エアライン, 官公庁, 空港, 解説・コラム — 2025年6月5日 22:37 JST

成田空港、鉄道複線化の協議本格化 機能強化の中間案合意

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 国土交通省航空局(JCAB)は6月5日、成田空港の機能強化に向けた検討会「今後の成田空港施設の機能強化に関する検討会」(委員長:山内弘隆・武蔵野大学特任教授)の第3回会合を開き、都心と空港を結ぶ鉄道の強化や、現在3つある旅客ターミナルを集約する「ワンターミナル」化と新たな空港駅の整備、新貨物地区の整備などを検討する中間取りまとめ案を示した。旅客・貨物の施設は空港を運営する成田国際空港会社(NAA)が中心となり、具体的な計画の策定を始め、鉄道による空港アクセスの強化は鉄道会社や国交省、NAA、関係自治体などが協議して具体案を検討していく。

国交省で開かれた「今後の成田空港施設の機能強化に関する検討会」第3回会合で挨拶する山内弘隆委員長=25年6月5日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
6割が鉄道利用
複線化協議が本格化

6割が鉄道利用

 成田空港では第3滑走路(C滑走路)の建設が進んでおり、2029年3月末に供用開始を予定。年間発着回数が現在の最大30万回から20万回増の同50万回に拡大する。その後は現在3つある旅客ターミナルを新ターミナルに集約する「ワンターミナル」とする計画で、候補地は現在の第2ターミナル南側としている。

成田空港の将来的なターミナル配置イメージ(NAAの資料から)

 検討会では、羽田空港の大幅な拡充が難しい中、成田を国際ハブ空港として機能強化を進めることで合意。旅客施設のワンターミナル化に加え、新貨物地区をB滑走路東側に整備して点在する貨物施設を集約することや、鉄道アクセスの強化、人材確保の観点から空港で働く従業員の働きやすさも考慮していくことで合意した。

 鉄道アクセス強化は、成田空港の利用者全体の56%、東京都を出発地に限ると66%が鉄道を使っていることから、新ターミナルに新駅を直結させて利便性を高めるだけでなく、空港近くにある約9キロの単線区間の複線化、都心側の混雑緩和策などを検討していく。新ターミナルへの集約により、利用者が館内を徒歩移動する距離が増えることから、負担軽減につながる「館内移動を円滑化するモビリティの導入」も検討する。

 また、新幹線やリニアの駅、羽田空港といった地方送客拠点へのアクセス強化も方向性として打ち出され、列車の増発や相互乗り入れの強化も検討。成田空港へ乗り入れているJR東日本(東日本旅客鉄道、9020)と京成電鉄(9009)の2社に加え、京成と相互乗り入れしている東京都交通局と京浜急行電鉄(9006)、線路など鉄道施設を保有する成田空港高速鉄道と成田高速鉄道アクセスを加えた鉄道6社局が、国交省やNAA、自治体とともに今後の輸送力強化を検討していく。

複線化協議が本格化

 航空局によると、検討会では中間取りまとめ案に対し、委員を務めるNAAや全日本空輸(ANA/NH)、日本航空(JAL/JL、9201)、日本貨物航空(NCA/KZ)、JRや京成など鉄道6社局、千葉県などから反対や修正を求める意見はなく、共通認識として合意を得られたという。

複線化を検討する成田空港周辺の単線区間(NAAの資料から)

 鉄道アクセスの強化は、新駅設置は新ターミナルの開業時期を念頭に置いているものの、年間発着回数が50万回に達するのが2042年ごろと試算されていることから、需要の伸びに対応できるよう、検討を進めていく。このため、単線区間の複線化は、JRと京成の両社が実施する可能性とともに、1社のみになる場合も考えられるといい、中間取りまとめ案に対する合意が得られたことから、関係者の協議を本格化していく。

 NAAは、2029年3月に新滑走路の供用開始後、2030年代前半から中ごろに計画している「ステップ1」、2030年代中ごろ以降の「ステップ2」、最終段階となる2040年代の「ステップ3」と3段階に分けて、新ターミナルや周辺を整備していく。

 新駅は新ターミナルの北側半分が供用開始となる2030年代中ごろまでに開業し、現在の成田空港駅を閉鎖。その後、新ターミナルの建設が進むステップ2の段階で、空港第2ビル駅も閉鎖する計画となっている。

成田空港ワンターミナル化のステップ1で新駅供用開始(NAAの資料から)

 現在、JR線で東京駅から成田空港駅へ向かう場合、快速が約1時間30分、特急券が必要となる成田エクスプレス(NEX)で59分。京成線の場合、JR各線と駅構内で接続する日暮里駅から成田空港駅へ向かうと特急券不要の特急で約1時間10分、有料特急のスカイライナーで約40分となっている。

 検討会は初会合が2024年9月24日に開かれ、2回目は今年3月14日に開催。次回の開催時期は未定だが、新滑走路の供用開始まで4年を切っていることから、鉄道各社との協議や、費用負担のあり方などの検討を進め、最終の取りまとめに盛り込む。

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