「A380はあと4-5年運航」特集・エティハド航空ネベスCEOインタビュー

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 アラブ首長国連邦の首都アブダビを拠点とするエティハド航空(ETD/EY)が、アブダビ-関西線を開設した。当初は週5往復で、週7往復(1日1往復)のデイリー化を念頭に運航を始めた。

関空であいさつするエティハド航空のネベスCEO=23年10月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 エティハドは2003年7月に国王令で設立された国営航空会社で、アブダビ政府が全額出資。初の日本路線はアブダビ-成田線で、2010年3月28日に就航した。運航中の日本路線は成田線が週7往復、関西線が週5往復で、いずれもボーイング787-9型機(2クラス290席:ビジネス28席、エコノミー262席)を使用している。

 メジャー航空会社3社がひしめく中東。エティハドは10機保有する総2階建ての超大型機エアバスA380型機に、リビングルームとバスルーム、ベッドルームを完備する最上級クラス「レジデンス」を備える。今後導入する機材では、ボーイングの次世代大型機777Xや、エアバスのA350F大型貨物機を発注済みだ。しかし、777Xは納入遅延が発生しており、A380の後継機導入などの課題も出てきている。

 エティハドはどういった点を重視し、日本市場をどのように見ているのか。10月2日の関西空港就航に合わせて来日したアントノアルド・ネベスCEO(最高経営責任者)に、今後の戦略などを聞いた。

—記事の概要—
成田はダブルデイリーに
A380はあと4-5年。A350-1000も検討中

成田はダブルデイリーに

── 日本路線の利用者層は出張需要と観光需要はどちらが多いのか。

ネベスCEO:両方だと思う。アブダビは観光投資が進んでおり、観光客数は8月に過去最高を記録した。多くの方がドバイに行き、その後にアブダビを訪れるが、アブダビの方が良かったとのコメントをいただくことが多い。

関空を離陸するエティハド航空のアブダビ行き初便EY831便=23年10月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

── 中東2社は羽田に就航しているが、エティハドは検討しているのか。

ネベスCEO:羽田ももちろん検討しているが、段階的にやっていきたい。まずは週5往復で始めた関西線を週7往復(1日1往復)のデイリーに増便し、成田線を現在のデイリーからダブルデイリー(週14往復)に増やしてきたい。現状に集中して増便していくのが良いだろう。

 日本は可能性の高い市場なので、引き続きプレゼンスを高めていきたい。

── 航空券の売り上げはどの市場が多くの割合を占めているのか。出張と観光の割合は。

ネベスCEO:航空券の売り上げは米国と欧州、インドが25%ずつで、この3市場がメインになっている。出張需要と観光需要の割合は国や市場により異なるが、基本的にはレジャーやVFR(友人・親族訪問)だ。

── アブダビの新ターミナルがオープンするが、どういう点をアピールしていきたいか。

ネベスCEO:デジタル化が進み、顔認証で搭乗できるなど、いろいろなことが簡単にできる。ショップも非常に充実しており、ショッピングも楽しめると思う。

 快適性を重視しているので、搭乗時に暑さにさらされることもない。

A380あと4-5年。A350-1000も検討中

── 中東3社の中でエティハドが優れている点はどこか。

ネベスCEO:いくつかあると思うが、まず1つ目はカスタマーサービスだと思う。私たちのクルーは世界のベストクルーにも選ばれており、空港のグランドスタッフも最高のゲストサービスを提供している。

関空で記念撮影に応じるエティハド航空のネベスCEOと初便のアブダビ行きEY831便のクルー=23年10月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 良い飛行機は誰でも買おうと思えば買えるが、おもてなしするサービスは誰もができるものではない。ケータリングも含め、私たちのサービスは最高のサービスだと思っている。約70の目的地があり、客層もまったく異なるので、お客さまに合うサービスを心掛けている。

 2つ目はコストだ。低コストで運航できるようにしている。コストを抑えながらも、効率を良くしてカスタマーサービスを改善している。例えば飛行機の数を最適化したり、標準化することで効率を改善した。

 私はエティハドで3社目のCEOを務めることになったが、コストを下げながらもカスタマーサービスを向上させるようにしている。

── 2社目のTAPポルトガル航空(TAP/TP)での経験で一番生きていることは。

ネベスCEO:TAPで学んだことは、お客さまはいろいろなタイプ、まったく違うタイプの方がいることだ。ビジネスクラスでは1万ドルで往復し、サービスも最高のものを受けたいというお客さまもいれば、後ろの方には600ドルを払うもの精いっぱい、という方もいる。

大阪市内で単独インタビューに応じるエティハド航空ネベスCEO=23年10月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 つまり、ひとつの飛行機にまったく違うタイプのお客さまがいるということだ。どちらのお客さまに対しても、満足いただけるサービスを提供しなければならない。

 欧州であれば、ライアンエア(RYR/FR)のようなシートも必要かもしれないし、エールフランス航空(AFR/AF)やKLMオランダ航空(KLM/KL)、デルタ航空(DAL/DL)のようなシートも必要かもしれない。中東ではカタール航空(QTR/QR)やエミレーツ航空(UAE/EK)と競わなければならないので、そうしたシートも必要だ。

 私たちはフルサービスの航空会社だが、価格に敏感な人にもサービスを提供していく。

── A380ではレジデンスを提供してきたが、次の7年間の計画ではどのような機材計画を考えているか。

ネベスCEO:今後7年間の成長計画は、2030年までに機材を2倍にし、お客さまを3倍にしようというものだ。

エティハド航空のA380新シート「レジデンス・バイ・エディハド」(同社提供)

 この時にチャレンジしなければならないのは、新しい飛行機がないことだ。A380はあと4-5年でリタイアするし、他社のA380も5年から7年程度で退役する。期間限定ではあるが、A380を使って成長していきたい。

 A350-1000も良い飛行機なので検討しているが、まだ決定段階ではない。客室のコンフィグレーションも良いが、安全性に影響のない部分で熱に対する課題がある。そして貨物の搭載量についても検討の余地がある、という状況だ。

関西線の運航スケジュール
EY830 アブダビ(21:40)→関西(翌日11:55)運航日:火木金土日
EY831 関西(17:25)→アブダビ(22:55)運航日:月水金土日

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