官公庁, 機体 — 2014年9月24日 06:00 JST

2040年までに超音速機実現へ、シンガポール日帰り圏内 JAXA航空シンポジウム技術講演(終)

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 JAXA(宇宙航空研究開発機構)が9月18日に開催した、航空科学技術と国際競争力の強化をテーマにした発表会「JAXA航空シンポジウム2014」。午後の技術講演では航空本部のグループ長などが、実行中の取り組みや今後の展望などを発表した。

登壇した機体システム研究グループ長の村上氏=9月18日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 機体システム研究グループ長の村上哲氏は「静粛超音速機技術の研究開発」について発表。ソニックブーム低減や巡航揚抗比の向上、構造重量低減、離着陸騒音低減について進めてきた研究内容や今後の方向性などを紹介した。

 「低ソニックブーム設計概念実証」を意味するD-SENDプロジェクトは、航空機が超音速飛行時に生じる「ドン、ドーン」と打ち上げ花火のような音を伴う衝撃波「ソニックブーム」を低減する研究。マッハ2で飛行できる英仏共同開発のコンコルド(1969年初飛行)も、人が住むところでは超音速で飛行できず、実力を生かせるのは大西洋上に限られた。早めに減速してソニックブームを防ぐことが燃費悪化につながり、コンコルドは2003年に全機退役している。

 コンコルドの場合、ボーイング747型機の約100倍の騒音を発生、運航コストも3.5倍となる。離発着騒音が大きく、乗り入れられる空港が限定されていた。

 JAXAが想定している次世代超音速機は36人から50人乗りの全席ビジネスクラスで、巡航速度マッハ1.6。アジアの日帰り圏化を目標に据えている。シンガポールの場合、現在の6.9時間から3.5時間に短縮される。

 超音速機は米NASAやドイツ航空宇宙センター(DLR)、フランス国立航空宇宙研究所(ONERA)と国際共同研究を実施。日本航空機開発協会(JADC)や富士重工業(7270)、川崎重工業(7012)、IHI(7013)、東京大学や首都大学東京などの大学とともに共同で研究する。

 研究では2017年を目処に概念を検討、2020年ごろまでに研究開発を進め、2025年ごろまでにシステム実証、2030年ごろまでに実機の開発をする。

 発表会後の質疑応答で、超音速機への各国の取り組み度合いを問われた村上氏は「2008年のリーマンショックなどで下火になったものの、米国の企業などは開発を進めている。欧州の企業からJAXAに対し、共同開発へのオファーがあった」とし、実現の可能性についても、騒音の問題は残っているものの、2030年から2040年には実現するだろう、との見解を示した。

 D-SENDプロジェクトの第2フェーズは、超音速機の模型を気球から落下させデータを収集する実験。当初、7月22日から8月22日までの日程で、スウェーデン北部、キルナ近郊のエスレンジ実験場で実施予定だった。その後、その後、風力や風向きなどの試験条件が整わなかったことから実施しなかった。

関連リンク
JAXA航空本部

JAXA航空シンポジウム技術講演
(4)乱気流事故はレーダーで防止(14年9月23日)
(3)MRJ改造の騒音実験機、17年目処に導入へ(14年9月22日)
(2)エンジン軽量化と燃費向上で国際競争力強化へ(14年9月21日)
(1)国際競争力強化へ国主導で産業育成を(14年9月20日)

航空業界発展、産官学で着手へ JAXA航空シンポジウム(14年9月18日)
JAXA、低ソニックブーム試験未実施 実験場気象条件で(14年8月27日)
文科省、次世代旅客機を国産化 国主導で2030年実用化、課題は老朽設備(14年8月20日)
JAXAだけど“航空”宇宙センター デジアナ融合ハイブリッド風洞など公開(12年9月3日)

  • 共有する:
  • Facebook
  • Twitter
  • Print This Post