エアライン, 企業, 官公庁 — 2020年11月10日 17:55 JST

JAL、遠隔無人ヘリで物流実証 五島列島、1000キロ先の本社から操作

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 日本航空(JAL/JL、9201)は11月10日、長崎・五島列島の新上五島町で展開している無人ヘリコプター(ドローン)の実証調査を報道関係者に公開した。1000キロ以上離れた東京・天王洲にあるJALの本社ビルから遠隔操作して離島間を飛行し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査用検体や手術用の血液のほか、郵便物などの日用品を運ぶ。実証調査により、離島間のライフライン確保や物流ネットワークの構築を検討する。

若松港へ到着する無人ヘリを遠隔操作するJALの高田マネジャー(中)ら=20年11月10日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

—記事の概要—
人を避け海上を飛行
ライフラインの代替手段にも

人を避け海上を飛行

 JALは新上五島町とヤマハ発動機(7272)、長崎県上五島病院、新上五島町若松国民健康保険診療所、上五島部会内郵便局、新上五島町観光物産協会、五島軽運送、東京大学スカイフロンティア社会連携講座の9者で「新上五島町ソリューション協議会」を設立。無人ヘリを活用し、新上五島町の医療や物流などの課題を解決する物流ネットワークを構築する。今回の実証調査は、同協議会が国土交通省と業務委託契約を締結した「令和2年度スマートアイランド推進実証調査」の一環として実施した。

 無人ヘリは新上五島町のある中通島を拠点とし、若松島と小値賀(おぢか)島、本土の佐世保市を結ぶルートを飛行する。中通島から若松島までは24キロ、小値賀島まで26キロ、佐世保まで56キロで、離島間は約30分、佐世保までは1時間強で到着する。

 離着陸時は現地にいるオペレーターが操作。巡航中は天王洲からの操作に切り替え、上空100メートルのプログラムされた経路を進む。無人ヘリは陸地や船の上など、人がいる場所を避け、海沿いに飛行する。巡航中に漁船などを発見した場合は手動操作に切り替え、経路を調整しながら進む。

 実証調査で使う無人ヘリは、ヤマハ発動機の産業用無人ヘリコプター「FAZER R G2」。重さ80キロ、荷物の積載重量は35キロ、航続距離は90キロで、レギュラーガソリンで100分飛行できる。通信衛星「インマルサット」が機体とJAL本社を結び、位置情報や搭載カメラの映像を送受信する。JAL本社ではモニター3台で、経路や無人ヘリからの映像、ビデオ会議システム「Zoom」を使用して離発着の様子を把握する。実証調査は11月3日から12日までの10日間を予定する。

 10日に公開した実証調査では、中通島の青方(あおかた)港と若松島の若松港を結ぶ片道24キロのルートを往復し、ジュラルミンケースに入った細菌性感染症の検体と疑似の郵便物を運んだ。青方港からの荷物は5.22キロで、検体の空箱を輸送。若松港に到着後は、JALスタッフの唾液を検体として採取し、疑似郵便物とともに青方港に戻った。

青方港を出発した無人ヘリを遠隔操作するJALの高田マネジャー=20年11月10日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

ライフラインの代替手段にも

 JALは10月から、ドローンなどの無人航空機を管理・運航する人財育成プログラム「JAL Air Mobility Operation Academy(JAMOA、ジャモア)」を運営している。2017年に開いた社内向けビジネスコンテストで優勝した案を事業化したもので、発案者の事業創造戦略部モビリティグループの高田淳一マネジャーが、JAL本社での実証調査で無人ヘリを“操縦”した。

 中通島にある青方港から若松島の若松港までは、途中の若松大橋を通り陸路で1時間かかる。橋が通行不可となった場合に島が孤立してしまうことから、無人ヘリでの物流はライフラインの代替手段としても期待できる。JALはドローンを活用した物流について2023年度の実用化を目指しており、今回の実証調査で得たデータも検証し、実用化につなげる。

※高田マネジャーの「高」は「はしごだか」

青方港を出発する無人ヘリをモニター越しにチェックするJALのスタッフ=20年11月10日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

青方港を出発した無人ヘリを遠隔操作するJALの高田マネジャー=20年11月10日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

若松港へ到着した無人ヘリから降ろされた荷物=20年11月10日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

若松港を出発した無人ヘリを遠隔操作するJALの高田マネジャー(左)ら=20年11月10日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

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