官公庁, 機体 — 2014年9月18日 20:20 JST

航空業界発展、産官学で着手へ JAXA航空シンポジウム

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 JAXA(宇宙航空研究開発機構)は9月18日、航空科学技術と国際競争力の強化をテーマにした発表会「JAXA航空シンポジウム2014」を東京・千代田区の御茶ノ水ソラシティで開催した。午前中の基調講演では、文部科学省や経済産業省の航空業界への取り組みや、JAXAの戦略などを発表した。

JAXAが開催した「航空シンポジウム2014」=9月18日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 文科省・研究開発局、宇宙開発利用課の柳孝課長は「戦略的次世代航空機研究開発ビジョン」について発表。日本の航空機産業を自動車産業と同レベルに発展させるための取組を紹介した。

 現在日本の航空機産業の世界シェアは約4%で、約1兆円規模。これを世界シェア23%の自動車産業に匹敵する20%産業へ飛躍させる。2015年度からは、民間航空機の国産化と超音速機の2つの研究開発プログラムをスタートさせる。航空機産業は開発に多額の費用を要し、開発期間も10年以上かかることから民間企業のみでは新規参入が難しいため、文科省では国主導で産業育成を進めるべきとしている。

 柳課長は自動車業界ではシェアトップ10に日本企業が4社ランクインしているのに対し、航空業界では三菱重工業(7011)が日本企業としてはトップの21位に入っている現状を紹介。「航空機に関しては、国が前面に出る必要がある」との認識を示した。

 シェア20%に成長させるには、研究開発や横断的な施策に取り組むべきとし、航空機の国産化に関する研究開発と大型試験設備の整備については優先的に着手すべきと提言した。

 他国企業との航空機共同開発についても言及。エンジンや機体・装備品技術を結集させ、「主導権を握りたい」との希望を表明した。2020年には「スマートエアプレーン」で日本の技術的優位性を確立し、2025年には「ナショナルエアプレーン」で未開拓の技術分野にも挑戦、全般設計(インテグレーション)技術の確立を訴えた。

 経産省・製造産業局、航空機武器宇宙産業課の飯田陽一課長は「航空機産業の現状と課題」について発表。航空機市場の日本と世界の動向や今後の基盤強化に向けた戦略や課題などを紹介した。

 世界の航空機需要は今後20年でほぼ倍増すると見られ、アジア太平洋地域では6.2%増、中国国内で6.9%増、中東とアジア太平洋を結ぶ路線で7.3%増になると予想している。

 LCC(低コスト航空会社)は2011年、総輸送の14%を占め、今後も拡大が予想される。LCC各社は航空機を自社保有するよりもリースで導入するケースが多く、リース会社が台頭すると予想。7月のファンボロー航空ショーでエアバスA320ファミリー計115機の導入を決定したSMBCアビエーションキャピタルの例を取り上げた。

登壇したJAXAの中橋航空本部長=9月18日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 JAXAの理事も務める中橋和博航空本部長は「ALL JAPAN体制に向けたJAXA航空の戦略」について発表。文科省や経産省の取り組みを踏まえ、JAXAの果たす役割や航空業界を産官学で発展させる“ALL JAPAN体制”などを紹介した。

 航空本部が関与した国産旅客機「MRJ」についても言及。空力設計や騒音解析、パイロット負担解析、炭素複合材の製造技術などで開発に寄与した事例を紹介した。

 2013年から2017年までの中期計画として、乱気流事故防止技術や超音速ソニックブーム低減技術などに取り組む。これらの基盤設備の維持や強化、人材育成を目指すとしている。

 日本で開発したほぼすべての航空機やロケットなどに使用した、JAXAの風洞設備についても言及。両翼の端に装着し、抵抗を軽減する「ウィングレット」の効果実証などは風洞実験で得ることができたとした。

 現在、JAXAが持つ大型試験設備の老朽化が問題となっている。巡航する航空機の空力特性の把握に用いられる「遷音速風洞」は運用開始から54年が経過。離着陸時の空力特性を調べる「低速風洞」も49年が過ぎており、実験に大きな支障が生じている。

 午後は航空本部のグループ長などが技術講演。航空プログラムディレクタの大貫武氏が「国際競争力の強化に向けた取り組むべき重点課題」、推進システム研究グループ長の西澤敏雄氏が「高効率軽量ファン・タービンシステム技術実証(aFJR)」、FQUROHプリプロジェクトチーム長の山本一臣氏が「機体騒音低減技術の飛行実証(FQUROH)」、SafeAvioプリプロジェクトチーム長の町田茂氏が「乱気流事故防止機体技術(SafeAvio)」、機体システム研究グループ長の村上哲氏が「静粛超音速機技術の研究開発」について、それぞれ発表した。

*技術講演の詳報はこちら

関連リンク
JAXA航空本部
文部科学省
経済産業省

JAXA航空シンポジウム技術講演
(終)2040年までに超音速機実現へ、シンガポール日帰り圏内(14年9月24日)
(4)乱気流事故はレーダーで防止(14年9月23日)
(3)MRJ改造の騒音実験機、17年目処に導入へ(14年9月22日)
(2)エンジン軽量化と燃費向上で国際競争力強化へ(14年9月21日)
(1)国際競争力強化へ国主導で産業育成を(14年9月20日)

文科省、次世代旅客機を国産化 国主導で2030年実用化、課題は老朽設備(14年8月20日)
JAXA、低ソニックブーム試験未実施 実験場気象条件で(14年8月27日)
JAL、MRJを32機導入 植木社長「航空産業拡大に貢献したい」(14年8月28日)
JAXA若田飛行士、宇宙滞在した航空券返還 古巣JALに(14年7月30日)
SMBCアビエーションキャピタル、115機のA320発注(14年7月15日)
JAXA、ハイブリッド風洞ダーウィン完成 調布航空宇宙センター(13年4月18日)

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