エアバス, エアライン, 機体, 空港, 解説・コラム — 2022年7月4日 06:38 JST

ANA A380再開初便CAに聞く、2年3カ月ぶりホノルル定期便

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 全日本空輸(ANA/NH)がエアバスA380型機による成田-ホノルル線の定期便を7月1日に再開した。1日は青い初号機(登録記号JA381A)、2日は緑の2号機(JA382A)が投入され、3日に2号機がホノルル発NH183便で成田空港へ帰着したことで、全3機あるA380のうち就航済みの2機が復帰後初のフライトを終えた。

ANAのA380 2号機によるホノルル発定期便再開初便となった成田行きNH183便の機内=22年7月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAのA380は成田-ホノルル線の専用機材で、全機にハワイの空と海、夕陽をイメージした特別塗装を施しており、初号機が青(ANAブルー)、2号機が深緑(エメラルドグリーン)、3号機(JA383A)がオレンジ(サンセットオレンジ)と1機ごとに色が異なる。機首の表情も、正面を見る初号機、ほほ笑む2号機、まつげを描いた3号機と違いがあり、初号機は2019年5月24日、2号機は同年6月18日に就航した。

 その後は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、2020年3月25日に成田へ到着したホノルル発NH181便(JA381A)を最後に定期便の運航が途絶え、2021年の定期便運航は8月の2往復4便のみ。感染拡大もあり成田発NH184便が8月9日と13日、ホノルル発NH183便は10日と14日にとどまった。このため、A380の本格的な定期便復活は2020年3月の最終運航から数えて約2年3カ月ぶりとなる、7月1日のホノルル行きNH184便(JA381A)になった。

 私は1日の再開初便NH184便でホノルル入りし、1泊して2日のホノルル発成田行きNH183便(JA382A)に乗り、3日に帰国した。いずれも特典航空券でエコノミークラスに搭乗した。再開初便のクルーと同じ旅程となり、他社を含む搭乗取材がセットされた帰路のNH183便で、客室乗務員の千代希(せんだい・まれ)さん(2016年入社)と村上来実さん(17年入社)に感想を聞いた。

成田空港に帰着したANAのA380再開初便に乗務した客室乗務員の村上来実さん(左)と千代希さん=22年7月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
乗客もCAも待ちわびたフライト
チャーターとは違う緊張感

乗客もCAも待ちわびたフライト

 1日の再開初便NH184便も、2日の成田行きNH183便も、客層としては家族連れや夫婦が目立ち、1日は初便ということもあり航空ファンとみられる人の姿もあった。千代さんは「A380が再就航すると聞いた時に、コロナ前の日常に戻りつつあるんだなと思い、非常にうれしかったです。実際に乗務してみて、お客さまもコロナが始まって初めての旅行で楽しかった、というお声もいただきました」と、徐々にコロナ前の生活に戻っていくことを感じたという。

ホノルル発成田行きNH183便の機内で取材に応じるANAのA380再開初便に乗務した客室乗務員の村上来実さん(左)と千代希さん=22年7月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 2人は往復とも、A380の1階(メインデッキ)後方にあるカウチシート「ANA COUCHii」のエリアを担当。「A380に乗るのを楽しみにしていて、自宅にいるかのようにくつろげた、といううれしい言葉をいただけました」と村上さんは喜んでいた。

 千代さんも村上さんも、ホノルル線を担当する客室乗務員としてコロナ前は何度もハワイを訪れていた。村上さんは「(ホノルルに到着して)ドアを開けた瞬間、懐かしいと思いました」と、笑顔を見せた。

チャーターとは違う緊張感

 成田-ホノルル線のクルーは23人で、パイロット3人と客室乗務員21人。特に客室乗務員は人数が多いことで、同じ情報を共有する難しさがあると千代さんは指摘する。

ANAのA380 2号機によるホノルル発定期便再開初便となった成田行きNH183便で機内サービスする客室乗務員の千代希さん(左)と村上来実さん=22年7月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「普段はA321に乗務することが多く、客室乗務員は4人です。A380は人数が多い分、情報共有が難しいので、会ったら何か情報共有するように心掛けています」(千代さん)。ボーイング787型機に乗務することが多い村上さんは「子供連れのお客さまが多いので、手荷物のケアやけがをされないように心掛けています」と、路線の特色に触れた。

 A380による遊覧チャーターには何度か乗務したという2人だが、最後のA380定期便乗務から2年以上の時間が開いたことで、乗務前の緊張感は「違います」と口をそろえた。チャーターは成田など発着空港が同じで、長くても3時間程度のフライトだが、ホノルル線は国際線であり、飛行時間も往路が約7時間、復路が7時間半と倍以上だ。クルーは機体の特徴などを復習して、再開当日を迎えたという。

 定期便の乗務として久しぶりに足を踏み入れたA380について、千代さんは「(担当する)カウチシートは一番後ろなのでまだかな? と感じましたね」と笑った。

 コロナの影響もあり、千代さんは「ラバトリー(化粧室)の使用頻度が高いので、こまめに清掃し、各席にゴミがあれば積極的に回収しました」と、衛生面にも気をつけたフライトだったという。

  ◆ ◆ ◆

 4クラス520席の座席数に対し、乗客数は1日の再開初便ホノルル行きNH184便が414人(幼児5人含む)、折り返しでホノルル発初便の1日の成田行きNH183便は267人(幼児4人含む)、2号機の再開初便となった2日のNH184便が327人(幼児6人含む)、折り返しの2日ホノルル発NH183便は235人(幼児7人含む)だった。

 1日にA380の再開初便到着後、ダニエル・K・イノウエ国際空港(旧称ホノルル国際空港)でAviation Wireの取材に応じたハワイ州のイゲ知事も「これがスタートだと信じている」と、A380復活を契機に、今年こそは日本からの観光需要回復につなげたいと意気込む(関連記事)。円安や燃油高など、航空会社側がコントロールできない課題もあるが、“コロナ前の日常”が一日も早く訪れてほしいものだ。

*写真は8枚。

成田空港で出発を待つANAのA380初号機=22年7月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ホノルルに到着したANAのA380定期便再開初便となった成田発NH184便=22年7月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAのA380 2号機によるホノルル発定期便再開初便となる成田行きNH183便=22年7月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

成田空港に帰着したANAのA380 2号機=22年7月3日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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(1)個室ファーストクラスでプライバシー確保
(2)ペアシートもあるビジネスクラス
(3)2階後方にゆったりプレエコ
(4)カウチシートもあるエコノミー