ジェットスター・ジャパン(JJP/GK)は11月29日、EASA(欧州航空安全庁)が現地時間28日(日本時間29日未明)に出したエアバスA320ファミリー(系列)へのEAD(緊急耐空性改善命令)に基づく整備作業を、30日朝までに終えるとの見通しを示した。運航している22機のうち15機が対象になったが、29日は欠航せずに作業を進められたといい、30日は通常運航を予定している。

A320・A321LRのEAD対応を進めるジェットスター・ジャパン(資料写真)=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ジェットスター・ジャパンはA320系列のうち、A321LR(1クラス238席)を3機、A320ceo(従来型A320、同180席)を19機の計22機運航。EADに基づく主な整備作業は、飛行制御コンピューターのソフトウェア更新で、対象機数はA321LRが全3機、A320ceoは12機の合わせて15機となった。29日は機材繰りの調整で欠航は避けられたものの、計9便が25分から55分の遅れとなった。
更新作業は進行中で、30日朝までに全15機の作業を終える見通し。これにより、30日は運航への影響を避けられそうだという。
EASAによると、A321、A320、A319の一部機体に搭載されている飛行制御コンピューター「ELAC(エレベーター・エルロン・コンピューター)」が誤作動を起こす可能性があるとして、EADを発出。10月30日に米ジェットブルー(JBU/B6)のカンクン発ニューヨーク(ニューアーク)行きB61230便(A320、登録記号N605JB)で起きた意図しない機首下げ(ピッチダウン)が、エアバスが実施した初期の技術評価で、飛行制御コンピューター「ELAC B L104」の不具合である可能性が出てきた(詳細はこちら1)。
エアバスによると、太陽フレアに伴う宇宙線によりデータの破損につながる恐れがあると判明。現在運航中のA320系列のうち、影響を受ける可能性がある多数の機体をエアバスが特定した。
エアバスによると、10月末時点で運航中のA320系列の機体は世界で1万1293機。このうち、新型エンジンを搭載する「neo」は4220機で内訳はA320neoが2286機、長胴型のA321neoが1896機、短胴型のA319neoが38機となり、従来型「ceo」は7073機で内訳はA320ceoが4154機、A321ceoが1697機、A319ceoが1222機となっている。海外の報道では、対象機数は6000機に上るとの見方が出ている。
この影響で、ANAは29日の国内線95便を欠航し、約1万3200人に影響が出た。ANAはA321neoを22機、A320neoを11機、A321ceoを4機の計37機を運航している(詳細はこちら2)。
同じくANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下でLCC(低コスト航空会社)のピーチ・アビエーション(APJ/MM)はA320系列のうち、A321LR(1クラス218席)を3機、A320neo(同188席)を19機、A320ceo(従来型A320、同180席)を15機の計37機運航しているが、整備作業を29日正午前に完了し、これに伴う欠航は発生しなかった(詳細はこちら3)。
A320ファミリーにEAD
・EASA、A320系列に耐空性改善命令 ELAC誤作動の可能性(25年11月29日)
・A320、太陽フレアで飛行制御データ破損の恐れ ANAは65便欠航(25年11月29日)
A321LR
・ジェットスター・ジャパン、A321LR就航 初便は福岡行き(22年7月1日)
・ジェットスター・ジャパン、A321LRで成田周遊フライト 初の商業運航(22年7月1日)
ジェットスター航空とジャパンのA321LR初公開
・ジェットスター・ジャパンのA321LR、ハンブルクで機内初公開 豪ジェットスター初号機も(22年6月24日)
ジェットスター航空のA321LRとXLR
・A321LRとXLR、航続距離差はタンクにあった 特集・世界最長距離飛べる単通路機の秘密(22年6月28日)
