航空機の降着装置(脚部)などを手がける住友精密工業(6355)や操縦制御システムを手掛けるナブテスコ(6268)、 NEC(6701)、三菱電機(6503)など多くの企業が出展している。
海外のサプライヤー勢は民需と防需双方を展示する社が目立った。フランスのタレスは旅客機のIFE(機内エンターテインメントシステム)を手掛けている。今回はAndroid OSを用いたIFEを展示。乗客がコントローラーを上下左右に動かすと、画面上のカーソルが移動する新デバイスを出展している。
ファーストやビジネスクラスでは、席からモニターが離れていることが多い。一方でタッチパネル付モニターの導入が進んでおり、席からモニターまで距離がある場合、操作性を改善する選択肢として、航空会社へ提案している。現在のコントローラーはIFE本体側と有線で接続されているが、タレスでは無線化したいという。
自治体と出展する中小企業群
自治体が支援する中小企業群としては、愛知県や栃木県といった重工各社の地元をはじめ、航空産業進出に力を入れる東京都の企業などが自治体とともにブースを出している。
都が主導するTMAN(Tokyo Metropolitan Aviation Network)も出展。TMANでは、航空産業への参入を目指す中小企業に対し、ISO 9600をはじめとする認証取得支援などを行っているという。
また、東海大学工学部の航空宇宙工学科など、航空宇宙系の学科を持つ大学のブースも見られた。東海大では、実験に使う模型飛行機の操縦訓練を強化することで、模型飛行機を実験中に壊さないなどの効率化や、宇宙探査機用の技術研究などの取り組みを紹介している。
防衛産業とも密接な関わりがある展示会であることから、防衛装備庁と航空自衛隊も出展。防衛装備庁は公募した中小企業6社と技術などを紹介し、空自はT-4練習機のF-3エンジンの展示などを行っている。一般客も入場できる最終日15日には、救難ヘリUH-60Jが飛来する。
JA2016は10月12日から15日まで開催。全日程が業界関係者を対象とした、トレードデーとなっている。目標入場者数はトレードデー3万人、15日のパブリックデー1万人の計4万人を見込む。
トレードデーの入場料は、招待状を持っている人は無料で、招待状がない人は事前登録で2000円、当日券は5000円。パブリックデーは14日まで販売している前売券が1000円、当日券が1200円となっている。学生は学生証を提示すると無料になる。
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2016年国際航空宇宙展
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