エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2025年3月6日 11:15 JST

ZIPAIR西田社長「お手軽価格で楽な移動手段あってもいい」787-9でフルフラット拡充

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 日本航空(JAL/JL、9201)が100%出資する中長距離LCC、ZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)が成田-ヒューストン線を3月4日に週4往復で開設した。10都市目の目的地となった米中南部ヒューストンまでは片道約14時間と、国内LCCでは最長路線となり、往復では24時間を超えて1日あたり2機投入する同社初の路線となった。

フルフラットにしたZIPAIRのビジネスクラスにあたる上級クラス「ZIP Full-Flat」=22年9月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 2020年6月に就航したZIPAIRにとって、これまでの最長路線は成田-ロサンゼルス線で、片道約10時間。世界初のLCCによる太平洋横断路線で、2021年12月25日に就航したが、ロサンゼルス線も1機で往復運航できる路線であり、1日に2機必要となるヒューストン線を安定して運航できるようになることが、次のステップである米国東海岸や中西部のシカゴといった内陸部などへの就航につながる。

 そして、月内にも正式発表するボーイング787-9型機の導入で、目玉のフルフラットシートを増やす。

—記事の概要—
6.1m長い787-9
お手頃価格のフルフラット

6.1m長い787-9

 現在の機材は787-8が8機で、座席数は2クラス290席。フルフラットシートを採用した「ZIP Full-Flat(ジップ・フルフラット)」が18席、エコノミークラス「Standard(スタンダード)」が272席となる。JALが2機発注済みの787-8の新造機2機は、ボーイングの製造遅延に伴い計画より遅れ、2026年度上期の受領を予定しており、10機体制に到達する。

ZIPAIRが導入する787-9。写真はJAL機=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港を離陸するZIPAIRの787-8。写真はヒューストン行き初便ZG16便=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 その後の成長は、胴体が約6.1メートル長い787-9が担う。詳細はJALが3月中に発表を予定している新たな中期経営計画の中で明らかにするが、機材の大型化で目玉のZIP Full-Flatを増席できるようにする。

 ZIPAIRの顧客は、旺盛なインバウンドはもちろん、海外の駐在員やその家族、留学生、観光客と幅広い。中でも他社のビジネスクラスと同等のシートを提供するZIP Full-Flatは、Standardの約3倍でゆったりと過ごせることから人気で、1便あたり18席では足りなくなっている状況だ。

お手頃価格のフルフラット

 西田真吾社長は、「ちょっと誤解を招く言い方かもしれないが、フルフラットシートはファーストクラスやビジネスクラスを使うような特別な方のもの、というイメージが強いと思うが、そんなことないですよ、と。お手軽価格で楽に移動できる選択肢があってもいいのではないか」と述べ、今後も値ごろ感のある運賃設定を続けていくという。

ZIPAIRの787-8の上級席「ZIP Full-Flat」=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ZIPAIRの787-8の上級席「ZIP Full-Flat」=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 2020年6月3日に就航したZIPAIRの初便バンコク行きZG51便は、コロナの影響で乗客を乗せず、床下の貨物室のみを使った貨物専用便だった。海運で使う貨物コンテナが世界的に不足し、航空会社の旅客便も大量減便になるなどで、高騰した貨物の売上で燃料代を捻出できた。

「お手軽価格で楽に移動できる選択肢があってもいいのではないか」と話すZIPAIRの西田真吾社長=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 旅客便は同年10月16日のソウル行きZG41便が最初だったが、乗客はわずか2人。その後は旺盛な訪日需要に支えられて成長しているが、スマートフォンなどのWi-Fi機器で機内から無料でネットに接続できることや、フルフラットシートを手軽にできる点が支持された。

 JALは2024年7月にロンドン近郊で開かれたファンボロー航空ショーで、787-9を確定発注10機とオプション10機の最大20機を発注する契約をボーイングと締結。2028年度から国際線機材として受領する計画だ。ZIPAIRが運航する787-9もこの中に含まれ、2030年代の成長を牽引していく。

 貨物でコロナを乗り越えたZIPAIR。旺盛な訪日需要を回復期に取り込み、次の成長はお手頃価格のフルフラットシートが支えていく。

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機内の動画(YouTube Aviation Wireチャンネル
ZIPAIR 787-8 JA822J機内公開 フルフラットシートも

写真特集・ZIPAIR 787-8の機内
(1)フルフラット上級席ZIP Full-Flatは長時間も快適
(2)個人用モニターなし、タブレット置きと電源完備のレカロ製普通席
(3)LCC初のウォシュレット付きトイレ

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