国土交通省航空局(JCAB)は4月14日、全日本空輸(ANA/NH)で整備規程や業務規程に違反する不適切な整備作業が認められたとして、行政指導の「業務改善勧告」を行った。併せて、安全責任を負う「安全統括管理者」の職務に関する警告も発出。5月15日までに講じた措置を報告するよう求めた。

ANAのA321(資料写真)=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
勧告の対象となったのは2事案。1つは2025年11月27日に伊丹空港で発生したエアバスA321型機の事案で、ANAが独自に使用を禁じている作動油を誤って給油したにもかかわらず、確認主任者が是正を行わずに運航させた。作業に関与した整備士は誤使用に気が付いたものの、自社の規程を恣意(しい)的に解釈し問題ないと判断。事実と異なる整備記録を作成し運航させ、組織へも報告しなかった。後日、組織に気付かれないよう作動油の一部交換を指示した際も、整備記録を意図的に作成しなかった。これらは同年12月26日に、監督する航空局へ報告した。
作動油は航空機の油圧装置を作動させるための油。誤って使用したものは、混入により機体の耐空性に直ちに問題が生じるものではないものの、整備性向上の観点から作業基準で使用を禁止している。
もう1つは、同年11月13日に成田空港で発生したボーイング767型機の事案。貨物室レールの損傷について、確認主任者が整備規程などに意図的に従わず「軽微な不具合」と自己判断し、必要な修理をせずに運航させた。国交省は、いずれも整備規程に違反する行為で、個人的な悪質性が認められるとした。ANAは同月22日に航空局へ報告した。
ANAによると、A321の事案で使用した作動油はメーカー基準に適合しており、運航の安全性に影響はなかったという。767の事案についても、貨物室レールの摩耗はメーカー確認の結果、機体構造の健全性に影響はなく、運航の安全性にも影響はなかったとしている。
ANAは2024年10月25日に、福島空港でタイヤ交換が必要と認識しながら加圧のみで運航させた意図的な規程不遵守事案で厳重注意を受けていた。今回、同様に整備規程等の不遵守が発生したことから、再発防止策が十分ではなく、安全管理システムが機能していない状況にあると判断。航空法112条の「輸送の安全、利用者の利便その他公共の利益を阻害している事実」に当たるとして勧告した。
警告書では、安全統括管理者を含む経営層が現場の状況を把握し、法令や整備規程等に従った業務を確実に行う環境を整えられていなかったと指摘した。改善措置が実施されない場合など、この警告に違反した場合は、安全統括管理者の解任を命令することがあるとしている。
国交省が求めた改善措置は4本柱。2024年10月の厳重注意後に策定した再発防止策の見直しを含む安全管理体制の再構築、ANAが整備管理を行う航空機の健全性確保、整備規程の確実な理解と適切な整備業務の実施、必要な整備作業が正しく行われていることを把握し実行する仕組みの構築を求めた。整備記録だけでなく機材不具合情報からも不適切整備がないか洗い出す仕組みや、経営層が会議や報告だけでなく自ら現場を把握できる体制づくりも盛り込んだ。
ANAによると、再発防止策として、確認主任者や整備責任者への教育強化に加え、部門長や基地管理責任者の日常モニターの強化、品質管理部門へ直接報告できるルートの新設、経営トップや安全統括管理者による現場視察と社員対話の拡充などを打ち出した。審査・監査の強化や、行政指導事案を題材にした啓発・教育の継続も進める。
ANAは、2024年10月の厳重注意後も同様の事案を招いたことを重く受け止め、持株会社のANAホールディングス(ANAHD、9202)とANAの2025年度役員を対象に報酬減額処分を実施する。代表取締役(社長・副社長)と取締役会長は1カ月30%、専務取締役・常務取締役・取締役は同20%、上席執行役員・執行役員は同10%を減額する。
国による処分は、もっとも軽い「口頭指導」から「厳重注意」「業務改善勧告」までが行政指導。業務改善勧告より重いものは行政処分の「事業改善命令」で、「事業の全部または一部の停止命令(事業停止)」が続き、もっとも重い処分は「事業許可の取り消し」になる。
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