エアライン, 解説・コラム — 2016年1月24日 23:59 JST

スカイマーク、ANAとの共同運航「平行線」

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 スカイマーク(SKY/BC)は、10月30日に始まる冬ダイヤから実施を検討している全日本空輸(ANA/NH)とのコードシェア(共同運航)について、先送りする方針を固めた。スカイマーク側が経営の独立性を維持しようとするのに対し、ANA側は自社の予約システム「エイブル」導入を求めていることから、交渉は暗礁に乗り上げている。

話し合いが平行線をたどるスカイマークとANA=14年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 スカイマークは2015年9月29日、ANAとコードシェア契約を締結。投資ファンド「インテグラル」代表でスカイマーク会長の佐山展生氏は、2016年冬ダイヤからのコードシェア実施を視野に入れているとの考えを示唆していた。

 ANAとコードシェアを実施する場合、システム改修のコストや期間などの関係で、エイブル導入は事実上避けられない。しかし、予約システムは利用動向をはじめ、さまざまな顧客情報を扱うことから、スカイマークは経営の独立性を維持するため、エイブル導入に難色を示している。

 スカイマークの再生計画では、出資から5年以内の再上場を目指すとしている。ANAを傘下に持つANAホールディングス(9202)はスカイマークに出資しているが、一度予約システムを入れてしまえば、仮に再上場後に出資を引き上げても、影響力を残すことができる。このため、スカイマーク前会長の井手隆司氏は退陣にあたり、後任の佐山氏には、エイブルを導入しない形での再建を強く求めた。

 関係者によると、コードシェアに関する両社の協議は平行線をたどっており、早期決着は難しい状況だという。交渉が進展しない背景には、エイブル導入問題だけではなく、スカイマーク自身の復調がある。2015年1月の経営破綻後に赤字路線からの撤退を進めた結果、ロードファクター(座席利用率)は改善しており、旅客数も増加傾向にあることが挙げられる。

 2015年12月の利用実績によると、全路線平均のロードファクターは前年同月を17.3ポイント上回る71.8%。3期連続で最高益を更新していた2011年以降の過去5年間では、2番目に高い値を記録した。また、前年同月比10ポイント以上の改善が、4カ月続いている。

 12月の旅客数も、前年同月比0.9%増の47万8782人と、微増ながらも2014年10月以来1年2カ月ぶりに前年を上回った。

 好調だった2011年度と同規模まで事業を縮小したことで収支が改善し、客足も戻ってきている。スカイマーク社内では、為替や燃油価格の変動といったリスク要因を考慮しながらも、コードシェア実施によるコスト増や経営の主導権をANA側に握られる可能性などを踏まえ、コードシェア提携そのものを疑問視する声も上がり始めている。

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