エアライン, 空港 — 2025年1月27日 14:05 JST

JAL、空港特殊車両の電動化続々 貨物2車種は国内仕様に、リモコンけん引車も導入へ

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 日本航空(JAL/JL、9201)は1月27日、空港内のグランドハンドリング(グラハン、地上支援)業務で使用する電動の特殊車両を報道関係者に公開した。JALは貨物の搭載で使用するハイリフトローダー(HL)を、国内の航空会社では初めて電動化。ベルトローダー(BL)も電動化し、200ボルトの電圧など日本の仕様に沿った2車種を羽田空港で導入している。また3月には、便の出発時に使用するけん引車の電動化も予定するなど、二酸化炭素(CO2)の排出量をゼロにすることで空港の脱炭素化を加速させる。

羽田へ到着したA350-900から貨物コンテナを取り下ろすJALの電動ハイリフトローダー(奥)=25年1月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 HLは貨物室に貨物を搭載する車両で、電動のものは独TREPEL社製「CHAMP 70Se NEO」を2台導入。4-5時間のフル充電で約半日稼働できる。全長は13.7メートル、幅3.5メートル、高さ3.1メートル、車両重量は1万8100キロ。

 BLは貨物室に手荷物を搭載する際に使う車両で、電動のものはスペインのEINSA社製「CEA-14」を1台導入。HLと同様、4-5時間でフル充電でき、約2日間稼働できる。全長は7.7メートル、幅2.1メートル、高さ2.3メートルで、車両重量は3826キロ。

羽田へ到着したA350-900から手荷物を取り下ろしたJALの電動ベルトローダー=25年1月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 いずれもリチウムイオン電池を動力源とし、車両には充電器を備える「オンボードチャージャー」を搭載する。充電形式は3相200ボルト60アンペアのアメリカンロック形式を採用。JALが車両を製造する各社に依頼し、ボルト数を日本仕様の3相200ボルトに合わせて製造された。また、プラグ形状も2車種共通にした。充電ケーブルは巻き取り式で、HLが長さ20メートル、BLが30メートル。充電時は巻き取り部が熱を持たないよう、目いっぱい伸ばして使用する。

 ボーイング767型機以上の大型機の場合、HL2台、BL1台の計3台を1組として運用する。2車種とも2024年12月17日から羽田で本格導入した。電動化することでCO2の排出量ゼロに加え、静音性も向上。作業員の労働環境改善や、空港周辺の騒音・環境問題の軽減にもつながる。

 羽田空港にある電源設備は、ターミナルを運営する日本空港ビルデング(9706)が整備。現在は3番スポット(駐機場)の柱内に3口設置済みで、6番スポット付近にも3月をめどに3口導入する。

 3月に導入予定の電動けん引車はリモコン式航空機けん引機器(TLTV)で、バッテリーで動く独mototok社製「Spacer 8600 NG」。羽田と伊丹で1台ずつ導入する。従来のけん引車のように機体とつなぐ「トーバー」が不要なトーバレスタイプのけん引機器で、前脚を抱え込むようにしてけん引する。JALグループの保有機うち対応するのは単通路機の737とエンブラエル機で、導入予定の737-8(737 MAX 8)やエアバスA321neoでも使用できる。

 JALグループは、貨物コンテナなどをけん引する車両「トーイングトラクター」を2022年度に電動化済み。JALは中期経営計画でCO2削減を掲げており、2050年に実質ゼロを目指す。取り組みの一環として、空港の制限区域内で使用する特殊車両の電動化などに取り組む。

JALが電動化した空港特殊車両。右手前からハイリフトローダー2台、ベルトローダー1台、トーイングトラクター1台=25年1月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

オンボードチャージャー(上)を採用したJALの電動ハイリフトローダー=25年1月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

アメリカンロック形式を採用したJALの電動ハイリフトローダーの電源プラグ=25年1月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

羽田空港3番スポットに備えるJALの電動BL/HL用充電口=25年1月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

羽田空港3番スポットに備える電動BL/HL用充電口にケーブルを挿すスタッフ=25年1月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

充電状況を知らせるJALの電動ハイリフトローダーに備えるオンボードチャージャー=25年1月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

羽田空港3番スポットに備える充電口で充電中のJALの電動ハイリフトローダー=25年1月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

JALが3月に導入予定のリモコン式航空機けん引機器「Spacer 8600 NG」=25年1月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

JALが3月に導入予定のリモコン式航空機けん引機器「Spacer 8600 NG」に備えるリモコン=25年1月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

関連リンク
日本航空
TREPEL
EINSA

JAL、グラハン貨物2車種を国内初電動化 CO2排出ゼロ、空港の脱炭素化加速(24年12月9日)
JAL、国内初の電動トーイングカー CO2ゼロで737けん引、那覇空港(24年8月20日)
ANA、空港車両のエンジンはずしEV化 廃車対象「ベルトローダー」再生(24年5月20日)
JAL、バッテリー式地上電源を初導入 松山空港で(24年5月17日)
ANAとJAL、グラハン7資格を相互承認 地方10空港でマーシャリングや牽引など(24年5月14日)
福岡空港、グラハン車両の共用化検証 航空各社の一体感で実現(22年7月28日)
JAL、電動トーイングトラクターでCO2削減 7月から羽田空港に(22年3月23日)
ANA、佐賀空港で飛行機のリモコン牽引実用化 A321や737対応(19年7月4日)