米国防総省は現地時間6月22日(日本時間23日)、米中央軍(CENTCOM)が21日夜から22日未明にかけ、イラン国内の核関連施設3カ所に対する大規模空爆「ミッドナイト・ハンマー作戦(Operation Midnight Hammer)」を実施したと発表した。極めて深刻な損害が確認されており、イラン側からの反撃はなかったという。米側は作戦目的について、「核兵器能力を阻止するものであり、体制転覆や一般市民への攻撃は意図していなかった」としている。

ミッドナイト・ハンマー作戦に参加したB-2(ホワイトハウスのSNSから)
作戦は、米空軍のステルス戦略爆撃機B-2「スピリット」7機を中心に、複数の第4世代と第5世代戦闘機、空中給油機、米海軍の潜水艦などが投入された。米本土から出撃したB-2は18時間の飛行と複数回の空中給油を経て目標空域に進入。米軍史上初の実戦投入となる1発3万ポンド(約13.6トン)の超大型爆弾GBU-57「MOP(マッシブ・オーディナンス・ペネトレーター)」14発などを投下し、核関連施設を攻撃した。MOPは「バンカーバスター」と呼ばれる地下施設貫通能力を持つ精密誘導兵器の一種となる。
さらに米潜水艦からは巡航ミサイル「トマホーク」が20発以上発射され、イスファハーン(イスファハン)の地上インフラに損害を与えた。全体で約75発の精密誘導兵器が使用された。
—記事の概要—
・時系列でみる作戦展開
・参加部隊と戦術
・米国側の作戦評価
・今後の見通し
時系列でみる作戦展開
作戦は米国東部時間21日午前0時(イラン時間同日午前7時30分、日本時間同日午後1時)、米本土からB-2スピリット爆撃機7機(各機乗員2人)が出撃。途中、数回の空中給油を実施しながら18時間かけて目標空域へ向かった。

ミッドナイト・ハンマー作戦の概要(米国防総省提供)
午後5時ごろ、米海軍潜水艦(CENTCOMエリア内)から20発以上のトマホークを発射。イスファハーンの標的に命中させ、先行攻撃を行った。
午後6時40分(イラン時間午前2時10分、日本時間22日午前7時40分)ごろ、フォルドウ核施設に対し、先行したB-2がGBU-57を発投下。続いてB-2全7機によるMOP投下が行われ、フォルドウ、ナタンズ、イスファハーンのイラン国内3施設に合計14発が使用された。攻撃は午後6時40分から7時5分にかけて行われ、全機がイラン空域を安全に離脱したという。イラン側からは戦闘機の発進や地対空ミサイルの発射は確認されず、完全な奇襲となった。
参加部隊と戦術
主力となったB-2部隊は、米本土から長距離飛行を実施。飛行経路を秘匿するため、「デコイ(おとり)」の航空機が太平洋側に進出したほか、第4世代と第5世代戦闘機がイラン上空に先行し、防空網の制圧を担当した。米側は「敵の地対空ミサイル網に補足されることはなかった」としている。
作戦は中央軍のほか、米戦略軍(USSTRATCOM)、輸送軍(USTRANSCOM)、サイバー軍(USCYBERCOM)、宇宙軍(USSPACECOM)、欧州軍(USEUCOM)など複数の司令部が関与。イスラエルも位置取りや準備段階で貢献していたという。
米国側の作戦評価
国防総省は「フォルドウ、ナタンズ、イスファハーンの核関連施設すべてに深刻な損害を与えた」と発表。BDA(戦果評価)は継続中だが、初期評価ではMOPと巡航ミサイルによる攻撃は計画通り命中したとされている。これまでイラン側からは反撃の動きは確認されておらず、米側の作戦は成功したと評価されている。
ペテ・ヘグセス国防長官は「体制転覆を目的とした作戦ではなく、米国の国益と同盟国(特にイスラエル)の自衛を目的とした限定的な攻撃」と説明。ダン・ケイン統合参謀本部議長は「米軍の統合力と到達能力の高さを示すもの」と述べた。
今後の見通し
今回の作戦では、湾岸諸国など地域の同盟国とも事前に調整が行われた。イスラエルとは直接的な空爆への参加はなかったが、位置取りや準備段階での協力があったという。

ミッドナイト・ハンマー作戦に参加したB-2(ホワイトハウスのSNSから)

ミッドナイト・ハンマー作戦に参加したB-2(ホワイトハウスのSNSから)
現在、中東域の米軍は高い即応態勢を維持しており、イラン本国や代理勢力による報復行動に備えている。米側はイランに対して「報復すれば倍返しで対応する」と強い警告を発しており、一方で外交的対話の窓口は維持しているとされる。
米国としては、作戦そのものは限定的な意図であり、長期戦を望んでいないことにも言及している。
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The Department of Defense
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