新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で人の往来が制限され、航空各社は大量運休・減便をせざるを得なくなった2020年。一方、航空機は稼働させない状態が長期間続くと、通常とは異なる大がかりな整備が必要になる。このため、大量運休から1カ月半ほどたったころから、日本の航空会社では乗客や貨物を乗せない状態で旅客機を飛ばすようになった。
パイロット以外は誰も乗っていないことから、これらのフライトは「空(から)飛ばし」や「フェリーフライト(回航)」などと呼ばれ、離陸した空港に40分ほどで戻ってくる。これを遊覧飛行に発展させたのが、各社が運航しているチャーターフライトだ。
航空機は飛行しない期間が90日を超えた場合、機体をジャッキアップして主脚などを整備する必要があり、通常の整備よりも費用がかさんでしまう。各社では明確な費用増の額を明らかにしていないが、数十分飛ばす方が整備作業が増えるよりは負担が少ないということだ。
しかし、遊覧飛行に投入される機材を見ていると、航空会社によっては社員から「最新機材を使った方がいいのではないか」との声を聞くものもある。例えば日本航空(JAL/JL、9201)の場合、2013年12月に就航したボーイング767-300ER型機の国際線仕様機に新シートを導入した「スカイスイート767」の投入が目立つ。同社イチ押しの最新鋭機エアバスA350-900型機のほうが、集客面でも効果的に思えるが、一部の例外を除いてこの機材を使い続けているのはなぜなのだろうか。
—記事の概要—
・A380が火付け役
・高雄週1往復のみの767
・意外と飛んでいる787
・準備や販売期間も必要
A380が火付け役
6月22日、全日本空輸(ANA/NH)は総2階建ての超大型機エアバスA380型機「FLYING HONU(フライング・ホヌ)」のフェリーフライトを成田発着で実施。「空飛ぶウミガメ」の意味を持つANAのA380は、成田-ホノルル線の専用機材だが、新型コロナの影響で3月25日に成田へ到着した便を最後に運航停止が続いていた。駐機が90日を超えて整備作業の拡大を回避するため、2号機(登録記号JA382A)が最終運航の翌日から89日目の22日に、初号機(JA381A)は90日目の翌23日に飛んだ。
このフライトを取材した記事に対し、当紙には「乗客を乗せずに飛ばすなら乗りたい」といった読者の感想が寄せられた。2カ月後の8月22日には初号機を使った成田発着の遊覧飛行が初めて行われ、抽選倍率は150倍にのぼった。空飛ばしが有償旅客を乗せて飛ぶフライトに変わったのだ。
その後、2号機を使った遊覧が9月20日に開催され、倍率は約110倍。12月12日に開かれた「アーリークリスマスフライト」では35倍まで落ち着きをみせたが、「まだ当選したことがない」という読者の声もみられ、現在も乗ってみたいと思っている人は一定数いるといえる。
整備理由で乗客のいないフライトを避ける意味もあって始まった、ANAのA380による遊覧飛行。JALが9月に実施したフライトは最新鋭機のA350ではなく、ビジネスクラスに
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