エアライン, 解説・コラム — 2014年10月27日 20:55 JST

「おもてなしは思いやりがないと出来ない」スターフライヤー松石社長に聞く

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 10月26日、山口宇部空港に就航したスターフライヤー(SFJ/7G、9206)。北九州空港を拠点に、国内線5路線を9機のエアバスA320型機で運航している。タリーズコーヒーの無料提供や大手の166席に対して150席に抑えたシートなど、2006年の就航当初から快適性を売りにしている新規航空会社の最後発だ。

スターフライヤーの松石社長=14年10月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 しかし、競争激化による売上の低迷や、2013年度に3機実施したA320の返却整備の計上などで業績が悪化。2013年10-12月期の決算短信から「継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に関する重要事象等」を記載したが、2014年4-6月期決算ではこれを解消した。筆頭株主は2012年12月にANAホールディングス(9202、当時は全日本空輸)となり、ANAの持ち株比率は17.96%となった。

 現在、SFJを率いるのは、ホールディングス制移行前の旧全日本空輸(ANA/NH)出身の松石禎己社長(61)。長崎県出身で1975年に整備畑でANAに入社し、ANAのオペレーション統括本部OMCオペレーションディレクター室オペレーションディレクターを最後に2012年3月退職した。在職中はスカイネットアジア航空(ソラシド エア、SNJ/6J)に常務取締役として2005年から出向し、2007年からは副社長を務めた。

 ANAを退職後はアイベックスエアラインズ(IBX/FW)の危機管理対応室の室長に就任し、今年1月末に退職後、3月に顧問としてSFJに入社した。その後、4月の執行役員就任を経て、6月から社長を務めている。

 SFJと同じく、九州を地盤とするSNJで副社長を経験した松石社長には、SFJの社内はどう映ったのだろうか。また、150席の機材でどのような路線を考えているのか、そしてどういった人材を求めていくのか。“黒い飛行機”の将来を聞いた。

競争に追いついていない

──2月末に社長就任が決まりました。

退役した4号機のシートを清掃する松石社長。社内行事にも積極的に顔を出す=14年9月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

松石社長:1月末でアイベックスの危機管理対応室長を退職し、もう隠居してもいいや、と思っていたところでした。SFJは外から見ていて良い会社だとは思っていましたが、赤字がえらく増えていると感じていましたね。

 (社長就任要請があり)大変な話だと思いました。外からのイメージの良さとは裏腹に、会社に入ると「あれ? あれ?」というところもあって、(赤字になったのは)なるほどな、というところもありました。

──3月に顧問として入社され、6月から社長を務められています。会社の雰囲気は。

松石社長:入社当時の印象は、のんびりしていると感じました。競争に追いついていない。

 それと、仕事が出来る人は大手を辞めて来ている人が多いのですが、それだけではダメ。若い人を育てていかなければならない。プロパー社員が引き継いでいき、中心となる体制を目指さないといけません。

 もちろん、大手を辞めたベテランばかりというやり方もありますが、ロイヤリティーが高くならない。新卒の人や若い人に入ってもらえる会社にしていくことが大切です。反面、JALやANAのように、SFJ側も実力がないと若手を育てられないという問題もあります。

──入社されて感じた問題点は。

山口宇部を出発するスターフライヤーの羽田行き初便=10月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

松石社長:北九州空港はJALさんが乗り入れているものの、競争がほとんどない。それが会社の雰囲気にも影響していると感じました。

 もう一つはどこでもある話ですが、「私は私」という考え方でしょう。経営陣が考えていることが、社内で共有されていないのではと思いました。「俺はこの仕事ができる。でも、あとのことは知らない」とまでは言いませんが、会社の危機感が社内で共有されていなかったです。

──社長に就任されて、社内は変わってきましたか。

松石社長:6月から私と社員が直接対話する「ダイレクトトーク」という企画を始めました。最初のうちは社員から質問がでることはなかったのですが、最近は変わってきました。出来るだけ一方通行にならないように心がけています。

 社員たちは捨てたもんじゃない。彼らの力をいかに上手く引き出していけるかです。正しい方向というわけではありませんが、力を向けさせるのが私の仕事です。社員には日ごろ言っているのですが、私はただ単に社長という仕事をしているだけで、部長はその仕事をしているだけです。社長がピラミッドの頂点というのは違う。

 ここ(北九州空港敷地内のSFJ本社1階)に社長室があるのですが、私は大部屋に入りました。社長に聞きたいことがあれば、直接聞いてくれと言っています。社員の前に姿を現した方が、近い存在になると思います。

──SFJは上場会社です。社員の意識改革などの課題を外部からも追求されます。

松石社長:社員は社員で(改革を)進めていくべきです。ステークホルダー(利害関係者)からの波にさらされる必要はありません。顧客満足(CS)と安全を力説しているのですが、それを社員としてきっちりやってもらえればいいです。

 企業である以上、お客様から認められなければならない。顧客満足度調査「2014年度版JCSI(日本版顧客満足度指数)調査」で6年連続1位になったのですが、社員は顧客満足を十分考えていると思います。そうでなければ、6年連続で1位をとり続けられるはずがありません。

なぜSFJだけ赤字なのか

──これまでの戦略をどう考えていますか。機材数や会社の規模を考えると、国際線事業は時期尚早ではなかったでしょうか。

山口や宇部のキャンペーンガールと共に羽田行き初便の乗客に記念品を手渡す松石社長=10月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

松石社長:まさにその通りです。前社長や経営陣をけなすつもりはまったくありませんが、国際線に進出するのは早かったのではないでしょうか。もちろん、当時会社が置かれていた状況からの判断だったと思いますが。

 昨年グアムチャーターをやっていますが、


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