国立お茶の水女子大学と日本航空(JAL/JL、9201)は5月22日、ダイバーシティ推進と国際的人材育成を目的とした連携協定を締結した。日本の航空業界特有といえる性別に偏りがある職種の実態調査や改善策の検討を5年程度共同で取り組む。

お茶の水女子大学とJALの連携協定締結式で協定書を手にする(左から)佐々木泰子学長と鳥取三津子社長、同大卒の客室乗務員=25年5月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALによると、グループ全体の社員構成は男性48%、女性52%とおおむね均衡が取れているものの、パイロットや整備士は9割以上が男性、客室乗務員や地上職は女性が多数を占めるなど、職種ごとに偏りがみられるという。
両者は今後、こうした偏在の要因を分析し、性別に関わらず能力を発揮できる制度や職場環境を提言。お茶の水女子大学が推進する「ジェンダード・イノベーション」の考え方をもとに、航空業界での多様な働き方の実現を目指す。

お茶の水女子大学との連携協定締結式で挨拶するJALの鳥取三津子社長=25年5月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALの鳥取三津子社長は「客室乗務員の男性比率は約3%、運航乗務員の女性は約2%。お茶の水女子大は今年で150周年を迎える女子教育のフロントランナーであり、社員のアウトプットが最大になるジェンダーバランスはどういったところなのかなどの研究を進めていきたい」と語った。
客室乗務員やパイロットなど、偏りがみられる職種ができてしまっている背景として、鳥取社長は「日本の文化というか、幼少期からの教育が根強く残っているからではないか。(かつては)女性にチャンスすらなく、本人も『できないだろう』と自己評価を低くしてしまう」と指摘。「ひとりの人間として普通に評価されていけば、おのずとバランスが取れた状況になるのではないか」との考えを示した。

お茶の水女子大学との連携協定締結式で協定書に署名するJALの鳥取三津子社長=25年5月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
お茶の水女子大の佐々木泰子学長によると、1975年設立の女性文化資料館から現在同大にあるジェンダー研究所の歴史が始まったといい、文理融合の研究を両者で進めていく。
人材育成面では、JALの社内研修に大学側が講師を派遣するほか、大学側の講座・研修にJAL社員が参加する取り組みや、JALの国内外支店での学生インターンシップ受け入れなどを検討している。
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