エアライン — 2019年10月16日 09:40 JST

ANAHD、遠隔交流アバター「newme」 片野坂社長「加速度的に増える」

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 全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は10月15日、幕張メッセで同日開幕した国内最大のIT見本市「CEATEC(シーテック)」で、普及型遠隔コミュニケーションアバター「newme(ニューミー)」を発表した。自治体や大学・研究機関、デパートなどと連携し、アバター(分身)が社会インフラとして活用されるまちづくりを目指す。newmeは2020年4月のサービス開始を目指し、リース導入を中心に1000体の納入を目標に掲げた。

CEATECのANAブースで遠隔コミュニケーションアバター「newme」を通じて手を振る客室乗務員=19年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAHDの片野坂真哉社長は、「飛行機を利用している人は全世界で6%にすぎず、残りの人たちの中には、病気など何らかの理由で飛行機に乗れない人もいる。アバターは距離的、物理的な制限を乗り越えて人々が理解し合える」と述べ、アバター事業に参入する意義を説明した。

 片野坂社長は、「2025年には介護士、2030年にはレスキュー隊の仕事ができるレベルになり、2040年には脳からの指示でリンゴが取れるようになり、腕の不自由な人が自由に使えるようになる。2050年になると、アバターと人間の感覚がつながり、違和感なく体験できる本当の自分になる」とアバター技術の進歩に言及。「これからはアバター社会がやってくる。世界を変える力が詰まっている」と語った。

 ANAが手掛けるnewmeのボディーは樹脂製で、大きさは100cm×130cm×150cm。リチウムイオン電池で約3時間稼働できる。画面解像度がフルHD(2K)の10.1インチタッチパネルを備え、上下60度に首を振れる。走行速度は29キロで、衝突防止センサーを備える。

 価格は1体数十万円程度になる見通しで、主にリース導入を想定。「デパートまで行けない人が買い物を楽しむことができる」(片野坂社長)と、非航空系の用途を中心に企業や自治体、研究機関などのパートナー18者と開拓していく。すでに50体ほど完成しており、CEATECには大半のnewmeを持ち込んだという。

CEATECで遠隔コミュニケーションアバター「newme」を発表するANAホールディングスの片野坂社長=19年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CEATECでANAホールディングスが発表した遠隔コミュニケーションアバター「newme」=19年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「2020年に2020体という目標はどうかと言ったら、(社内のアバター)事務局から厳しいと言われた。早く事業化するため、今は事務局の意見を尊重している」という片野坂社長は、今後の市場規模について「役所や病院などで活用されると、加速度的に増えるのではないか」と期待を寄せた。

 また、「会社全体の社員の働きやすさを顧客満足度の向上につなげたい」と語り、アバター技術を空港内などでも活用していく考えを示した。

 ANAHDで新規事業開発を手掛ける「デジタル・デザイン・ラボ」の津田佳明チーフディレクターによると、アバターは今年4月から社内の組織としてはラボから独立させ、自らも兼務する形で総勢9人が取り組んでいるという。

 ANAHDは、アバターサービスを提供するためのプラットフォームとして「avatar-in(アバターイン)」を立ち上げ、アプリやウェブサイトからアクセスすることを「アバターインする」と名付けた。ANAのCMに出演する女優の綾瀬はるかさんが登場するPR動画も制作した。

 アバターをANAHDと展開していく「社会実装パートナー」は、6分野18者で構成。自治体が東京都と大分県、沖縄県、香川県、加賀市、大学・研究機関は大阪大学と理化学研究所、デベロッパーは三井不動産と森ビル、三菱地所、阪急阪神不動産、東急、うめきた2期地区開発事業者、百貨店は三越伊勢丹、スポーツ・エンタメは電通、通信会社はNTTドコモとKDDI、ソフトバンクとなる。

 CEATECでは、2030年の「まち」をイメージした「Society 5.0 TOWN」にブースを出展。アバターを移動手段や人間拡張手段として用いる未来の暮らしを紹介し、遠く離れた場所に瞬間移動し、その場にいるのと同じ体験ができる「アバターイン」体験を紹介する。

 会場では6種類の体験を用意。自宅にいながら世界各地のミュージアム鑑賞やショッピングを楽しめる「ミュージアム&ショッピング」、自宅からつりが体験できる「フィッシング」、熟練技術者が遠く離れた場所にいる新人に技術指導する「スキルシェア」、病気で学校に通えない子供が教室で仲間と学べる「レッスン」、介護などに応用できる遠隔調理の実演「クッキング」、労働の担い手となる未来のアバターロボットを展示する「フューチャーテック」を展開する。

CEATECのANAブースでアバター事業について説明するANAホールディングスの片野坂社長(中央)と客室乗務員を映し出した2体の遠隔コミュニケーションアバター「newme」=19年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CEATECのANAブースで遠隔コミュニケーションアバター「newme」を通じて手を振る客室乗務員=19年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CEATECのANAブース前に並ぶ遠隔コミュニケーションアバター「newme」=19年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CEATECで開かれたANAホールディングスの基調講演で片野坂社長(左)の説明に従いアバターを操作する綾瀬はるかさん=19年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CEATECで開かれたANAホールディングスの基調講演でウェアラブルアバターを装着して登壇する片野坂社長(右)とアバターを操作する客室乗務員=19年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CEATECで開かれたANAホールディングスの基調講演でウェアラブルアバターを装着した片野坂社長(右)にフライング・ホヌのぬいぐるみを手渡す綾瀬はるかさん=19年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CEATECで開かれたANAホールディングスの基調講演に登壇した綾瀬はるかさん(右)とウェアラブルアバターを装着した片野坂社長=19年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CEATECで開かれたANAホールディングスの基調講演で片野坂社長が装着したウェアラブルアバターを操作する客室乗務員=19年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

「重いです」とつぶやいて降壇する片野坂社長=19年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CEATECで開かれたANAホールディングスの基調講演でウェアラブルアバターを装着して降壇する片野坂社長(右)とアバターを操作する客室乗務員=19年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CEATECのANAブースで釣りアバターを体験する来場者=19年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

CEATECのANAブースでデモンストレーションを披露するハンドアバター=19年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関連リンク
avatar-in アバターイン(ANA)
CEATEC 2019

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