MRJ, エアライン, 機体, 解説・コラム — 2014年8月28日 23:10 JST

JAL、MRJを32機導入 植木社長「航空産業拡大に貢献したい」

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 日本航空(JAL/JL、9201)と三菱航空機は8月28日、リージョナルジェット機「MRJ」を導入する基本合意に至り、覚書(MoU)を締結した。2021年から自社購入機として32機導入し、JALグループのジェイエア(JAR/XM)による国内線で運航する。今回の32機を合わせると、基本合意段階のものも含めたMRJの受注機数は407機に達した。

 同時にJALは、JARが現在運航中のエンブラエル170(E170、76席)の追加購入と、エンブラエル190(E190、104席)の新規購入も発表。E170とE190合計で確定発注15機、オプション契約12機の最大27機を、2015年から導入する。

MRJ導入に基本合意し握手を交わすJALの植木社長(中央左)と三菱航空機の江川会長=8月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

エンブラエル機へ統一後に導入

E170へ機種統一後、MRJに置き換えられるジェイエアのCRJ200=14年4月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JARは現在、2008年に就航したE170を15機と、2001年就航のボンバルディアCRJ200(50席)を9機の、2機種24機のリージョナルジェット機を運航中。更新時期を迎えているCRJを、追加発注したE170に2015年から置き換え、エンブラエル機に機種統一する。その上で、2021年から7年程度かけてMRJを導入していく。

 JALグループで保有するターボプロップ機も、MRJに機種統一する計画。グループの日本エアコミューター(JAC/JC)などが運航する、ボンバルディアQ400などが置き換え対象になるとみられる。

 MRJには78席仕様の「MRJ70」と92席仕様の「MRJ90」があるが、JALではMRJ90を軸に、正式契約へ向けて条件のすりあわせを進めていく。エンジンはいずれも、低燃費や低騒音を特長とする、米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)製のギヤード・ターボファン・エンジン「PurePower PW1200G」を採用。機体のカタログ価格は1機約47億円で、32機の総額は1500億円となる。

サポート確立で協力

 JALの植木義晴社長は、MRJを選定した理由について「1番目はすばらしい航空機であること、2番目は(導入にあたり)良い条件を提示していただいたこと、3番目は国産初のジェット旅客機であり、今や国民の夢。その飛行機をぜひ我々が運航して国民の期待に応え、航空産業の拡大にも貢献したい」と説明した。

サインを交わした合意書を手にするJALの植木社長(左)と三菱航空機の江川会長=8月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

MRJについて「遅れを懸念する段階は越えている」と話す植木社長=8月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 パイロット出身の植木社長は「40年以上飛行機に関わってきたプロとして、必ずや素晴らしい飛行機に仕上がると確信を持った」と述べ、MRJのクリーンで静かなエンジンや、導入後のサポート体制を評価。また、JALが日本で初めてリージョナル機の運航を開始し、15年の経験があることから「飛行機のユーザーとしての経験はどこにも負けないものを持っている。導入後のサポート体制の確立で協力したい」と語った。

 一方で、度重なる開発遅延が生じた点については、「遅れを懸念する段階は越えている」として、航空会社への引き渡しが始まる2017年4-6月期から4年後となる2021年であれば、「準備万端のすばらしい状態で導入できると確信している」と述べた。

優れた日本製品である裏付け

JALからの受注を「優れた日本製品である裏付け」と表現する江川会長=8月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 三菱航空機の江川豪雄会長は、「世界に冠たる超一流のエアラインであるJALに購入していただくことは、MRJの優れた面を認めていただいた何よりの証拠になる。日本の飛行機であるMRJが、日本のエアラインから注文いただくと、諸外国のエアラインにとっては優れた日本製品である裏付けに感じてもらえると思う」と述べ、JALからの受注が今後のMRJの販売で、有利に働くことを強調した。

 また、航空会社が導入機材を変更する場合、パイロットのライセンスやシミュレーター、整備体制などが大きく変わることから、多額の移行コストがかかる。機体メーカーとしては、自社と同クラスの機体を航空会社がすでに運航している場合、飛行機を持たない新規設立の航空会社への売り込みより難しい。

 「すでにある飛行機をMRJに変えていただいたことで、他のライバルを凌駕する飛行機であることをアピールできる」(江川会長)として、今回の受注を足がかりに、欧米や東南アジアでの販売につなげていく意向を示した。

 受注が400機に達したことについては、「リージョナルジェット機の市場は今後20年で5000機と言われており、その半分のシェアを目指す。300機台と400機台では、道筋の進み具合の印象が違うと思う」と語った。

「納得いくまで話し合いたい」

JALのMRJ発注会見に詰めかけた多くの報道陣=8月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 MRJ導入の本格的な検討は、「今年の初めから」(植木社長)。今回の基本合意に続く正式契約の時期について、植木社長は「(契約内容の)小さなことは詰めていかないといけないが、今日の時点で皆様に購入するとお話ししても良い状態。これから双方納得いくまで話し合いたい」と述べるにとどめ、明言を避けた。

 三菱航空機では、飛行試験機の初号機(登録番号JA21MJ)を製造中。ロールアウト(完成披露)は10月18日を目標としている。初飛行については2015年4-6月期、型式証明の取得は2017年上期となる見通し。

関連リンク
日本航空
ジェイエア
三菱航空機

14年8月のMRJ関連記事
JAL、E170など最大27機発注 CRJ200など置き換え(14年8月28日)
MRJ、強度試験9月にずれ込み 10月ロールアウト(14年8月19日)
MRJ、技術試験場を公開 今夏から強度試験開始(14年8月4日)

14年7月のMRJ関連記事
「飛べば世界が変わる」 MRJのこれからを川井社長に聞く(14年7月22日)
MRJ、輪島塗の間仕切り展示(14年7月17日)
MRJ、ミャンマーのエア・マンダレイが最大10機発注 アジア初、ファンボロー航空ショーで正式契約(14年7月16日)
MRJ、飛行試験を米国で実施 15年秋からモーゼスレイク拠点に(14年7月15日)
MRJ、米イースタン航空から最大40機受注へ ファンボロー航空ショーで覚書締結(14年7月14日)
鶴丸のMRJ、なぜ誕生しないのか ファンボロー航空ショー注目(14年7月13日)