エアライン, ボーイング, 官公庁, 機体 — 2021年3月7日 06:02 JST

ユナイテッド航空の777、ファンブレード疲労破壊か NTSB調査

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 NTSB(米国家運輸安全委員会)は、2月20日に起きたユナイテッド航空(UAL/UA)のデンバー発ホノルル行きUA328便(ボーイング777-200型機、登録記号N772UA)のエンジン損傷トラブルについて、調査の進捗状況を現地時間3月5日に明らかにした。調査中であるため、エンジン故障の原因について現時点で結論を出すべきではないと断った上で、破断したファンブレードの状況などを公表した。

ユナイテッド航空の777-200の損傷したエンジンPW4000(NTSB提供)

ファンブレードが破断したユナイテッド航空の777-200のエンジンPW4000(NTSB提供)

 777に2基ある米プラット&ホイットニー(PW)製エンジンPW4000にのうち、損傷の大半はトラブルが起きた右側の第2エンジンに限られ、機体の損傷は軽微だったが、第2エンジンのファンブレードは2枚折れていた。また、エンジンへ流れる燃料を止めるバルブは、コックピットからの操作で閉じていたことが確認できた。

 破断した2枚のファンブレードのうち、1枚は根元より約5インチ(約12.7センチ)から7.5インチ(19センチ)のところで折れており、破断面は金属疲労と一致したという。電子顕微鏡検査では、ブレード内の空洞内面に複数の疲労破壊の要因があったことが確認された。もう1枚は過負荷による破損の兆候がみられ、根元より約24インチ(約61センチ)から26インチ(66センチ)のところで破断していた。

 破断したブレードの保守点検データを確認したところ、フライトサイクル(飛行回数)が前回の検査から2979サイクル経過していた。熱音響画像(TAI)検査を2014年と2016年に実施しており、2018年にも検査していた。

 PW4000の第1段LPC(低圧圧縮機)ブレードのTAI検査は、これまで6500サイクルごとだったが、PWは2月22日に1000サイクルに変更。FAA(米国連邦航空局)はPW4000に対する緊急のAD(耐空性改善命令)を翌23日に発効している。

 日本国内では、昨年12月4日に同じエンジンを搭載する日本航空(JAL/JL、9201)の777-200(JA8978)が、羽田行きJL904便として那覇空港を離陸直後、左エンジンが損傷する「重大インシデント」が発生。那覇へ引き返した。左エンジンに22枚あるファンブレードのうち2枚に損傷が見つかり、このうち1枚に疲労破壊の特徴である模様がみられた。

ファンブレードが破断したユナイテッド航空の777-200のエンジンPW4000(NTSB提供)

ユナイテッド航空の777-200の損傷したエンジンPW4000(NTSB提供)

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ユナイテッド航空
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ボーイング・ジャパン

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