MRJ, 企業, 官公庁, 機体 — 2015年2月12日 12:39 JST

次世代エンジンや機体の低騒音化、JAXAと国内企業が共同研究

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 JAXAは2月10日、航空本部が2014年度から進めている2つの研究開発プロジェクトの報道関係者向け説明会を開いた。航空機用エンジンのファンや低圧タービンの空力効率向上技術と軽量化技術に関する研究開発「aFJR(高効率軽量ファン・タービンシステム技術実証)プロジェクト」と、機体の低騒音化を研究する「FQUROH(フクロウ、機体騒音低減技術の飛行実証)」の説明が行われた。

aFJR

 航空機用エンジンは、原油価格の上昇や地球温暖化に伴い、燃費効率の向上や低騒音化、二酸化炭素(CO2)排出量削減などの要求が高まっている。このため、高バイパス比や高効率化につながる技術が求められている。

JAXA航空本部eFJRプロジェクトチームの西澤プロジェクトマネージャ=2月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 現在エアバスA320型機などに採用され、日本企業も参画するIAE(インターナショナル・エアロ・エンジンズ)製V2500と比べて、aFJRプロジェクトで目標とするエンジンは、燃費をV2500比で16%改善。バイパス比はV2500の4.9に対して、13以上を目標としている。

 燃費低減につなげるファンや低圧タービンの軽量化について、ファンを0.9%、低圧タービンを9.1%軽量化させ、ファンの空力効率を1ポイント向上させる技術目標を設定。これらで1%の燃費低減を実現できるとしている。エアバスA320neo向けの米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)製PW1100G-JMは、V2500比で燃費を12-15%改善できることから、同プロジェクトの目標である1%を合わせると16%の改善につながる。

 ファンの軽量化にはFRP製のブレードを使用。研究では同時に、バードストライクなど異物の衝撃に対する解析や実証も進めていく。また、ファンケースなどの内側に設置するハニカム構造を取り入れた樹脂製の軽量吸音ライナについても、音を消す性能を維持しながら樹脂を使った成形技術や、強度確保技術を組み合わせて大幅に軽い部品の実現を目指す。

 JAXA航空本部eFJRプロジェクトチームの西澤敏雄プロジェクトマネージャは、「要素技術の積み重ねだが、エンジンの国際共同開発に参加する上で非常に重要なポイント」と語った。

 同プロジェクトは、IHI(7013)や東京大学、筑波大学、金沢工業大学と共同研究を進める。2017年度までに開発を終え、2018年度からは企業への技術移転を計画している。

 低圧タービンに用いるセラミックス基複合材料(CMC)製ブレードの製造について、IHIの金津和徳航空宇宙事業本部副本部長は、「化学の知識が必要になるのが大きな違い」と、機械系の知識による金属部品製造のノウハウだけではなく、化学プラントでの製造に対応出来る知識が必要になると述べた。

FQUROH

 FQUROHプロジェクトは、英訳の頭文字を組み合わせて命名。静かに飛び立つ鳥のフクロウにちなんだ。

AXA航空本部FQUROHプロジェクトチームの山本プロジェクトマネージャ

 1960年代から比較すると、航空機が発する騒音は大幅に低下しているものの、離発着回数も増加。今後20年間で2.6倍増が予想される離発着回数による騒音被害を、どのように抑えるかを研究している。

 JAXA航空本部FQUROHプロジェクトチームの山本一臣プロジェクトマネージャは「離発着回数が2倍になると、3デシベルの騒音被害増加につながる」と説明する。

 新型エンジンは騒音が低下しているが、機体のフラップやスラット、降着装置から起こる風切り音が騒音になっている。

 同プロジェクトでは、国内企業と協力してJAXAが開発してきた機体騒音の低減技術を、実験機で検証する。フラップやスラットの形状を変更し、降着装置にカバーを付けることで、低騒音化を目指す。

 2016年から2017年に、JAXAが保有する米国製小型旅客機「セスナ サイテーション ソブリン」を改造した実験機「飛翔」で、飛行試験を実施。旅客機での実証実験は、三菱航空機のリージョナルジェット機「MRJ」を改修し、2018年末から2019年中ごろの実施を計画している。

飛行実証にはMRJも活用=14年10月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 同プロジェクトには三菱航空機と川崎重工業(7012)、住友精密工業(6355)が参画。このほか、大学や海外の研究機関と連携し、プロジェクト成果の高度化を図る。

 川崎重工航空宇宙カンパニー技術本部研究部の葉山賢司空力技術課長は、「(低騒音化技術の)効果確認ももちろんだが、これまでの解析技術などが実機でそのまま成果が現れるのかを確認したい」と語った。

関連リンク
JAXA航空本部

JAXA航空シンポジウム技術講演
(終)2040年までに超音速機実現へ、シンガポール日帰り圏内(14年9月24日)
(4)乱気流事故はレーダーで防止(14年9月23日)
(3)MRJ改造の騒音実験機、17年目処に導入へ(14年9月22日)
(2)エンジン軽量化と燃費向上で国際競争力強化へ(14年9月21日)
(1)国際競争力強化へ国主導で産業育成を(14年9月20日)

MRJ、初号機がロールアウト 夢から現実へ(14年10月18日)
航空業界発展、産官学で着手へ JAXA航空シンポジウム(14年9月18日)
文科省、次世代旅客機を国産化 国主導で2030年実用化、課題は老朽設備(14年8月20日)
三菱重工、民間航空エンジン部門分社化 取締役会承認(14年8月29日)
「今でもすごいことをやっている」特集・日本企業への処方箋(P&W編)(13年10月30日)
「日本も高付加価値戦略を採るべき」特集・日本企業への処方箋(RR編)(13年10月20日)
JAXA、実験機「飛翔」公開 MRJ開発に反映も(12年3月22日)