エアライン, 空港, 解説・コラム — 2023年5月20日 15:24 JST

デルタ航空、羽田柔軟運用案でユナイテッドに反論「ANAとのJVでどこからでも就航できる」

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 羽田空港の国際線発着枠の柔軟な運用案「羽田ゲートウェイフレキシビリティ」を米国運輸省(DOT)に提案しているデルタ航空(DAL/DL)は、羽田に乗り入れる米国の航空会社4社のうち、唯一同案に反対するユナイテッド航空(UAL/UA)の意見書に対し、「競争よりも偏狭な利益を優先しているのは、ユナイテッドのほうだ。ユナイテッドは全日本空輸(ANA/NH)とのジョイントベンチャー(JV、共同事業)を通じて、米国内のどこからでも羽田に就航できる」と非難した。

日本-北米路線でJVを展開するユナイテッド航空とANA=23年5月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 2019年に米国各社に配分された羽田発着枠は、デルタが最多の1日5枠(5往復)、ユナイテッドが4枠、アメリカン航空(AAL/AA)が2枠、ハワイアン航空が1枠。今回のデルタ案はDOTの監督の下、各社最大2枠までを米国内のどこからでも羽田に3年間就航できるようにするもの(関連記事)。

 ユナイテッドとANAは、日本と北米間のJVを日米の航空当局に認められている。JVは双方の便名を付与するコードシェア(共同運航)よりも踏み込み、運航スケジュールや運賃を2社で調整し、収入も一緒に管理する仕組みだ。

 デルタは「ユナイテッドとANAは、太平洋横断JVにより一体的な航空会社として運営されている。羽田出発便の49%、羽田-米国大陸間のフライトの48%を支配しているのに対し、デルタは羽田出発便のわずか1%で、羽田-米国本土間のフライトの21%だ」と、ユナイテッドとANAの2社で、羽田発着の北米路線の半数近くを運航していることを指摘した。

 「ユナイテッドとANAはJVを通じて、羽田発着枠を15枠持っており、他のどの日米の航空会社やJVよりも多い。この15枠のうち、10枠は(米国側の発着地に制限がない)ゲートウェイ・フレキシブルだ。ANAは羽田発着枠を米国のどのゲートウェイにも自由に使用できるため、ユナイテッドはANAとのJVを通じて、米国のどの出発地からも羽田路線を提供できる構造的柔軟を持っている」と強調した。

 「ANAが(米国で)享受している就航地の柔軟性は、ユナイテッドにも直接利益をもたらす。ANAが現在運航している羽田発着の米国路線のうち、ある米国の就航地で経済的な逆風が吹いた場合、ユナイテッドとANAは当局の事前承認を得ることなく、別の就航地に発着枠を転用できる柔軟性が根付いている」と、米国側の柔軟性を両社が享受している点に言及した。

米国運輸省に「羽田ゲートウェイフレキシビリティ」を提案するデルタ航空=23年5月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 また、「ユナイテッドは、2018年12月のデルタの羽田ゲートウェイ柔軟性要求に当初反対しなかったにもかかわらず、今度は今年5月のデルタの要求を非難し、デルタが柔軟性のために発着枠2枠を“選別”し、提案された3年間の試用期間について虚偽の仮定をしていると主張している」と非難。「ユナイテッドとANAによるJVの主導的地位を維持しようとするものであると考えるべきだ」とした。

 「デルタが申立書で強調したように、日米協定は米国-羽田便にゲートウェイの柔軟性を与えることを禁止しておらず、日米協定はそのようなサービスにゲートウェイ固有の条件を課すことを求めてもいない」として、米国側の発着地に柔軟性を持たせるよう改めてDOTに求めた。

関連リンク
ハワイアン航空

ユナイテッドのみ反対
ユナイテッド航空、デルタ航空の羽田柔軟運用案に異議「身勝手な計画」

アメリカンとハワイアンは賛同
デルタ航空要望の羽田柔軟運用、アメリカン航空が賛同 米国どこからでも乗り入れ(23年5月8日)
ハワイアン航空、デルタ航空の羽田柔軟運用案に賛同 米系4社で反対はユナイテッドのみ(23年5月12日)

デルタの提案
デルタ航空、羽田便の柔軟性要望 需要低迷で出発地緩和案(23年5月6日)

デルタは羽田に1本化
デルタ航空、成田撤退 41年に幕、羽田へ7路線集約(20年3月28日)
デルタ航空、羽田一本化「都心に近い。それが利用者の声」 成田撤退で(19年10月3日)
デルタ航空、成田撤退 羽田に20年3月集約、ソウル-マニラ開設へ(19年8月12日)
羽田米国枠、デルタ航空が最多 米運輸省、12枠暫定割り当て 20年夏(19年5月17日)
デルタ航空CEO、羽田発着枠「JAL/ANAがJFKに着陸できないのと同じ」不快感示す(13年8月1日)