エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2025年4月26日 12:45 JST

ANA、777-300ERに「サメ肌」リブレットフィルム 燃費抑制とCO2削減

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 全日本空輸(ANA/NH)は4月26日、サメ肌の構造を模した「リブレット加工フィルム」を機体の表面に貼り付けたボーイング777-300ER型機(登録記号JA796A)の運航を始めた。旅客機への導入はアジア初で、ANAは2024年9月に貨物専用機777F(JA771F)へ初めてフィルムを実装しており、今回で2機目。777の旅客機と貨物機の両方に導入した世界初の航空会社となった。

機首部分より後ろにリブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796Aのコックピットから手を振るパイロット=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 リブレットフィルムの名称は「AeroSHARK(エアロシャーク)」。ルフトハンザ ドイツ航空(DLH/LH)を中核とするルフトハンザ・グループの整備会社ルフトハンザ テクニックと、化学薬品・塗料メーカーの独BASFが共同開発し、BASFが製造。ルフトハンザ テクニックがAeroSHARKの型式証明を取得しており、商業運航する航空機での安全性が証明されている。

 サメの肌を生体模倣したフィルムで、気流の影響による空気の粘性抵抗を低減することで燃費を改善し、CO2(二酸化炭素)削減につなげる。50マイクロメートル(1000分の50ミリ)の「リブレット(サメ肌)」を気流の方向に合わせて配置することで、サメの皮膚を再現し、飛行中の空気抵抗を約1%減少させ、燃費を改善してCO2排出量を減らす。

 1枚あたりの大きさは、幅約1メートル×高さ約0.5メートル。1機目の777Fと2機目の777-300ERとも1機あたり約2000枚が使われ、機首や天井、尾部などを除いた胴体の約7割にあたる部分に、海外の整備委託先で貼り付けられた。

機首部分より後ろにリブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796Aのコックピットから手を振るパイロット=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

窓の周囲以外にリブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796A=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

リブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796AのL2ドア右側に貼られたプロモーション用デカール=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 AeroSHARKを貼った777Fは、2024年9月2日から運航しており、効果検証では燃料消費量とCO2排出量が約1%削減できたことが確認された。企画したANA整備センター技術部の松井宏司朗マネジャによると、1%の削減効果で燃料を年間約250トン、CO2は約800トン抑制できるといい、今年度は2機の777で効果を検証し、今後の導入拡大などを検討していく。

AeroSHARKについて説明するANA整備センターの松井マネジャ=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 また、機体表面の洗浄などは、ほかの機体と同じように扱えるのがAeroSHARKの特徴だという。AeroSHARKによる重量増加は約120キログラムで、ルフトハンザでは4-5年程度で貼り替えを想定している。

 今回の777-300ERには、乗客が搭乗する左側最前方「L1」ドアと「L2」ドアの右横にサメをイメージしたプロモーション用デカールを貼り付けたほか、機内にフィルムのサンプルを設置し、乗客が直接触れられるようにする取り組みも行っている。

 旅客機でのリブレット初便となった26日のロンドン行きNH211便は、乗客210人(幼児1人含む)と乗員16人(パイロット3人、客室乗務員13人)を乗せて羽田を午前10時4分に出発した。ロンドンには現地時間同日午後4時6分の到着を見込んでおり、約14時間のフライトとなる。リブレットフィルムを貼った777-300ERの運航は、ほかの機材と同じで、欧米路線などフライト時間が10時間を超える長距離国際線を中心に投入していく。

*写真は21枚。

羽田空港でリブレット加工フィルム「AeroSHARK」を乗客に紹介するANAの整備士=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの777Fに貼り付けられたリブレット加工フィルム「AeroSHARK」=24年9月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

機首部分より後ろにリブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796A=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

リブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796A=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

リブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796A=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

リブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796A=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

リブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796A=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

AeroSHARKを貼った部位を指すANA整備センターの松井マネジャ=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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リブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796A=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

リブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796AのL1ドア付近のプロモーション用デカール=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

リブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796AのL2ドア付近のプロモーション用デカール=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

リブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796AのL2ドア付近のプロモーション用デカール=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田を出発するリブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796Aのコックピットから手を振るパイロット=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田を出発するリブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796Aのコックピットから手を振るパイロット=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田を出発するリブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796A初便ロンドン行きNH211便=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田を出発するリブレット加工フィルム「AeroSHARK」を貼ったANAの777-300ER JA796A初便ロンドン行きNH211便=25年4月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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