エアライン, 解説・コラム — 2020年2月19日 21:52 JST

「欠航」と「運休」どう違う? JALとANA「明確な基準なし」、時間経過で変化も

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 中国から感染が拡大し、日本政府の対応にも批判が強まりつつある新型コロナウイルス(COVID-19)。感染が広まることで、航空会社の運航にも大きな影響が出ており、2月18日は日本航空(JAL/JL、9201)が中国本土と香港、台湾、韓国路線の一部について運休や減便、小型化を発表したほか、シンガポール航空(SIA/SQ)も日本路線を含む減便を明らかにした。

 こうした航空会社の運航情報は、台風や大雪に伴う欠航を当紙でも取り上げる機会が多い。しかし、今回は「欠航」よりも「運休」という言葉が、感染が広がるにつれて航空会社の発表で目につくようになった。どちらも飛行機が飛ばないことに変わりはないが、航空会社ではどのように使い分けているのだろうか。定義の違いが気になったので、昨日発表した日本航空(JAL/JL、9201)と、中国路線を多く擁する全日本空輸(ANA/NH)に聞いた。

—記事の概要—
明確な基準なし
武漢便の表現も変化

明確な基準なし

「欠航」と「運休」を航空会社はどう使い分けているのだろうか=PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 JALによると、欠航と運休の違いに「明確な基準を設けているわけではない」そうだ。しかしながら、当該路線の全便が一定期間欠航する状態を「運休」とすることが多く、一部便の欠航が一定期間続く場合は「減便」としているという。

 これに対して「欠航」は、当該便が運航できない状態を指すことが多いようだ。この状態に期間が加わると、運休や減便といった表現が出てくると言える。

 例えば2月19日から冬ダイヤ最終日の3月28日までの期間に、週14往復(1日2往復)運航している路線で運航できない状態が発生したとしよう。週14往復のうち、月曜から木曜までは1日1往復にした場合は、週10往復(1日最大2往復)に「減便」となり、期間中の全便を運航しない状態は「運休」になる。仮に2月19日に大雪が降ったとして、当日は当該便を運航できないものの、雪の影響がなくなれば翌日などに運航を再開できる見通しであれば「欠航」だ。

 ANAも「明確なルールはない」とのことで、欠航と運休を厳密に使い分けているわけではないという。「欠航は突発的に発生する当該便の運航状態、運休は一定期間の当該路線の状態」(ANA)と、欠航は当該便を運航できない状態であるのに対し、運休は当該路線を一定期間運航できない状態なのだそうだ。

武漢便の表現も変化

 やや理屈っぽい書き方になるが、現状のようにANAが成田-武漢線(週7往復)を運航できない状態は「運休」で、成田発武漢行きNH937便と武漢発成田行きNH938便は「欠航」しているということだ。ANAの発表は、1月23日に湖北省の武漢市政府が市を閉鎖した段階では、NH937便とNH938便を欠航するという表現で期間も限定的だったが、感染拡大後は成田-武漢線を3月28日まで運休すると、変化がみられた。

 大雪のように、さほど長くない期間を特定の便が運航できない状態であれば欠航にとどまるが、運休とした場合は航空会社に与える影響が大きいとも受け取れる。

 利用者からみれば、欠航と運休はどちらも乗りたい便に乗れないことに変わりはない。しかし、航空会社が「運休のお知らせ」といった表現を使う場合は、運航できない状態がそれなりに続くという意味が込められていると言えそうだ。

 航空会社への新型コロナウイルスの影響は当面続く。当紙でも、わかりやすく誤解を生まない表現を心掛けていきたい。

関連リンク
日本航空
全日本空輸

航空各社で運休
シンガポール航空、成田・羽田5月まで減便 感染拡大、全世界で688便影響(20年2月19日)
JAL、台湾・韓国も減便 ウイルス影響広がる(20年2月18日)
ジェットスター・ジャパン、成田-香港も一時運休(20年2月14日)
ANA、中国・香港便の運休さらに拡大 半数以下の週85往復に(20年2月13日)
ピーチ、那覇-香港3月まで運休 関空は減便(20年2月12日)
キャセイ、新型コロナウイルスで大幅減便 日本路線も対象(20年2月10日)
ANA、中国便の運休拡大 計画半減し週81往復に(20年2月6日)
JAL、中国夜間駐機便を期間運休 中国滞在者の入国制限で(20年2月6日)
ピーチ、上海一時運休 関空・羽田、3月まで(20年2月5日)
ANAとJAL、中国一部運休・減便 3月まで(20年2月4日)
ジェットスター・ジャパン、成田-上海一時運休 ウイルス拡大、3月再開へ(20年2月4日)
湖北省滞在歴ある外国人の入国禁止 ANAとJALは中国便運休検討(20年2月1日)
JALの2月中国予約、10日間で25%キャンセル 3月は20%減(20年1月31日)
ANAの中国発2月予約、昨年の半分に 日本発も4割減(20年1月30日)
ANA、成田-武漢線の欠航継続 3月1日まで(20年1月30日)
武漢チャーター機、羽田2タミサテライト”貸切”で感染防ぐ 普段は国内線用(20年1月29日)

各空港でも影響
関空、中国便欠航8割に 週492便、17日から(20年2月17日)
中部空港、中国便6割以上減 ウイルス影響、旅客・従業員の安全最優先(20年2月17日)
関空、中国便6割超の401便欠航 10日から1週間で(20年2月11日)
関空、中国便4割欠航 3日から1週間で(20年2月4日)

  • 共有する:
  • Facebook
  • Twitter
  • Print This Post