日本航空(JAL/JL、9201)が100%出資する中長距離国際線LCC、ZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)が3月4日、成田-ヒューストン線を開設した。週4往復運航する。ZIPAIRの就航都市は10都市に拡大した。片道約14時間の路線で、国内のLCCが運航する最長路線になった。

成田空港の16番搭乗口でヒューストン行き初便の乗客のパスポートを確認するZIPAIRの西田真吾社長(中央)=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
—記事の概要—
・訪日・駐在員需要狙う
・お手頃価格で楽に移動できる選択肢
訪日・駐在員需要狙う
ヒューストン線の運航日は、火曜と木曜、土曜、日曜。運航スケジュールは、ヒューストン行きZG16便が成田を午前10時に出発し、午前6時45分に着く。成田行きZG15便は午前8時45分にヒューストンを出発して、翌日午後1時50分に到着する。

成田空港でヒューストン行き初便ZG16便を見送るZIPAIRの西田真吾社長ら=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
機材はボーイング787-8型機で、座席数は2クラス290席。フルフラットシートを採用した「ZIP Full-Flat(ジップ・フルフラット)」が18席、エコノミークラス「Standard(スタンダード)」が272席となる。

成田空港で開かれたヒューストン線就航式典で挨拶するZIPAIRの西田真吾社長=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
成田空港で4日に開かれた就航記念式典で、ZIPAIRの西田真吾社長は、「ヒューストンはテキサス州にあり、米国内でもっとも人口が増え、経済が発展しつつあると言われている都市。玄関口のジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港は、米国国内線のネットワークも充実しているが、中南米への国際線も充実している」とあいさつ。ヒューストンと日本の往来だけでなく、アジアと北米の3国間流動や、ヒューストン以遠の乗り継ぎ需要も取り込んでいく姿勢を示した。
「ヒューストンには日本企業が進出している。エネルギーやIT、宇宙産業の企業、駐在員のご家族、日本から訪れるお客さまに使っていただける路線に育てていきたい」と、意気込みを語った。
初便のヒューストン行きZG16便は、乗客129人と貨物13.2トンを載せ、成田の16番ゲートから午前9時53分に出発。就航を祝う成田空港の消防車による放水アーチをくぐり、A滑走路(RWY34L)へ向かい、午前10時11分に離陸した。

就航を祝う成田空港の消防車による放水アーチをくぐるZIPAIRのヒューストン行き初便ZG16便=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港を離陸するZIPAIRのヒューストン行き初便ZG16便=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
西田社長は「初便の折り返しでヒューストンから戻ってくる便以降は1週間満席で、訪日需要の強さを感じる。春先になると、日本から若い人たちが海外に出て行く動きが出てくる」と語り、当面は9割程度が訪日客になる見通し。また、ヒューストンから中南米への乗り継ぎ需要は、他社便のため詳細を把握するのは難しいものの、パスポート情報などから1割程度は取り込めそうだという。
訪日や3国間流動、駐在員の往来といった需要に加え、フロリダ州オーランドにある世界最大の「ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート」などへの観光需要や、ヒューストンへの留学需要などの取り込みも進めていく。
お手頃価格で楽に移動できる選択肢
ZIPAIRの機材は現在787-8が8機。JALが2機発注済みの787-8の新造機2機は、2026年度上期の受領を予定しており、10機体制に到達する。その後は胴体が約6.1メートル長い787-9を導入して機材を大型化し、目玉のZIP Full-Flat増席など、新たな成長につなげていく計画で、詳細はJALが3月中に発表を予定している新たな中期経営計画の中で明らかにする。

成田空港でヒューストン行き初便ZG16便の出発前に横断幕を手に記念撮影に応じるZIPAIRの西田真吾社長ら=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

フルフラットベッドになるZIPAIRの7上級席「ZIP Full-Flat」=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ヒューストン線の運賃は、成田発のスタンダードが5万5250円から、フルフラットが18万8500円から。ヒューストン発はスタンダードが425ドルから、フルフラットが1450ドルから。6歳以下の「U6 Standard」は定額で成田発が1万5000円、ヒューストン発が136ドルになる。
西田社長は、増席を検討しているフルフラットシートについて「お手頃な値段で、楽に移動できる選択肢があってもいいのではないか」と述べ、今後も訴求していく考えを示した。
往復では28時間と、ヒューストン線はZIPAIRにとって初の往復24時間を超える路線で、1路線に1日あたり2機投入する初のオペレーションとなった。片道14時間の最長路線開設で、今後の米国東海岸就航につなげる。
*写真は16枚(運航スケジュールは写真下に掲載)。

成田空港で開かれたヒューストン線就航式典で記念撮影に応じる初便のパイロットと客室乗務員=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港で開かれたヒューストン線就航式典でテープカットするZIPAIRの西田真吾社長ら=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港の16番搭乗口でヒューストン行き初便の乗客のパスポートを確認するZIPAIRの西田真吾社長(左から2人目)=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港を出発するZIPAIRのヒューストン行き初便ZG16便のコックピットから手を振るパイロット=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港でヒューストン行き初便ZG16便を見送るZIPAIRの社員=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港を出発するZIPAIRのヒューストン行き初便ZG16便=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

就航を祝う成田空港の消防車による放水アーチをくぐるZIPAIRのヒューストン行き初便ZG16便=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

就航を祝う成田空港の消防車による放水アーチをくぐるZIPAIRのヒューストン行き初便ZG16便=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港を離陸するZIPAIRのヒューストン行き初便ZG16便=25年3月4日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
就航時の運航スケジュール
ZG16 成田(10:00)→ヒューストン(06:45)運航日:月水金土
ZG15 ヒューストン(08:45)→成田(翌日13:50)運航日:月水金土
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機内の動画(YouTube Aviation Wireチャンネル)
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写真特集・ZIPAIR 787-8の機内
(1)フルフラット上級席ZIP Full-Flatは長時間も快適
(2)個人用モニターなし、タブレット置きと電源完備のレカロ製普通席
(3)LCC初のウォシュレット付きトイレ